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第十八部・麻衣と年越し 編
これを受け取ってほしい
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「何ですか?」
結局、麻衣は店の外まで連れ出されていた。
ビンタをした事を恨まれているなら、意見ぐらいは聞こうと思っている。
だが「謝ってほしい」と言われたり、いまだグダグダ言われるなら「女々しい!」と怒鳴ってやろうと思っていた。
(でかいな……)
マティアスを前にすると、身長一九〇センチメートルはある彼を見上げる事になる。
顔は文句のつけようがなく格好良く、青い目もとても綺麗だ。
服装は黒いテーパードパンツに黒いタートルネックで、小手先のお洒落をせず素材の良さを出している。
何気なく観察していると、彼はズボンのポケットから紙袋を取りだした。
焦げ茶色の袋には金色のリボンシールがついていた。
「これを受け取ってほしい」
文句を言われると思いきや、プレゼントを渡され、毒気を抜かれる。
「え? 昨日言っていたプレゼントですか? いいのに」
「あげたいと思ったから買った。だから受け取ってほしい」
「……じゃあ、折角なので、……ありがとうございます」
(このマティアスっていう人、少し変わった人だな。海外の人って言ったら、勝手なイメージで皆ウェーイなパリピかと思ってた。双子の二人はまんまだけど、マティアスさんはは物静かだな。……まぁ、日本人でも色んな人がいるから当たり前か)
内心そう思いながら、麻衣は紙袋を受け取る。
「開けてみてほしい」
「はい」
シールを剥がして中身を出すと、透明なビニール袋の中に金色のチェーンが入っていた。
「…………?」
摘まんで取りだしてみると、単体のネックレスではなく、延長チェーンだ。
「あ……」
そこでようやく、昨日双子から受け取ったペンダントを思いだした。
短いペンダントをつけると、悲しい事に犬の首輪のようになってしまう。
肉感的な首に細いチェーンがギリギリまわり、ペンダントトップは垂れ下がるどころか、首元でピョコッと跳ね上がる始末だ。
恥ずかしい思いをするのが嫌で、麻衣は普段、普通体型の女性の店に入らなかった。
香澄と遊ぶ時も暗黙の了解で、そういう店に入らない。
身につけるアクセサリーは、ペンダントトップがデコルテまでくる、余裕のある物だけだ。
指も太いので、雑誌に載っているような繊細なリングはまず入らない。
最初から諦めているので指のサイズも測った事がなく、手のお洒落はたまにポリッシュネイルをするだけだ。
だからといって、特に悲観はしていない。
以前は少し卑屈になっていたかもしれないが、佑の本を読んでから少しずつ変わる事ができた。
服やアクセサリーが入らないなら、自分の体型に似合う物を楽しめばいい。
それを叶えてくれる服を作ってくれる限り、一生Chief Everyを応援するつもりだった。
もっとも、体重が増加し続けるのは健康に悪いので、痩せたい……とは思っているのだが。
けれどどうしても仕事のストレスがあると、ついつい食に走ってしまう。
「……余計な気遣いだっただろうか」
マティアスの言葉を聞いて、麻衣はハッと我に返る。
「ありがとうございます! こんな細かいところに気づいてもらえて、びっくりしました」
(一目見て、あのペンダントが付けられないって分かったのかな? それはそれで恥ずかしい)
そう思うものの、彼の気遣いは嬉しい。
「あの時、ほんの一瞬だがマイの笑顔に戸惑いがあったように見えた。原因を考えたら、そこに思い至った」
「あ……、なるほど……。それは、凄いですね」
事情を知っている香澄ならともかく、初対面でそんな僅かな表情に気づく洞察力に舌を巻く。
「これで気兼ねなく、頂いたアクセサリーを楽しめます。ありがとうございます」
(いい人だな)
昨日プレゼントを用意すると聞いて、「気を遣わなくていいのに」と思っていたが、これは地味に嬉しい。
佑や双子は高価な物をバカスカ買う人に思えるが、このマティアスという人は身近なところに配慮できる人だと感じた。
「マイ、ちょっとしたお礼をくれないか?」
「え? ……はい」
(お礼? 一方的にプレゼントをくれたのに、見返りを求めるの?)
