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第十八部・麻衣と年越し 編
僕ら、マイと友達じゃん
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「構わないよ。遠くから見てたい」
「じゃあ、僕らと一緒に上階のバルコニーにでもいる? 僕ら、クリスマスイベントもそこで見てたんだ」
クラウスに言われ、麻衣は頷く。
「そうします。やったね! 香澄が働いてるところ見られる」
麻衣はご機嫌だが、佑は申し訳なさそうに言う。
「多分、香澄は舞台裏にいるから、働いている姿は分からないと思う」
クリスマスイベントの時に切りつけられた事で、香澄は佑から「新年イベントは絶対に側にいて」と言われている。
「構いませんよ。東京でTMタワーのイベントなんて、札幌にいたらまず見られませんから、行けるだけで嬉しいです。香澄は二の次で、イベント目当てです」
「あー。麻衣、本音が出たな?」
隣に座っている麻衣をくりくりと肘でいじると、逆に麻衣に脇腹をくすぐられてしまった。
「きゃあっ! っははははは!」
じゃれついている香澄と麻衣を、男性陣は「女子のやり取りは可愛くていいな」という目で見守っている。
「麻衣、二日はイベントが終わったら、マティアスさんたちにブラブラするの付き合ってもらいなよ」
「ええ? こんなイケメン連れて歩くのしんどい」
苦言を呈した麻衣に、クラウスが文句を言う。
「ちょ、僕ら荷物持ちになるし、役に立つよ?」
「そうそう。買い物があったら付き合うし、食べたい物があったらご馳走するし、役に立つと思うけど」
双子はまさか拒否されると思っていなかったのか、食いついてくる。
「や! そうじゃなくて。…………が、顔面偏差値とか、見た目的に、私みたいなのがこの三人を連れてると、周りの目が痛いっていうか……」
言いたくないのに「私みたいなの」と言ってしまう麻衣の背中を、香澄は内心「あああ」となりながらさする。
フォローしようと思った矢先、双子が声を上げた。
「はああああ? 何ソレ。見た目なんてカンケーないじゃん」
「そうそう。僕ら、マイと友達じゃん? 買い物に付き合うぐらい普通でしょ」
「……ありがとうございます」
麻衣が抱えているコンプレックスなど、双子は何も気にしていない。
それを察し、彼女は安堵して笑った。
「それだったら、手を繋いで歩こうか?」
そこでマティアスが斜め上の発言をし、すぐに双子が笑い崩れる。
「それはちょっと違うだろ。せめて二人きりの時に、手を握っていいか聞いてからにしろ」
「御劔さんまで!」
麻衣は呆れたように言い、香澄はケラケラ笑う。
飲み物とフルーツをつつきながらの団欒だったが、時間も遅くなってきたので、各自寝る準備をした。
**
結局、三十日、三十一日は自宅でゆっくりする事にした。
午前中に斎藤が出勤してきて、年末年始の料理を作り始めたので、香澄と麻衣もその手伝いをした。
「斎藤さんって料理の発想が凄いですね!?」
指示された事をしつつ麻衣が驚くと、香澄は「でしょ~!」と同意する。
斎藤の手伝いをしていると、「こんな材料でこんな物をこうして作るの!?」という驚きが沢山あり、勉強になる。
「貴恵さんは、もともとフランスの星のつくレストランで修業してた人なんだよ」
「へえぇ~! すごい!」
麻衣は今、白ごまをすっている。
一口大に切ったマグロを、斎藤オリジナルのソースと白ごまで和えるのだそうだ。
香澄は筑前煮を掻き混ぜていて、斎藤は技術がいる作業をしている。
佑も手伝おうとしたのだが、急遽真澄から連絡が入って、書斎でリモート会議をしている。
マティアスは洗い物をし、双子はかさばるのでリビングで待機してもらっている。
「家政婦さんって大変じゃないです?」
麻衣の質問に斎藤は微笑する。
「料理が好きで、これで生きていきたいと思っています。一流レストランとか、職場へのこだわりを捨てたあとは、むしろ融通の利く働き方ができてありがたく思っています」
