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第十八部・麻衣と年越し 編
記念撮影
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(マティアスさん、『喜んで』って返事するの珍しいな。いつも『了解した』なのに)
香澄はぼんやりと思いつつ、予約時間まで麻衣と一緒にお土産を見る事にした。
時間になって入場すると、四基のエレベーターがある。
それぞれ中は、春夏秋冬の模様であしらわれているようだ。
香澄たちは〝夏〟のエレベーターに乗った。
動き出すとエレベーターの中が暗くなり、頭上にある空間に色とりどりの江戸切子が浮かび上がった。
「わぁ……!」
麻衣が歓声を上げ、スマホで動画を撮り始める。
この江戸切子は夏の花火を表しているようだ。
乗るエレベーターは選べず、四季のどれに乗れるかは運次第らしい。
チラッと関連サイトを見ると、春は桜で、秋は金ぴかの龍がいて、冬はシックな雰囲気だった。
どれに乗っても素敵だなと思っていたが、この夏はカラフルで目に楽しい。
表示されているエレベーターの速度や高さの数字がぐんぐん変化し、あっという間にフロア350に着いた。
「わぁ、耳がキーンってなる」
「私も」
二人で笑い合い、目の前に広がる展望デッキを見て「わああ……!」と歓声を上げた。
本来なら人の多い場所に付き合ってくれた佑を配慮すべきなのだが、残念な事に今の香澄は麻衣といる事でテンションがあがり、それどころではなくなっていた。
はしゃぎながらガラスに寄っていく二人を、佑は「楽しそうでなにより」という顔で見守っている。
「すごいねぇ……! んひひひひひひ……っ。あし、足が変になる。ふにゃって力抜けそう」
「あははははは! 出た! 香澄の限界になった時の変な笑い! あんた黙ってれば可愛いのに、高校の時の登山遠足でその笑いしながら登ってたから、一部の女子から認識誤られてるよ」
「えっ? 本当? やだな。そんな変な人じゃないんだけど」
「いや、『赤松さんって意外とユカイな人』って思われてるだけだから」
「ユカイな人~? えぇ~?」
ケラケラと笑っている香澄に、佑が声を掛けてきた。
「写真、撮ってあげようか?」
「いいの? ありがとう」
それから撮影タイムになり、周囲の人は〝世界の御劔〟に写真を撮られている姿を、羨ましそうな顔をしていた。
香澄のスマホで二枚撮り、麻衣のスマホでも二枚撮ってもらう。
それから五人でグルッと展望デッキを一周して、さらにエレべーターに乗って地上四百五十メートルの天望回廊に上った。
天望回廊はらせん状になっていて、ゆっくり景色を楽しみつつ最高到達点まで歩けるようになっている。
そこでまた麻衣と記念撮影をしていると、佑が少しいじけて申しでた。
「俺も香澄と写真を撮りたい」
「え?」
言われて、香澄はようやく佑を放ったらかしにしていたのに気付く。
それとは真逆に、麻衣がすぐ対応する。
「あ、私、写真撮りますよ」
「そうか? ありがとう」
麻衣に言われて、佑はパッと表情を輝かせる。
(そう言えば佑さんとは記念撮影ってあんまりしてなかったっけ。海外ではしてたけど……)
不意にそう思いだし、自分ばかりはしゃいでいたのを反省する。
「ごめんね」
小声で謝ると、佑は撮影用に微笑んだまま表情で、抱き寄せた肩をポンポンと叩いてくる。
それだけで「大丈夫だよ」と言っているのが分かり、安心してピースした。
帰りは床がガラスになっている場所をキャーキャー言いながら通り、お土産を買ってからスカイタワーを出た。
その頃には十二時半近くになっていて、ランチの予約は十三時なので丁度いい。
「お腹すいたね」
「うん。それにしても……」
車に乗り込むまで待っている間、麻衣がコソコソと囁いてくる。
「御劔さんに『何か食べたい物はある?』って聞かれて、『美味しければ何でも』って言っちゃったけど、御劔さんが選ぶお店って価格帯どれぐらい? 二千円以内とかだと助かるんだけど……」
