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第十八部・麻衣と年越し 編
お金持ってる彼氏って、結構面倒臭いね
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「ファンタジーランドか……」
佑が顎に手を当て、考え始める。
「どうかしたの?」
「いや、香澄が麻衣さんと行くって言うなら、俺も行きたいなと思って」
「変装するの? まぁ、芸能人も家族や友達と行ってるみたいだけどね」
時々テレビで芸能人が「ランド行きました」とバラエティで写真を出しているのを見るし、中には〝通〟の芸能人だっている。
有名人だから、テーマパークを楽しめないという事はないだろう。
「確か、テーマパークの貸し切りって、三、四千万ぐらいでできたよな?」
突然佑がそんな事を言い、香澄と麻衣は紅茶に噎せた。
それにケロッと答えたのはアロイスだ。
「日本の相場は知らないけど、そのぐらいじゃない?」
香澄は必死に佑に縋り付く。
「いやいやいや! 佑さん、すぐそういう方向に話を持っていく癖、駄目だからね! 行きたいなら、サングラスでも掛けたらいいじゃない。ファンタジーバニーのカチューシャ被って、ご機嫌な人のふりをしてたら、絶対溶け込めるよ!」
「そうですよ。御劔さん、ちょっと金銭感覚壊れてる……」
二人にドン引かれ、佑はさすがに「え」となって、同意を求めるように双子を見る。
佑を助けるつもりはないのだろうが、クラウスが不思議そうに言った。
「僕らも前に女の子たちと遊んだ時、ウォーターパークを借り切って、水着パーティーやったけどね」
「わーお、どっこいどっこいだね」
麻衣がボソッと突っ込む。
「とにかく! そんなにお金を出す必要はないの。一般人として楽しみたいだけなんだから」
「……そうか」
シュンとする佑を見ると、逆にこちらが申し訳なくなる。
「……お金持ってる彼氏って、結構面倒臭いね」
とうとう麻衣が全員に聞こえる声で突っ込み、双子がぶふっと噴いた。
「だろう。俺もそう思う。その点俺は安全だ」
マティアスが頷き、麻衣をジッと見つめる。
その分かりやすいアピールに、麻衣はあからさまに目を逸らす。
香澄と双子はにやつき、佑は溜め息をつく。
そしてマティアスも例に漏れず大金持ちだが、麻衣はこの時点ではまだ分かっていない。
「ところでマイ。俺とデートしてくれる日は、何日がいいだろうか? 年を越してからのほうがいいだろうか?」
突然マティアスがデートの話をしだし、紅茶を飲もうとした麻衣が激しく噎せた。
「ちょっ、麻衣! 大丈夫?」
香澄はトントンと彼女の背中を叩きつつ、「これは面白くなってきた」とにやつく。
「そっ、そういう話、人がいる時にします!?」
ガバッと顔を上げた麻衣の顔は赤く、涙目だ。
「だが夜になれば、禁断の二階ですぐに寝てしまうだろう。俺は二階に立ち入れない」
「っそれは……」
ドイツ組三人には二階に来ないようにと言っている。
一日が終わってさあ寝ようとなれば、彼が来られないのも当たり前だ。
「いいじゃん、麻衣。先に予定を立てておいたほうが良くない? 私たちも合わせやすいし」
「う……うん……」
真っ赤になった麻衣は溜め息をつき、スマホのカレンダーアプリを見る。
「一月五日は早めに新千歳に着いて、仕事のために体を休めておきたいから……」
アプリを見ながら麻衣がぶつぶつ言い、香澄も補足する。
「元旦が過ぎたら、二、三、四はすぐだね。四日はお土産を買う日にしたほうがいいと思うし」
「そうだね。初詣って行く?」
「うーん、去年は行った……ね。家の近所の神社と、佑さんがお世話になっている、ビジネス関係のご利益がある神社とか……」
「ああ」
「じゃあ、一月三日……か、それとも明日か……かな。二日は買うかどうか分からないけど、初売りの感じをちょっと見てみたい。大晦日の料理とか、準備しなくていいの? 斎藤さん? 一人に任せたら悪いし、手伝うなら手伝ったほうが気持ち的に楽だし」
そこで香澄は大事な事を思いだした。
「あーっ! ごめん。二日……はちょっと駄目だ。仕事なの」
「え?」
麻衣は目を瞬かせる。
「TMタワーの本店で初売りと福袋やるの。勿論、他の店舗もだけど。地獄の忙しさになるし、あけおめイベントがあって佑さんも社長として出なきゃいけなくて」
