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第十八部・麻衣と年越し 編
御劔佑のイメージ
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「単純に知りたがってるだけだから、教えてあげて。ちょっとやそっとの事じゃ怒らないから」
麻衣をつつくと、彼女は諦めたように口を開いた。
「影響を受ける前は『テレビに出てる、やけに顔のいい、経営者なのにバラエティにも出てる変わった人』っていう印象でした。正直、経営者なのかタレントなのかよく分からなかったです。テレビに出ている姿を見ると、『この人、ちゃんと仕事してるのかな? 部下に任せてるだけなんじゃないかな?』とか思っていました」
「なるほど、確かにメディアに露出している他は、謎が多い……か」
佑は顎に手をやり、何かを考えている。
「休日にテレビを見ていると、ワイドショーで報じられている事もあるので、やれウン億円の絵画を買っただの、クルーザーで東京湾デートだの、プライベートジェットでどうのこうの……って聞くと、遊び回ってる人なのかな? という無責任な思いが……」
「クルーザーで東京湾デート?」
香澄はピクンと反応し、「なにそれ?」と佑を見る。
だが佑も心当たりのない顔で考え込み、難しい顔をしてしばらく悩んだあと、うめくように言う。
「コレクションが終わって、モデルたちにお疲れ様の意味を兼ねてクルーザーでパーティーを開いた事はある。もちろん役員やメンズモデルもいたし、俺が個人的に女性とデートしたなどあり得ない。……多分、人混みに嫌気がさして甲板に出ていたところで、誰かに声を掛けられたのを、海まで出た記者に撮られた……可能性はある」
「わぁ……。海まで追いかけるんだ……」
呆れた声を出したが、佑は「そんなもんだ」と諦めている。
「……と、まぁ。佑さんにはこういう割と地味な理由があるんだけど」
麻衣に話し掛けると、ホットミルクを飲んでいた彼女は「ふぅん……」と頷く。
「やっぱりワイドショーの情報だけで、印象を決めてたら駄目ですね。ネットで見る写真でも、ファッションショーでモデルさんに囲まれてる写真とかが多いから、自然と頭に〝常に女性と一緒にいる人〟っていうイメージあるんですよ」
「なるほど。……仕方がないと言えば仕方がないか」
「香澄がいる前で申し訳ないんですが、何年か前、モデルと噂になったじゃないですか。だから正直、香澄から話を聞いた時は『騙されているんじゃないかな』って思いました」
「んー……、それは……。申し訳ない。ある程度は事実だったから、不実な印象を与えてしまっていたかもしれない」
佑が認めた事から、香澄はNOZOMIというモデルの事だと察する。
「今は香澄一筋なんですね?」
「ああ、本当に香澄一筋だ」
「……って、御劔さんが自分のイメージを聞いたんじゃないですか。なぜこうなる」
麻衣が突っ込み、三人して思わず笑った。
「……そうか。やっぱり有名だと『遊んでそう』っていうのは思われてるんだな」
「遺憾ですか? 社長」
香澄が少しふざけて尋ねると、彼は「この」という表情で苦笑いする。
「きっとテレビの向こうにいる、実在してるかも分からない相手っていう印象なんだろうな」
「そう! それです! だから私も、空港でお会いした時は『本当にいる!』って思っちゃいました」
「もっとChief Everyを身近に感じてほしいと思うけど、俺のイメージが一人歩きしているんだな。浮ついた行動はしないように心がけているけど、今まで以上に気をつけないと。『MONDAY』は怖い……」
「あー、『月曜日の悪魔』って言われているアレね……」
「『文冬砲』も有名ですね。すべてを凍り付かせる……」
麻衣も乗ると、佑は額を押さえて「聞きたくない」と首を振る。
「でも、こうやってご招待頂けて、実際の御劔さんがどういう人なのか分かって良かったです」
「合格点をもらえて良かった。引き続き宜しくお願いします」
佑が仕事のメールのように言って頭を下げる姿を見て、香澄は笑った。
「御劔さんも、札幌に来た時は声を掛けてください。美味しいラーメン屋ぐらいなら案内できますよ」
「頼むよ」
すっかり打ち解けた佑と麻衣を見て、香澄はこの上なく幸せだった。
――と、和やかな空気に麻衣が一石を投じる。
「ところで香澄。一月に皆で会おうかって話があるんだけど」
「ん? 聞いてない。同窓会? ハガキも来てなかった気がするけど」
「あ、いや。正式なのじゃないの。仲いい子と『集まろうか』って言ってるだけで。決まったら連絡くると思うけどね」
「ふぅん……。懐かしいな。会いたい」
香澄はさっそくスマホを開き、カレンダーアプリで帰省できそうな日にちを確認する。
「十日から十三日まで連休だね」
「そうそう。その辺りを狙ってて」