麻衣が初期の自分と同じ考えを持っていると知り、香澄は「普通はこうなるよなぁ……」と生温かく笑う。
香澄はぼんやりと思いつつ、予約時間まで麻衣と一緒にお土産を見る事にした。
時間になって入場すると、四基のエレベーターがある。
それぞれ中は、春夏秋冬の模様であしらわれているようだ。
香澄たちは〝夏〟のエレベーターに乗った。
動き出すとエレベーターの中が暗くなり、頭上にある空間に色とりどりの江戸切子が浮かび上がった。
「わぁ……!」
麻衣が歓声を上げ、スマホで動画を撮り始める。
この江戸切子は夏の花火を表しているようだ。
乗るエレベーターは選べず、四季のどれに乗れるかは運次第らしい。
チラッと関連サイトを見ると、春は桜で、秋は金ぴかの龍がいて、冬はシックな雰囲気だった。
どれに乗っても素敵だなと思っていたが、この夏はカラフルで目に楽しい。
表示されているエレベーターの速度や高さの数字がぐんぐん変化し、あっという間にフロア350に着いた。
「わぁ、耳がキーンってなる」
「私も」
二人で笑い合い、目の前に広がる展望デッキを見て「わああ……!」と歓声を上げた。
本来なら人の多い場所に付き合ってくれた佑を配慮すべきなのだが、残念な事に今の香澄は麻衣といる事でテンションがあがり、それどころではなくなっていた。
はしゃぎながらガラスに寄っていく二人を、佑は「楽しそうでなにより」という顔で見守っている。
「すごいねぇ……! んひひひひひひ……っ。あし、足が変になる。ふにゃって力抜けそう」
「あははははは! 出た! 香澄の限界になった時の変な笑い! あんた黙ってれば可愛いのに、高校の時の登山遠足でその笑いしながら登ってたから、一部の女子から認識誤られてるよ」
「えっ? 本当? やだな。そんな変な人じゃないんだけど」
「いや、『赤松さんって意外とユカイな人』って思われてるだけだから」
「ユカイな人~? えぇ~?」
ケラケラと笑っている香澄に、佑が声を掛けてきた。
「写真、撮ってあげようか?」
「いいの? ありがとう」
それから撮影タイムになり、周囲の人は〝世界の御劔〟に写真を撮られている姿を、羨ましそうな顔をしていた。
香澄のスマホで二枚撮り、麻衣のスマホでも二枚撮ってもらう。
それから五人でグルッと展望デッキを一周して、さらにエレべーターに乗って地上四百五十メートルの天望回廊に上った。
天望回廊はらせん状になっていて、ゆっくり景色を楽しみつつ最高到達点まで歩けるようになっている。
そこでまた麻衣と記念撮影をしていると、佑が少しいじけて申しでた。
「俺も香澄と写真を撮りたい」
「え?」
言われて、香澄はようやく佑を放ったらかしにしていたのに気付く。
それとは真逆に、麻衣がすぐ対応する。
「あ、私、写真撮りますよ」
「そうか? ありがとう」
麻衣に言われて、佑はパッと表情を輝かせる。
(そう言えば佑さんとは記念撮影ってあんまりしてなかったっけ。海外ではしてたけど……)
不意にそう思いだし、自分ばかりはしゃいでいたのを反省する。
「ごめんね」
小声で謝ると、佑は撮影用に微笑んだまま表情で、抱き寄せた肩をポンポンと叩いてくる。
それだけで「大丈夫だよ」と言っているのが分かり、安心してピースした。
帰りは床がガラスになっている場所をキャーキャー言いながら通り、お土産を買ってからスカイタワーを出た。
その頃には十二時半近くになっていて、ランチの予約は十三時なので丁度いい。
「お腹すいたね」
「うん。それにしても……」
車に乗り込むまで待っている間、麻衣がコソコソと囁いてくる。
「御劔さんに『何か食べたい物はある?』って聞かれて、『美味しければ何でも』って言っちゃったけど、御劔さんが選ぶお店って価格帯どれぐらい? 二千円以内とかだと助かるんだけど……」
麻衣が初期の自分と同じ考えを持っていると知り、香澄は「普通はこうなるよなぁ……」と生温かく笑う。
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