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第十八部・麻衣と年越し 編
僕たちはあいつの恋を応援したいんだよね
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「香澄。マティアスも結婚適齢期だし、これから恋愛を何度も繰り返すのは奴の性格上難しいと思う。前提として国際カップルだから、そもそも問題が山積みだし、何より麻衣さんの気持ちが分からない。彼女はまだ、マティアスに良くない感情を持っているかもしれないし」
「うん」
舞い上がったものの、そう言われて香澄は自分を落ち着かせる。
「今まであいつは簡単に一目惚れしなかった。そもそも、恋愛とは縁遠い男だった。だから今回は本気だと思う。余計な茶々を入れず見守ろう。もし麻衣さんが相談を持ちかけてきたら、親友が一番幸せになれるアドバイスをすればいい」
「……うん。分かった」
マティアスが麻衣に一目惚れしたと知って嬉しくなったものの、にぎやかし精神は禁物だ。
「……でも、嬉しいなぁ」
香澄は掘りごたつの中で脚をブラブラさせ、ニヤつきながらオレンジジュースを飲む。
そんな彼女に、佑が尋ねてくる。
「麻衣さんは今まで、男性関係はどうだったんだ?」
「うーん。今まで彼氏はいなかったと思う。コンプレックスが強かったから、合コンとかそのものを避けてた印象がある。出会いがないだけで、話せば魅力的だと思うんだけど……。それに麻衣の作るご飯、すっごく美味しいんだよ」
香澄は親友の魅力を伝え、ぐっと拳を握る。
「そうか、それなら……」
佑が何か言いかけたが、香澄はハッと先日麻衣に言われた事を思いだす。
「あ、でも。『合コンでうまくいった人と連絡交換した』って言ってたな……」
「「え!?」」
双子が声を上げ、直後、プルプルと首を横に振る。
「そこはあいつに譲ってやってよ~」
「そうそう。合コンならその男にも別に出会いがあるだろーし。こっちは不幸具合、女に縁がない具合ならナンバーワンの男なんだから」
双子がそこまで言うのを聞き、香澄は不思議になる。
「マティアスさんってそんなに女性とご縁がなかったんですか? イケメンだし、背が高くて体も鍛えているし、強いんでしょう? エミリアさんの秘書をされていたから、ハイスペックな人だと思っていたんですが……」
正直な感想を口にしたが、双子は苦笑いする。
「こっちだと、外見的な魅力ってそんな意味ないかな。勿論、『目が綺麗』とか『イケメン』的な外見にキャーキャー言う女の子はいる。男もセクシーな女の子を見てグッとくる。けど、交際や結婚なら、もっと内面を見ると思う」
内面と言われても、特にマティアスに問題はないように感じる。
「とても親切で正直で、いい人だと思いますけど」
その言葉を聞き、アロイスは難しい顔をした。
「日本受けはいいのかもね。割とドイツの子は、グイグイリードしてくれるワイルドセクシーが好きだと思う。人に寄りけりだけど。顔が良くてガタイのいいサッカー選手とか、世界的に人気があるだろ? 見た目もあるけど、カリスマ性がある男はモテると思う。あいつの場合、顔が良くて性格が良くても、あまりに淡泊で『なんだこいつ』って思われかねない」
「なるほど……」
香澄は頷き、もし彼が麻衣とカップルになるなら……と想像してみる。
「愛情表現が控えめなら、シャイな日本人女性でも付き合いやすそうですね」
それを聞き、クラウスがニヤリと笑う。
「マイにすれば、僕たちみたいなのよりとっつきやすいかもね」
「あいつ、女の子と付き合った事はあっても、ブラック企業体質で、恋愛するどころじゃなかったんだよ。そこは俺たちも似てるけど」
アロイスの言葉に、クラウスがうんうんと頷く。
「そうそう。だから、僕たちはあいつの恋を応援したいんだよね。マジに応援したいから、でしゃばるのはやめようと思ってるけど」
「なるほど……」
(マティアスさんはとても素敵な人なのに、女性の影がないなと思っていたけど、思い返してみればエミリアさんがいた。彼女の影響でお二方は遊びまくっていたけど、マティアスさんは誰にも心を開かなかったんだろうな……)
そう思うと、納得できる。
「麻衣の好みって、優しい人だと思います。彼女がのびのび過ごせる環境を守ってくれる人っていうか。異性が絡むと萎縮しちゃうんですが、麻衣が素のままの自分でいられる人が現れたらいいなって、私はずっと思っていました」
「じゃああいつ、望みはあるかな?」
そう言って、クラウスが兄を見る。それに彼は頷いた。
「あいつ、先頭で引っ張っていくより、誰かのサポートをするのが得意なタイプだよ」
