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第十八部・麻衣と年越し 編
一番好みかも
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「女扱いされない」と諦めていたのに、マティアスの大きな〝男〟の手を感じて、今まで無視していた自分の〝女性〟を自覚させられた。
ブワッと全身が熱くなり、変な汗を掻く。
呆然としている間に個室の前まできていて、さすがに我に返った。
(双子さんにバレたら、絶対何か言われる)
引き続き変な汗を掻きながら、さりげなくマティアスの手を離し、なるべく何事もなかったかのように個室に入った。
**
麻衣とマティアスが戻ってきたあと、牛ヒレステーキを含む全八品の懐石コースが運ばれた。
香澄と麻衣がデザートを頬張っている間、男性陣は例によって〝誰が払うかじゃんけん〟をしていた。
「……勝った人が払うって、変わってるね」
麻衣がボソッと囁いてきて、香澄は苦笑いする。
「女の子にご馳走できるのが嬉しいみたい」
あはは、と笑ってデザートの器を空にしてしまうと、香澄は手洗いに行こうかとバッグを手にする。
「あ、お手洗い?」
「うん」
「一緒に行く」
麻衣と連れトイレがするのが懐かしく、香澄はクスクス笑う。
そして男性陣に「少しお化粧直ししてきます」と断って個室を出た。
「ねぇ、さっきマティアスさんの用事、何だったの?」
手洗いを済ませ、リップを直してから気になっていた事を尋ねると、麻衣が分かりやすく動揺した。
「わっ」
麻衣の唇から口紅がはみ出て、彼女が悲鳴を上げる。
「も~……」
「ごめんごめん」
そのあと麻衣は黙ってリップを直し、キャップを閉めると同時に溜め息をついた。
「……人生で初めて、『デートしてほしい』って言われた」
「嘘!? 本当!? やっっっっ……た……!!」
香澄はぐっと両手を握り、中腰になってガッツポーズを取る。
「で、どうなの? 麻衣の気持ちはどうなの?」
嬉しさのあまり、香澄は食い気味に聞いてしまう。
すると麻衣ははにかんで言葉を迷わせたあと、両手でタオルハンカチを揉みくちゃにしながらポソポソと呟く。
「わ……分かんないよ。こんな事初めてだし、あんな外国人イケメンだよ? 今でも信じられなくて、何かのドッキリかと思ってる」
「麻衣が貯め込んでた〝男運ポイント〟はね、ここでドカンッと使われたんだよ」
「あっはは! 男運ポイント!」
笑ってから、麻衣は「はぁ~……」と溜め息をついて鏡に映った自分の顔を見た。
「あんなイケメンに『デートしよう』って言われるなんて、思いもしなかった」
「麻衣はマティアスさんの事、どう思ってる?」
「文句なしに格好いいと思うよ。正直、御劔さんも含めた四人の中で一番好みかも」
「おお~……。で、個人的な感情は?」
「……あの人が香澄にした事については、思いっきり殴ったからもう蒸し返すつもりはない。彼は利用されただけなんでしょ?」
「うん」
避けて通れない話題を出され、まじめに頷く。
「香澄がとっくに許しているなら、私も可能な限りそうしたい。今の感情は『お喋りじゃないけど、話したらクスッと笑える妙なユーモアのある人。多弁ではないからこそ、言葉に重みがある人』って思ってる。信用できそうとは感じてる」
「うん。私もそう思ってる。……で、恋愛対象になれそう?」
「うーーーーん……。あんまり突然過ぎて……。だって、釣り合わないでしょう?」
「何言ってるの? 私だって佑さんと釣り合ってないよ?」
香澄は思わず声をワントーン上げる。
「あんたは色々努力してるじゃん。私は……何もしてないもの」
香澄はグズついている麻衣を励ましたくて、懸命に訴える。
「私、それなりに努力はしてる。いつでもすんごい背伸びしてるの。私は生まれつきのお嬢さまじゃないし、プロポーションも良くない。上京して佑さんに支えてもらって、少し垢抜けたかもしれないけど、札幌にいた頃とベースは変わってないよ」
