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第十八部・麻衣と年越し 編
マティアスの呼び出し
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「香澄と麻衣さんは、せっかくだから景色を楽しめる側に座るといい」
彼に言われ、香澄たちは並んで座る。
「俺はここでいい」
マティアスは麻衣が座っている側の下座に座り、佑は「じゃあ俺はこっち」と香澄が座っている側の上座に座る。
双子たちは香澄と麻衣の向かいだ。
「すでにコースを予約してあるけど、麻衣さんはアレルギーとか苦手な食べ物はない? 香澄からは特にないと聞いたけど」
「ありません。何でも食べます」
きぱっと言い切った麻衣の返事を聞いて、佑はクシャッと笑うと、そのままクックック……と笑い崩れた。
双子も爆笑している。
「どうしたの? 佑さん」
香澄は彼らが麻衣をバカにしているなら、一言もの申すという表情で尋ねた。
「……いや、香澄の仲良しは香澄と同じ事を言うなって思って。健康的で宜しい」
「…………」
「…………」
だがそう言われ、香澄は親友と顔を見合わせて、じわ……と赤面する。
「だって……ねぇ?」
「ねぇ? 好き嫌いがないのは自慢だもんねぇ?」
ポソポソと言い合う姿がツボだったのか、佑たちはさらにクックック……と笑っていた。
その後、コース料理の準備をしてもらう事にし、飲み物をオーダーする。
「やっぱり本社に来たならビール飲まないとね! いやぁ、昼間っからビール最高!」
みんなで乾杯をしたあと、麻衣はくーっとビールを呷ってご機嫌に言う。
「マイっていけるクチなんだね? ドイツに来てビール飲み比べしてみない? 日本のビールとはまた違いがあって面白いよ」
クラウスに誘われ、麻衣は笑顔で頷く。
「ドイツってビールが有名ですよね。香澄に写真を送ってもらったんですけど、バカでかいジョッキやグラスがあって『飲んでみたいなー』って思いました」
興味を示したからか、アロイスが得意げに言う。
「日本やベルギーのビールも美味いけど、俺たちはやっぱり祖国のビールを推すね。地方性があって面白いよ。俺たちが住んでいるブルーメンブラットヴィルは南部なんだけど、南部はフルーティーなんだ。北部に行くとどんどん辛くなっていくよ」
地方性を教えられ、麻衣は興味津々だ。
「へぇ~! 面白い。いつか行ってみたいです。でもツアーなら、定番の観光スポット巡りになるから……。そういうのは二回目以降かな。どう思う? 香澄」
親友に意見を求められ、香澄も考える。
「確かにツアーだと見たい所が凝縮されてお得かも。その分、自由度は低いよね」
そう言った時、クラウスが二人に向かって両手を突きだした。
「ハイハイ、何言ってんの。僕らのジェットに乗せてひとっ飛びに決まってるじゃん。パスポートさえ持ってれば、ガイド不要、通訳不要であちこち連れてってあげるよ」
「あはは、ありがとうございます。魅力的ですね」
麻衣はまた、マティアスの時と同じ対応をする。
一般的に考えれば、ドイツ旅行を負担するなど高額すぎる。
初対面の人に言われても、普通ならリップサービスとしか思わないだろう。
(でもね……。この人たちが言う事って全部本気なんだよ……)
香澄は生ぬるい表情で、親友に心の中で語りかける。
――と、それまで黙っていたマティアスが口を開いた。
「マイ、ちょっといいか?」
彼は親指で個室の外を示し、「二人きりで話したい」と伝えている。
「はい? 構いませんが」
麻衣は立ち上がり、マティアスと一緒に個室から出ていった。
「あいつ結構、行動的だな?」
「だな。ちょっとビックリしてる」
双子がそう言い、香澄は「ん?」となる。
「横槍を入れずに、したいようにさせてやれよ」
佑も会話に加わり、昼ビールを楽しむ。
(え? この雰囲気って……もしかして……)
ピーン、ときた香澄は、出入り口のほうを気にしつつ、コソコソと三人に向かって尋ねた。
「もしかしてマティアスさんって、麻衣を……?」
「今頃気づいたの? カスミ」
「応援してやろーね」
「…………!」
瞬間、香澄の表情がパァッと明るくなり、直後、思い切りにやついた。
「んっふふふふふふ…………! ふー!」