「えー? 何ソレ、面白そう! 見学しに行っていい?」
「いいけど……。混んでるよ?」
香澄はキョトンと目を瞬かせる。
佑が顎に手を当て、考え始める。
「どうかしたの?」
「いや、香澄が麻衣さんと行くって言うなら、俺も行きたいなと思って」
「変装するの? まぁ、芸能人も家族や友達と行ってるみたいだけどね」
時々テレビで芸能人が「ランド行きました」とバラエティで写真を出しているのを見るし、中には〝通〟の芸能人だっている。
有名人だから、テーマパークを楽しめないという事はないだろう。
「確か、テーマパークの貸し切りって、三、四千万ぐらいでできたよな?」
突然佑がそんな事を言い、香澄と麻衣は紅茶に噎せた。
それにケロッと答えたのはアロイスだ。
「日本の相場は知らないけど、そのぐらいじゃない?」
香澄は必死に佑に縋り付く。
「いやいやいや! 佑さん、すぐそういう方向に話を持っていく癖、駄目だからね! 行きたいなら、サングラスでも掛けたらいいじゃない。ファンタジーバニーのカチューシャ被って、ご機嫌な人のふりをしてたら、絶対溶け込めるよ!」
「そうですよ。御劔さん、ちょっと金銭感覚壊れてる……」
二人にドン引かれ、佑はさすがに「え」となって、同意を求めるように双子を見る。
佑を助けるつもりはないのだろうが、クラウスが不思議そうに言った。
「僕らも前に女の子たちと遊んだ時、ウォーターパークを借り切って、水着パーティーやったけどね」
「わーお、どっこいどっこいだね」
麻衣がボソッと突っ込む。
「とにかく! そんなにお金を出す必要はないの。一般人として楽しみたいだけなんだから」
「……そうか」
シュンとする佑を見ると、逆にこちらが申し訳なくなる。
「……お金持ってる彼氏って、結構面倒臭いね」
とうとう麻衣が全員に聞こえる声で突っ込み、双子がぶふっと噴いた。
「だろう。俺もそう思う。その点俺は安全だ」
マティアスが頷き、麻衣をジッと見つめる。
その分かりやすいアピールに、麻衣はあからさまに目を逸らす。
香澄と双子はにやつき、佑は溜め息をつく。
そしてマティアスも例に漏れず大金持ちだが、麻衣はこの時点ではまだ分かっていない。
「ところでマイ。俺とデートしてくれる日は、何日がいいだろうか? 年を越してからのほうがいいだろうか?」
突然マティアスがデートの話をしだし、紅茶を飲もうとした麻衣が激しく噎せた。
「ちょっ、麻衣! 大丈夫?」
香澄はトントンと彼女の背中を叩きつつ、「これは面白くなってきた」とにやつく。
「そっ、そういう話、人がいる時にします!?」
ガバッと顔を上げた麻衣の顔は赤く、涙目だ。
「だが夜になれば、禁断の二階ですぐに寝てしまうだろう。俺は二階に立ち入れない」
「っそれは……」
ドイツ組三人には二階に来ないようにと言っている。
一日が終わってさあ寝ようとなれば、彼が来られないのも当たり前だ。
「いいじゃん、麻衣。先に予定を立てておいたほうが良くない? 私たちも合わせやすいし」
「う……うん……」
真っ赤になった麻衣は溜め息をつき、スマホのカレンダーアプリを見る。
「一月五日は早めに新千歳に着いて、仕事のために体を休めておきたいから……」
アプリを見ながら麻衣がぶつぶつ言い、香澄も補足する。
「元旦が過ぎたら、二、三、四はすぐだね。四日はお土産を買う日にしたほうがいいと思うし」
「そうだね。初詣って行く?」
「うーん、去年は行った……ね。家の近所の神社と、佑さんがお世話になっている、ビジネス関係のご利益がある神社とか……」
「ああ」
「じゃあ、一月三日……か、それとも明日か……かな。二日は買うかどうか分からないけど、初売りの感じをちょっと見てみたい。大晦日の料理とか、準備しなくていいの? 斎藤さん? 一人に任せたら悪いし、手伝うなら手伝ったほうが気持ち的に楽だし」
そこで香澄は大事な事を思いだした。
「あーっ! ごめん。二日……はちょっと駄目だ。仕事なの」
「え?」
麻衣は目を瞬かせる。
「TMタワーの本店で初売りと福袋やるの。勿論、他の店舗もだけど。地獄の忙しさになるし、あけおめイベントがあって佑さんも社長として出なきゃいけなくて」
「えー? 何ソレ、面白そう! 見学しに行っていい?」
「いいけど……。混んでるよ?」
香澄はキョトンと目を瞬かせる。
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