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第十八部・麻衣と年越し 編
このスカートは麻衣さんのために生まれた
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香澄もあとを追い、二人の後ろから麻衣の部屋のクローゼットを覗く。
麻衣は手持ちの服を、きちんとクローゼットにしまっていた。
佑から「ハンガーに掛けておいたほうが折り目がつかないから、存分に使って」と言われていたのもあったが。
「えーと、ロンスカがあってトップスは……ふんふん」
佑はクローゼットを覗き、麻衣のアイテムを見て頷いている。
「この赤いニットが可愛いから、これをメインに決めていこうか。靴はショートブーツだったね?」
「はい。無難な黒で、あってないような低いヒールですが」
「んーと……。ああ、ちょっと待って」
そう言って佑はパッと部屋を出ると階段を下りていった。
「……なに?」
「分かんない」
二人で首を傾げていると、十分も経たないうちに佑が戻ってきた。
「麻衣さん、これ試しに穿いてみないか?」
そう言って差しだしたハンガーには、黒いアシンメトリーデザインのスカートがある。
「試作品なんだけど、いま麻衣さんに合いそうな感じで少し直してきた」
「ええっ!? そんなの着られません!」
佑が手ずから仕立てたと聞き、麻衣はおののいて一歩退いた。
「このスカートは麻衣さんのために生まれたと言っていい。だから君の物にしてほしい」
まるで口説き文句のような事を言われ、麻衣は額に手を当てて赤面する。
「~~~~。そこまで仰るなら穿かせてもらいますけど。……でも、お金払わせてくださいね」
「まさか。商品にもしていない物を売れる訳がないだろう」
キョトンと瞠目する佑を見て、麻衣は「香澄~」と泣きついてくる。
「佑さんはお父さんみたいに次々と洋服を渡してくるし、プレゼントしてくれるって言うなら、ありがたく受け取ればいいんじゃないかな」
「……お父さん……」
呟く佑を横目に、麻衣はもう一度個性的なシルエットのスカートを摘まんで、形を確認してから頷いた。
「……じゃあ、思い切っていただきます」
「どうぞ。その代わり、あとで全方向、シルエットの確認のために写真を撮らせてもらってもいいかな? 下半身のみの撮影だし、雑誌やネットなどには載せない。社員に共有して意見を聞く程度だ。社員にもデータの管理は徹底させる」
「構いません。お役に立てて光栄です」
「よし、じゃあ準備ができたら教えてくれ。俺は部屋にいる」
香澄は佑と一緒に麻衣の部屋から出て、彼に尋ねる。
「ランチは何時?」
「個室のキャンセルが出てしまったみたいで、そこで対応してくれるみたいだ。『空けておきますので、ゆっくり準備してください』と言ってくれたから、急がなくていいと思うけど、まぁ、常識の範囲内で」
「うん、分かった」
こうやって柔軟な対応をしてもらえるのも、佑が常連客で信用があるからだろう。
(ありがたい事だなぁ)
本当なら予約必須の高級店なのに、こうやって気軽に楽しめるのはやはり佑がいるからだ。
今まで彼が丁寧に近所付き合い、贔屓の店を大切にしたからというのもある。
彼が築いてきたものを、香澄も大切にしていきたいと思うのだった。
その後、着替えた麻衣とメイクごっこをした。
麻衣が香澄のメイク方法を知りたがったので、同じアイテムを使って自分なりのやり方を実践していった。
準備ができたあとは、斎藤たちに出かけると告げて、中華レストランに向かって歩き始める。
「御劔さん、スカートどうでした?」
「ああ。思っていたシルエットが出たと思っている。だがもう少し布地のボリュームがあってもいいか……?」
黒いアシンメトリースカートを穿いた麻衣が歩いている姿を見て、佑は難しい顔をする。
ちなみに写真撮影は、外出から帰ってからという事になっていた。
「香澄がマネキンじゃ駄目なんですか?」
「いつも着てもらってはいる。でもサイズが変わると服のラインや印象も変わってくるから、ボリュームやカッティングも微かに調整しているんだ。その意味で、本当は試作段階で色んな体型の人に着てもらいたい」
「なるほど」