「うん……」
珍しく、麻衣が香澄に言葉で押される。
ブワッと全身が熱くなり、変な汗を掻く。
呆然としている間に個室の前まできていて、さすがに我に返った。
(双子さんにバレたら、絶対何か言われる)
引き続き変な汗を掻きながら、さりげなくマティアスの手を離し、なるべく何事もなかったかのように個室に入った。
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麻衣とマティアスが戻ってきたあと、牛ヒレステーキを含む全八品の懐石コースが運ばれた。
香澄と麻衣がデザートを頬張っている間、男性陣は例によって〝誰が払うかじゃんけん〟をしていた。
「……勝った人が払うって、変わってるね」
麻衣がボソッと囁いてきて、香澄は苦笑いする。
「女の子にご馳走できるのが嬉しいみたい」
あはは、と笑ってデザートの器を空にしてしまうと、香澄は手洗いに行こうかとバッグを手にする。
「あ、お手洗い?」
「うん」
「一緒に行く」
麻衣と連れトイレがするのが懐かしく、香澄はクスクス笑う。
そして男性陣に「少しお化粧直ししてきます」と断って個室を出た。
「ねぇ、さっきマティアスさんの用事、何だったの?」
手洗いを済ませ、リップを直してから気になっていた事を尋ねると、麻衣が分かりやすく動揺した。
「わっ」
麻衣の唇から口紅がはみ出て、彼女が悲鳴を上げる。
「も~……」
「ごめんごめん」
そのあと麻衣は黙ってリップを直し、キャップを閉めると同時に溜め息をついた。
「……人生で初めて、『デートしてほしい』って言われた」
「嘘!? 本当!? やっっっっ……た……!!」
香澄はぐっと両手を握り、中腰になってガッツポーズを取る。
「で、どうなの? 麻衣の気持ちはどうなの?」
嬉しさのあまり、香澄は食い気味に聞いてしまう。
すると麻衣ははにかんで言葉を迷わせたあと、両手でタオルハンカチを揉みくちゃにしながらポソポソと呟く。
「わ……分かんないよ。こんな事初めてだし、あんな外国人イケメンだよ? 今でも信じられなくて、何かのドッキリかと思ってる」
「麻衣が貯め込んでた〝男運ポイント〟はね、ここでドカンッと使われたんだよ」
「あっはは! 男運ポイント!」
笑ってから、麻衣は「はぁ~……」と溜め息をついて鏡に映った自分の顔を見た。
「あんなイケメンに『デートしよう』って言われるなんて、思いもしなかった」
「麻衣はマティアスさんの事、どう思ってる?」
「文句なしに格好いいと思うよ。正直、御劔さんも含めた四人の中で一番好みかも」
「おお~……。で、個人的な感情は?」
「……あの人が香澄にした事については、思いっきり殴ったからもう蒸し返すつもりはない。彼は利用されただけなんでしょ?」
「うん」
避けて通れない話題を出され、まじめに頷く。
「香澄がとっくに許しているなら、私も可能な限りそうしたい。今の感情は『お喋りじゃないけど、話したらクスッと笑える妙なユーモアのある人。多弁ではないからこそ、言葉に重みがある人』って思ってる。信用できそうとは感じてる」
「うん。私もそう思ってる。……で、恋愛対象になれそう?」
「うーーーーん……。あんまり突然過ぎて……。だって、釣り合わないでしょう?」
「何言ってるの? 私だって佑さんと釣り合ってないよ?」
香澄は思わず声をワントーン上げる。
「あんたは色々努力してるじゃん。私は……何もしてないもの」
香澄はグズついている麻衣を励ましたくて、懸命に訴える。
「私、それなりに努力はしてる。いつでもすんごい背伸びしてるの。私は生まれつきのお嬢さまじゃないし、プロポーションも良くない。上京して佑さんに支えてもらって、少し垢抜けたかもしれないけど、札幌にいた頃とベースは変わってないよ」
「うん……」
珍しく、麻衣が香澄に言葉で押される。
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