それを聞き、内心ずっこけた。
結局、麻衣は店の外まで連れ出されていた。
ビンタをした事を恨まれているなら、意見ぐらいは聞こうと思っている。
だが「謝ってほしい」と言われたり、いまだグダグダ言われるなら「女々しい!」と怒鳴ってやろうと思っていた。
(でかいな……)
マティアスを前にすると、身長一九〇センチメートルはある彼を見上げる事になる。
顔は文句のつけようがなく格好良く、青い目もとても綺麗だ。
服装は黒いテーパードパンツに黒いタートルネックで、小手先のお洒落をせず素材の良さを出している。
何気なく観察していると、彼はズボンのポケットから紙袋を取りだした。
焦げ茶色の袋には金色のリボンシールがついていた。
「これを受け取ってほしい」
文句を言われると思いきや、プレゼントを渡され、毒気を抜かれる。
「え? 昨日言っていたプレゼントですか? いいのに」
「あげたいと思ったから買った。だから受け取ってほしい」
「……じゃあ、折角なので、……ありがとうございます」
(このマティアスっていう人、少し変わった人だな。海外の人って言ったら、勝手なイメージで皆ウェーイなパリピかと思ってた。双子の二人はまんまだけど、マティアスさんはは物静かだな。……まぁ、日本人でも色んな人がいるから当たり前か)
内心そう思いながら、麻衣は紙袋を受け取る。
「開けてみてほしい」
「はい」
シールを剥がして中身を出すと、透明なビニール袋の中に金色のチェーンが入っていた。
「…………?」
摘まんで取りだしてみると、単体のネックレスではなく、延長チェーンだ。
「あ……」
そこでようやく、昨日双子から受け取ったペンダントを思いだした。
短いペンダントをつけると、悲しい事に犬の首輪のようになってしまう。
肉感的な首に細いチェーンがギリギリまわり、ペンダントトップは垂れ下がるどころか、首元でピョコッと跳ね上がる始末だ。
恥ずかしい思いをするのが嫌で、麻衣は普段、普通体型の女性の店に入らなかった。
香澄と遊ぶ時も暗黙の了解で、そういう店に入らない。
身につけるアクセサリーは、ペンダントトップがデコルテまでくる、余裕のある物だけだ。
指も太いので、雑誌に載っているような繊細なリングはまず入らない。
最初から諦めているので指のサイズも測った事がなく、手のお洒落はたまにポリッシュネイルをするだけだ。
だからといって、特に悲観はしていない。
以前は少し卑屈になっていたかもしれないが、佑の本を読んでから少しずつ変わる事ができた。
服やアクセサリーが入らないなら、自分の体型に似合う物を楽しめばいい。
それを叶えてくれる服を作ってくれる限り、一生Chief Everyを応援するつもりだった。
もっとも、体重が増加し続けるのは健康に悪いので、痩せたい……とは思っているのだが。
けれどどうしても仕事のストレスがあると、ついつい食に走ってしまう。
「……余計な気遣いだっただろうか」
マティアスの言葉を聞いて、麻衣はハッと我に返る。
「ありがとうございます! こんな細かいところに気づいてもらえて、びっくりしました」
(一目見て、あのペンダントが付けられないって分かったのかな? それはそれで恥ずかしい)
そう思うものの、彼の気遣いは嬉しい。
「あの時、ほんの一瞬だがマイの笑顔に戸惑いがあったように見えた。原因を考えたら、そこに思い至った」
「あ……、なるほど……。それは、凄いですね」
事情を知っている香澄ならともかく、初対面でそんな僅かな表情に気づく洞察力に舌を巻く。
「これで気兼ねなく、頂いたアクセサリーを楽しめます。ありがとうございます」
(いい人だな)
昨日プレゼントを用意すると聞いて、「気を遣わなくていいのに」と思っていたが、これは地味に嬉しい。
佑や双子は高価な物をバカスカ買う人に思えるが、このマティアスという人は身近なところに配慮できる人だと感じた。
「マイ、ちょっとしたお礼をくれないか?」
「え? ……はい」
(お礼? 一方的にプレゼントをくれたのに、見返りを求めるの?)
それを聞き、内心ずっこけた。
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