「もう少し布地の量を増やしたほうがいいかな……。だがコスト的に……」
ぶつぶつ言っている佑を置いておき、香澄は麻衣と腕を組む。
麻衣は手持ちの服を、きちんとクローゼットにしまっていた。
佑から「ハンガーに掛けておいたほうが折り目がつかないから、存分に使って」と言われていたのもあったが。
「えーと、ロンスカがあってトップスは……ふんふん」
佑はクローゼットを覗き、麻衣のアイテムを見て頷いている。
「この赤いニットが可愛いから、これをメインに決めていこうか。靴はショートブーツだったね?」
「はい。無難な黒で、あってないような低いヒールですが」
「んーと……。ああ、ちょっと待って」
そう言って佑はパッと部屋を出ると階段を下りていった。
「……なに?」
「分かんない」
二人で首を傾げていると、十分も経たないうちに佑が戻ってきた。
「麻衣さん、これ試しに穿いてみないか?」
そう言って差しだしたハンガーには、黒いアシンメトリーデザインのスカートがある。
「試作品なんだけど、いま麻衣さんに合いそうな感じで少し直してきた」
「ええっ!? そんなの着られません!」
佑が手ずから仕立てたと聞き、麻衣はおののいて一歩退いた。
「このスカートは麻衣さんのために生まれたと言っていい。だから君の物にしてほしい」
まるで口説き文句のような事を言われ、麻衣は額に手を当てて赤面する。
「~~~~。そこまで仰るなら穿かせてもらいますけど。……でも、お金払わせてくださいね」
「まさか。商品にもしていない物を売れる訳がないだろう」
キョトンと瞠目する佑を見て、麻衣は「香澄~」と泣きついてくる。
「佑さんはお父さんみたいに次々と洋服を渡してくるし、プレゼントしてくれるって言うなら、ありがたく受け取ればいいんじゃないかな」
「……お父さん……」
呟く佑を横目に、麻衣はもう一度個性的なシルエットのスカートを摘まんで、形を確認してから頷いた。
「……じゃあ、思い切っていただきます」
「どうぞ。その代わり、あとで全方向、シルエットの確認のために写真を撮らせてもらってもいいかな? 下半身のみの撮影だし、雑誌やネットなどには載せない。社員に共有して意見を聞く程度だ。社員にもデータの管理は徹底させる」
「構いません。お役に立てて光栄です」
「よし、じゃあ準備ができたら教えてくれ。俺は部屋にいる」
香澄は佑と一緒に麻衣の部屋から出て、彼に尋ねる。
「ランチは何時?」
「個室のキャンセルが出てしまったみたいで、そこで対応してくれるみたいだ。『空けておきますので、ゆっくり準備してください』と言ってくれたから、急がなくていいと思うけど、まぁ、常識の範囲内で」
「うん、分かった」
こうやって柔軟な対応をしてもらえるのも、佑が常連客で信用があるからだろう。
(ありがたい事だなぁ)
本当なら予約必須の高級店なのに、こうやって気軽に楽しめるのはやはり佑がいるからだ。
今まで彼が丁寧に近所付き合い、贔屓の店を大切にしたからというのもある。
彼が築いてきたものを、香澄も大切にしていきたいと思うのだった。
その後、着替えた麻衣とメイクごっこをした。
麻衣が香澄のメイク方法を知りたがったので、同じアイテムを使って自分なりのやり方を実践していった。
準備ができたあとは、斎藤たちに出かけると告げて、中華レストランに向かって歩き始める。
「御劔さん、スカートどうでした?」
「ああ。思っていたシルエットが出たと思っている。だがもう少し布地のボリュームがあってもいいか……?」
黒いアシンメトリースカートを穿いた麻衣が歩いている姿を見て、佑は難しい顔をする。
ちなみに写真撮影は、外出から帰ってからという事になっていた。
「香澄がマネキンじゃ駄目なんですか?」
「いつも着てもらってはいる。でもサイズが変わると服のラインや印象も変わってくるから、ボリュームやカッティングも微かに調整しているんだ。その意味で、本当は試作段階で色んな体型の人に着てもらいたい」
「なるほど」
「もう少し布地の量を増やしたほうがいいかな……。だがコスト的に……」
ぶつぶつ言っている佑を置いておき、香澄は麻衣と腕を組む。
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