「カスミ、怖い」
「あーあー。カスミのスイッチ入っちゃったよ」
双子が苦笑する中、佑がもっともな事を言ってくる。
彼に言われ、香澄たちは並んで座る。
「俺はここでいい」
マティアスは麻衣が座っている側の下座に座り、佑は「じゃあ俺はこっち」と香澄が座っている側の上座に座る。
双子たちは香澄と麻衣の向かいだ。
「すでにコースを予約してあるけど、麻衣さんはアレルギーとか苦手な食べ物はない? 香澄からは特にないと聞いたけど」
「ありません。何でも食べます」
きぱっと言い切った麻衣の返事を聞いて、佑はクシャッと笑うと、そのままクックック……と笑い崩れた。
双子も爆笑している。
「どうしたの? 佑さん」
香澄は彼らが麻衣をバカにしているなら、一言もの申すという表情で尋ねた。
「……いや、香澄の仲良しは香澄と同じ事を言うなって思って。健康的で宜しい」
「…………」
「…………」
だがそう言われ、香澄は親友と顔を見合わせて、じわ……と赤面する。
「だって……ねぇ?」
「ねぇ? 好き嫌いがないのは自慢だもんねぇ?」
ポソポソと言い合う姿がツボだったのか、佑たちはさらにクックック……と笑っていた。
その後、コース料理の準備をしてもらう事にし、飲み物をオーダーする。
「やっぱり本社に来たならビール飲まないとね! いやぁ、昼間っからビール最高!」
みんなで乾杯をしたあと、麻衣はくーっとビールを呷ってご機嫌に言う。
「マイっていけるクチなんだね? ドイツに来てビール飲み比べしてみない? 日本のビールとはまた違いがあって面白いよ」
クラウスに誘われ、麻衣は笑顔で頷く。
「ドイツってビールが有名ですよね。香澄に写真を送ってもらったんですけど、バカでかいジョッキやグラスがあって『飲んでみたいなー』って思いました」
興味を示したからか、アロイスが得意げに言う。
「日本やベルギーのビールも美味いけど、俺たちはやっぱり祖国のビールを推すね。地方性があって面白いよ。俺たちが住んでいるブルーメンブラットヴィルは南部なんだけど、南部はフルーティーなんだ。北部に行くとどんどん辛くなっていくよ」
地方性を教えられ、麻衣は興味津々だ。
「へぇ~! 面白い。いつか行ってみたいです。でもツアーなら、定番の観光スポット巡りになるから……。そういうのは二回目以降かな。どう思う? 香澄」
親友に意見を求められ、香澄も考える。
「確かにツアーだと見たい所が凝縮されてお得かも。その分、自由度は低いよね」
そう言った時、クラウスが二人に向かって両手を突きだした。
「ハイハイ、何言ってんの。僕らのジェットに乗せてひとっ飛びに決まってるじゃん。パスポートさえ持ってれば、ガイド不要、通訳不要であちこち連れてってあげるよ」
「あはは、ありがとうございます。魅力的ですね」
麻衣はまた、マティアスの時と同じ対応をする。
一般的に考えれば、ドイツ旅行を負担するなど高額すぎる。
初対面の人に言われても、普通ならリップサービスとしか思わないだろう。
(でもね……。この人たちが言う事って全部本気なんだよ……)
香澄は生ぬるい表情で、親友に心の中で語りかける。
――と、それまで黙っていたマティアスが口を開いた。
「マイ、ちょっといいか?」
彼は親指で個室の外を示し、「二人きりで話したい」と伝えている。
「はい? 構いませんが」
麻衣は立ち上がり、マティアスと一緒に個室から出ていった。
「あいつ結構、行動的だな?」
「だな。ちょっとビックリしてる」
双子がそう言い、香澄は「ん?」となる。
「横槍を入れずに、したいようにさせてやれよ」
佑も会話に加わり、昼ビールを楽しむ。
(え? この雰囲気って……もしかして……)
ピーン、ときた香澄は、出入り口のほうを気にしつつ、コソコソと三人に向かって尋ねた。
「もしかしてマティアスさんって、麻衣を……?」
「今頃気づいたの? カスミ」
「応援してやろーね」
「…………!」
瞬間、香澄の表情がパァッと明るくなり、直後、思い切りにやついた。
「んっふふふふふふ…………! ふー!」
「カスミ、怖い」
「あーあー。カスミのスイッチ入っちゃったよ」
双子が苦笑する中、佑がもっともな事を言ってくる。
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