「じゃあ……可能性としてアリ、でしょうか?」
「どうかな~? 見守るしかないなー」
双子はニヤニヤしながらビールを呷り、香澄もワクワクしながらジュースを飲んだ。
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「うん」
舞い上がったものの、そう言われて香澄は自分を落ち着かせる。
「今まであいつは簡単に一目惚れしなかった。そもそも、恋愛とは縁遠い男だった。だから今回は本気だと思う。余計な茶々を入れず見守ろう。もし麻衣さんが相談を持ちかけてきたら、親友が一番幸せになれるアドバイスをすればいい」
「……うん。分かった」
マティアスが麻衣に一目惚れしたと知って嬉しくなったものの、にぎやかし精神は禁物だ。
「……でも、嬉しいなぁ」
香澄は掘りごたつの中で脚をブラブラさせ、ニヤつきながらオレンジジュースを飲む。
そんな彼女に、佑が尋ねてくる。
「麻衣さんは今まで、男性関係はどうだったんだ?」
「うーん。今まで彼氏はいなかったと思う。コンプレックスが強かったから、合コンとかそのものを避けてた印象がある。出会いがないだけで、話せば魅力的だと思うんだけど……。それに麻衣の作るご飯、すっごく美味しいんだよ」
香澄は親友の魅力を伝え、ぐっと拳を握る。
「そうか、それなら……」
佑が何か言いかけたが、香澄はハッと先日麻衣に言われた事を思いだす。
「あ、でも。『合コンでうまくいった人と連絡交換した』って言ってたな……」
「「え!?」」
双子が声を上げ、直後、プルプルと首を横に振る。
「そこはあいつに譲ってやってよ~」
「そうそう。合コンならその男にも別に出会いがあるだろーし。こっちは不幸具合、女に縁がない具合ならナンバーワンの男なんだから」
双子がそこまで言うのを聞き、香澄は不思議になる。
「マティアスさんってそんなに女性とご縁がなかったんですか? イケメンだし、背が高くて体も鍛えているし、強いんでしょう? エミリアさんの秘書をされていたから、ハイスペックな人だと思っていたんですが……」
正直な感想を口にしたが、双子は苦笑いする。
「こっちだと、外見的な魅力ってそんな意味ないかな。勿論、『目が綺麗』とか『イケメン』的な外見にキャーキャー言う女の子はいる。男もセクシーな女の子を見てグッとくる。けど、交際や結婚なら、もっと内面を見ると思う」
内面と言われても、特にマティアスに問題はないように感じる。
「とても親切で正直で、いい人だと思いますけど」
その言葉を聞き、アロイスは難しい顔をした。
「日本受けはいいのかもね。割とドイツの子は、グイグイリードしてくれるワイルドセクシーが好きだと思う。人に寄りけりだけど。顔が良くてガタイのいいサッカー選手とか、世界的に人気があるだろ? 見た目もあるけど、カリスマ性がある男はモテると思う。あいつの場合、顔が良くて性格が良くても、あまりに淡泊で『なんだこいつ』って思われかねない」
「なるほど……」
香澄は頷き、もし彼が麻衣とカップルになるなら……と想像してみる。
「愛情表現が控えめなら、シャイな日本人女性でも付き合いやすそうですね」
それを聞き、クラウスがニヤリと笑う。
「マイにすれば、僕たちみたいなのよりとっつきやすいかもね」
「あいつ、女の子と付き合った事はあっても、ブラック企業体質で、恋愛するどころじゃなかったんだよ。そこは俺たちも似てるけど」
アロイスの言葉に、クラウスがうんうんと頷く。
「そうそう。だから、僕たちはあいつの恋を応援したいんだよね。マジに応援したいから、でしゃばるのはやめようと思ってるけど」
「なるほど……」
(マティアスさんはとても素敵な人なのに、女性の影がないなと思っていたけど、思い返してみればエミリアさんがいた。彼女の影響でお二方は遊びまくっていたけど、マティアスさんは誰にも心を開かなかったんだろうな……)
そう思うと、納得できる。
「麻衣の好みって、優しい人だと思います。彼女がのびのび過ごせる環境を守ってくれる人っていうか。異性が絡むと萎縮しちゃうんですが、麻衣が素のままの自分でいられる人が現れたらいいなって、私はずっと思っていました」
「じゃああいつ、望みはあるかな?」
そう言って、クラウスが兄を見る。それに彼は頷いた。
「あいつ、先頭で引っ張っていくより、誰かのサポートをするのが得意なタイプだよ」
「じゃあ……可能性としてアリ、でしょうか?」
「どうかな~? 見守るしかないなー」
双子はニヤニヤしながらビールを呷り、香澄もワクワクしながらジュースを飲んだ。
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