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第十八部・麻衣と年越し 編
寛いでるな
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「あ、そっか。香澄と御劔さんは、気軽にラーメン食べ歩きとかできないのか」
麻衣がズバッと口に出し、佑はワインに噎せかける。
そこでクラウスが、煽るように提案してきた。
「カスミ、マイ、おせちに飽きたら一緒にラーメン屋行こうか」
「俺たちはタスクと違って大丈夫だから、うまいラーメン食おうな」
アロイスも乗り、佑は「あのなぁ……」と双子をじっとりと睨む。
「普通にコンビニだって行くんだから、ラーメン屋に行けないはずがないだろう」
「だってカスミ、好きなのにあんまり連れてってもらってないんだろ? かーわいそー」
双子と佑のやり取りを、香澄は生ぬるい笑みで聞きながら、もっもっと肉を頬張る。
それを見て、呆気にとられた麻衣がコソコソと尋ねてくる。
「これ、喧嘩してるの?」
「いつもの事だから気にしないで」
会話をしても、女二人は肉をパクつくのをやめない。
満腹になるまで肉を食べたあと、仕上げにデザートを食べ、車に乗って御劔邸に戻った。
**
「うー……。お腹一杯……」
麻衣と一緒にお風呂に入り、ボディケアをレクチャーしてから、二人は二階のリビングでまったりとしていた。
「美味しかったでしょー」
「ほんっと美味しかった。香澄いっつもあんな豪華なご飯食べてたの? それでそんなお腹がぺったんこなの?」
麻衣は香澄のお腹に手を当て、ムニムニと押してくる。
「だからヨーロッパ行った時に四キロ太ったんだって。そのあと、必死になって体動かしたの」
「御劔ジム?」
「そう。御劔ジム」
一階のジムはまだ見せていないが、ジムがあるという事は教えた。
「私、痩せたいけど、運動するきっかけが掴めないんだよね」
麻衣が自分のぷくぷくした手を見て溜め息をつく。
「あー、分かる。私も腰が重たいよ」
香澄が同意すると、彼女に肘でツンツンと小突かれた。
「札幌にいた時、走ってたじゃん」
「あの頃は夜生活だったし、深夜に帰ってコンビニ弁当……とかだったから、やばいと思って」
「思って動けるだけ偉いよー」
二人はフワフワのラグマットの上でクッションを抱え、ゴロゴロしている。
「じゃあ、明日の朝から一緒に運動してみる? 年末年始でご馳走になるし、私もちょっとヤバさを感じてたの。麻衣と一緒なら楽しく運動できそうだし、どう?」
提案してみると、麻衣は顔をピョコッと上げて拳を突き出してきた。
「頑張る!」
「よし、えいえいおー!」
ゴロゴロしたまま運動の誓いを立てていた時、風呂上がりの佑がヒョコッと顔を覗かせた。その手には、マグカップが三つのったお盆がある。
「寛いでるな」
「わっ、御劔さん!」
麻衣は慌てて起き上がろうとするが、佑に「そのままでいいよ」と言われ、中途半端な体勢で固まる。
「お腹一杯になったか? 生憎、すき焼きをご馳走したのは俺じゃないけど」
すき焼きの会計はクラウスになり、結構な金額になっただろうに彼はご機嫌だった。
「はい。とっても美味しかったです」
麻衣が頷くと、佑は満足げに微笑んだ。
「それは良かった。もし食べたい物があったら遠慮なく言ってほしい。どんな料理にも対応できるツテはあるつもりだ。心配なのは年末に店を押さえられるかだけど」
「いえ! 本当に気にしないでください。今日だけでもいい思い出になりました」
香澄は佑が持ってきてくれたホットミルクを、ふぅふぅ冷まして口にする。
「しかし、あの〝御劔佑〟がホットミルクを持ってきてくれるとか……」
麻衣はありがたそうにマグカップを見て、蜂蜜が少し入ったホットミルクを飲む。
「香澄が好きだから世話を焼きたいし、麻衣さんも大切な客だからもてなしたい。普通だと思うけど」
佑もリビングのソファに腰掛け、自分のマグカップに口を付ける。
「ナチュラルに惚気られちゃった」
思わず笑う麻衣に、逆に佑が尋ねてきた。
「逆に、今までどういうイメージを持ってたか教えてくれるか? 麻衣さんの言う〝あの御劔佑〟がどんな感じなのか〝世間の声〟を聞いてみたい」