「そうですよね。料理人って言っても、レストランで働くのがすべてじゃないですし」
麻衣の言葉に、斎藤は頷く。
「じゃあ、僕らと一緒に上階のバルコニーにでもいる? 僕ら、クリスマスイベントもそこで見てたんだ」
クラウスに言われ、麻衣は頷く。
「そうします。やったね! 香澄が働いてるところ見られる」
麻衣はご機嫌だが、佑は申し訳なさそうに言う。
「多分、香澄は舞台裏にいるから、働いている姿は分からないと思う」
クリスマスイベントの時に切りつけられた事で、香澄は佑から「新年イベントは絶対に側にいて」と言われている。
「構いませんよ。東京でTMタワーのイベントなんて、札幌にいたらまず見られませんから、行けるだけで嬉しいです。香澄は二の次で、イベント目当てです」
「あー。麻衣、本音が出たな?」
隣に座っている麻衣をくりくりと肘でいじると、逆に麻衣に脇腹をくすぐられてしまった。
「きゃあっ! っははははは!」
じゃれついている香澄と麻衣を、男性陣は「女子のやり取りは可愛くていいな」という目で見守っている。
「麻衣、二日はイベントが終わったら、マティアスさんたちにブラブラするの付き合ってもらいなよ」
「ええ? こんなイケメン連れて歩くのしんどい」
苦言を呈した麻衣に、クラウスが文句を言う。
「ちょ、僕ら荷物持ちになるし、役に立つよ?」
「そうそう。買い物があったら付き合うし、食べたい物があったらご馳走するし、役に立つと思うけど」
双子はまさか拒否されると思っていなかったのか、食いついてくる。
「や! そうじゃなくて。…………が、顔面偏差値とか、見た目的に、私みたいなのがこの三人を連れてると、周りの目が痛いっていうか……」
言いたくないのに「私みたいなの」と言ってしまう麻衣の背中を、香澄は内心「あああ」となりながらさする。
フォローしようと思った矢先、双子が声を上げた。
「はああああ? 何ソレ。見た目なんてカンケーないじゃん」
「そうそう。僕ら、マイと友達じゃん? 買い物に付き合うぐらい普通でしょ」
「……ありがとうございます」
麻衣が抱えているコンプレックスなど、双子は何も気にしていない。
それを察し、彼女は安堵して笑った。
「それだったら、手を繋いで歩こうか?」
そこでマティアスが斜め上の発言をし、すぐに双子が笑い崩れる。
「それはちょっと違うだろ。せめて二人きりの時に、手を握っていいか聞いてからにしろ」
「御劔さんまで!」
麻衣は呆れたように言い、香澄はケラケラ笑う。
飲み物とフルーツをつつきながらの団欒だったが、時間も遅くなってきたので、各自寝る準備をした。
**
結局、三十日、三十一日は自宅でゆっくりする事にした。
午前中に斎藤が出勤してきて、年末年始の料理を作り始めたので、香澄と麻衣もその手伝いをした。
「斎藤さんって料理の発想が凄いですね!?」
指示された事をしつつ麻衣が驚くと、香澄は「でしょ~!」と同意する。
斎藤の手伝いをしていると、「こんな材料でこんな物をこうして作るの!?」という驚きが沢山あり、勉強になる。
「貴恵さんは、もともとフランスの星のつくレストランで修業してた人なんだよ」
「へえぇ~! すごい!」
麻衣は今、白ごまをすっている。
一口大に切ったマグロを、斎藤オリジナルのソースと白ごまで和えるのだそうだ。
香澄は筑前煮を掻き混ぜていて、斎藤は技術がいる作業をしている。
佑も手伝おうとしたのだが、急遽真澄から連絡が入って、書斎でリモート会議をしている。
マティアスは洗い物をし、双子はかさばるのでリビングで待機してもらっている。
「家政婦さんって大変じゃないです?」
麻衣の質問に斎藤は微笑する。
「料理が好きで、これで生きていきたいと思っています。一流レストランとか、職場へのこだわりを捨てたあとは、むしろ融通の利く働き方ができてありがたく思っています」
「そうですよね。料理人って言っても、レストランで働くのがすべてじゃないですし」
麻衣の言葉に、斎藤は頷く。
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