「うーん……。仕事始め一週間だけど……。佑さん、帰省していい?」
そう言って佑を見ると、彼は難しい顔をしている。
麻衣をつつくと、彼女は諦めたように口を開いた。
「影響を受ける前は『テレビに出てる、やけに顔のいい、経営者なのにバラエティにも出てる変わった人』っていう印象でした。正直、経営者なのかタレントなのかよく分からなかったです。テレビに出ている姿を見ると、『この人、ちゃんと仕事してるのかな? 部下に任せてるだけなんじゃないかな?』とか思っていました」
「なるほど、確かにメディアに露出している他は、謎が多い……か」
佑は顎に手をやり、何かを考えている。
「休日にテレビを見ていると、ワイドショーで報じられている事もあるので、やれウン億円の絵画を買っただの、クルーザーで東京湾デートだの、プライベートジェットでどうのこうの……って聞くと、遊び回ってる人なのかな? という無責任な思いが……」
「クルーザーで東京湾デート?」
香澄はピクンと反応し、「なにそれ?」と佑を見る。
だが佑も心当たりのない顔で考え込み、難しい顔をしてしばらく悩んだあと、うめくように言う。
「コレクションが終わって、モデルたちにお疲れ様の意味を兼ねてクルーザーでパーティーを開いた事はある。もちろん役員やメンズモデルもいたし、俺が個人的に女性とデートしたなどあり得ない。……多分、人混みに嫌気がさして甲板に出ていたところで、誰かに声を掛けられたのを、海まで出た記者に撮られた……可能性はある」
「わぁ……。海まで追いかけるんだ……」
呆れた声を出したが、佑は「そんなもんだ」と諦めている。
「……と、まぁ。佑さんにはこういう割と地味な理由があるんだけど」
麻衣に話し掛けると、ホットミルクを飲んでいた彼女は「ふぅん……」と頷く。
「やっぱりワイドショーの情報だけで、印象を決めてたら駄目ですね。ネットで見る写真でも、ファッションショーでモデルさんに囲まれてる写真とかが多いから、自然と頭に〝常に女性と一緒にいる人〟っていうイメージあるんですよ」
「なるほど。……仕方がないと言えば仕方がないか」
「香澄がいる前で申し訳ないんですが、何年か前、モデルと噂になったじゃないですか。だから正直、香澄から話を聞いた時は『騙されているんじゃないかな』って思いました」
「んー……、それは……。申し訳ない。ある程度は事実だったから、不実な印象を与えてしまっていたかもしれない」
佑が認めた事から、香澄はNOZOMIというモデルの事だと察する。
「今は香澄一筋なんですね?」
「ああ、本当に香澄一筋だ」
「……って、御劔さんが自分のイメージを聞いたんじゃないですか。なぜこうなる」
麻衣が突っ込み、三人して思わず笑った。
「……そうか。やっぱり有名だと『遊んでそう』っていうのは思われてるんだな」
「遺憾ですか? 社長」
香澄が少しふざけて尋ねると、彼は「この」という表情で苦笑いする。
「きっとテレビの向こうにいる、実在してるかも分からない相手っていう印象なんだろうな」
「そう! それです! だから私も、空港でお会いした時は『本当にいる!』って思っちゃいました」
「もっとChief Everyを身近に感じてほしいと思うけど、俺のイメージが一人歩きしているんだな。浮ついた行動はしないように心がけているけど、今まで以上に気をつけないと。『MONDAY』は怖い……」
「あー、『月曜日の悪魔』って言われているアレね……」
「『文冬砲』も有名ですね。すべてを凍り付かせる……」
麻衣も乗ると、佑は額を押さえて「聞きたくない」と首を振る。
「でも、こうやってご招待頂けて、実際の御劔さんがどういう人なのか分かって良かったです」
「合格点をもらえて良かった。引き続き宜しくお願いします」
佑が仕事のメールのように言って頭を下げる姿を見て、香澄は笑った。
「御劔さんも、札幌に来た時は声を掛けてください。美味しいラーメン屋ぐらいなら案内できますよ」
「頼むよ」
すっかり打ち解けた佑と麻衣を見て、香澄はこの上なく幸せだった。
――と、和やかな空気に麻衣が一石を投じる。
「ところで香澄。一月に皆で会おうかって話があるんだけど」
「ん? 聞いてない。同窓会? ハガキも来てなかった気がするけど」
「あ、いや。正式なのじゃないの。仲いい子と『集まろうか』って言ってるだけで。決まったら連絡くると思うけどね」
「ふぅん……。懐かしいな。会いたい」
香澄はさっそくスマホを開き、カレンダーアプリで帰省できそうな日にちを確認する。
「十日から十三日まで連休だね」
「そうそう。その辺りを狙ってて」
「うーん……。仕事始め一週間だけど……。佑さん、帰省していい?」
そう言って佑を見ると、彼は難しい顔をしている。
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