「え? あー……、うぅ」
困っている麻衣を見て、香澄はクスクス笑う。
麻衣がズバッと口に出し、佑はワインに噎せかける。
そこでクラウスが、煽るように提案してきた。
「カスミ、マイ、おせちに飽きたら一緒にラーメン屋行こうか」
「俺たちはタスクと違って大丈夫だから、うまいラーメン食おうな」
アロイスも乗り、佑は「あのなぁ……」と双子をじっとりと睨む。
「普通にコンビニだって行くんだから、ラーメン屋に行けないはずがないだろう」
「だってカスミ、好きなのにあんまり連れてってもらってないんだろ? かーわいそー」
双子と佑のやり取りを、香澄は生ぬるい笑みで聞きながら、もっもっと肉を頬張る。
それを見て、呆気にとられた麻衣がコソコソと尋ねてくる。
「これ、喧嘩してるの?」
「いつもの事だから気にしないで」
会話をしても、女二人は肉をパクつくのをやめない。
満腹になるまで肉を食べたあと、仕上げにデザートを食べ、車に乗って御劔邸に戻った。
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「うー……。お腹一杯……」
麻衣と一緒にお風呂に入り、ボディケアをレクチャーしてから、二人は二階のリビングでまったりとしていた。
「美味しかったでしょー」
「ほんっと美味しかった。香澄いっつもあんな豪華なご飯食べてたの? それでそんなお腹がぺったんこなの?」
麻衣は香澄のお腹に手を当て、ムニムニと押してくる。
「だからヨーロッパ行った時に四キロ太ったんだって。そのあと、必死になって体動かしたの」
「御劔ジム?」
「そう。御劔ジム」
一階のジムはまだ見せていないが、ジムがあるという事は教えた。
「私、痩せたいけど、運動するきっかけが掴めないんだよね」
麻衣が自分のぷくぷくした手を見て溜め息をつく。
「あー、分かる。私も腰が重たいよ」
香澄が同意すると、彼女に肘でツンツンと小突かれた。
「札幌にいた時、走ってたじゃん」
「あの頃は夜生活だったし、深夜に帰ってコンビニ弁当……とかだったから、やばいと思って」
「思って動けるだけ偉いよー」
二人はフワフワのラグマットの上でクッションを抱え、ゴロゴロしている。
「じゃあ、明日の朝から一緒に運動してみる? 年末年始でご馳走になるし、私もちょっとヤバさを感じてたの。麻衣と一緒なら楽しく運動できそうだし、どう?」
提案してみると、麻衣は顔をピョコッと上げて拳を突き出してきた。
「頑張る!」
「よし、えいえいおー!」
ゴロゴロしたまま運動の誓いを立てていた時、風呂上がりの佑がヒョコッと顔を覗かせた。その手には、マグカップが三つのったお盆がある。
「寛いでるな」
「わっ、御劔さん!」
麻衣は慌てて起き上がろうとするが、佑に「そのままでいいよ」と言われ、中途半端な体勢で固まる。
「お腹一杯になったか? 生憎、すき焼きをご馳走したのは俺じゃないけど」
すき焼きの会計はクラウスになり、結構な金額になっただろうに彼はご機嫌だった。
「はい。とっても美味しかったです」
麻衣が頷くと、佑は満足げに微笑んだ。
「それは良かった。もし食べたい物があったら遠慮なく言ってほしい。どんな料理にも対応できるツテはあるつもりだ。心配なのは年末に店を押さえられるかだけど」
「いえ! 本当に気にしないでください。今日だけでもいい思い出になりました」
香澄は佑が持ってきてくれたホットミルクを、ふぅふぅ冷まして口にする。
「しかし、あの〝御劔佑〟がホットミルクを持ってきてくれるとか……」
麻衣はありがたそうにマグカップを見て、蜂蜜が少し入ったホットミルクを飲む。
「香澄が好きだから世話を焼きたいし、麻衣さんも大切な客だからもてなしたい。普通だと思うけど」
佑もリビングのソファに腰掛け、自分のマグカップに口を付ける。
「ナチュラルに惚気られちゃった」
思わず笑う麻衣に、逆に佑が尋ねてきた。
「逆に、今までどういうイメージを持ってたか教えてくれるか? 麻衣さんの言う〝あの御劔佑〟がどんな感じなのか〝世間の声〟を聞いてみたい」
「え? あー……、うぅ」
困っている麻衣を見て、香澄はクスクス笑う。
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