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第十七部・クリスマスパーティー 編
いいと思った女性
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「お気に入りとかある?」
「うーん、ブースターって言う化粧水前の美容液、使うと浸透率が高くなるんだって。私はアンボワーズのをメインで使ってる」
香澄が愛用しているアンボワーズは、フランスの城の名前を由来とし、バラがロゴマークになっているブランドだ。
特徴的な黒いボトルは高級感があり、香澄は「良さそうだから何かいい効果があるはず」と信じて使っている。
「メインで使ってるポーイドラテは、匂いや刺激が少なくて好きかな」
「私も香澄が使ってるのを見て、売り場に突撃してみた。確かに匂いがないのは使いやすい」
「でしょでしょ。けどやっぱり、一番は肌に合うかどうかだと思う。匂いもそうだし、テクスチャーとか、自分に合う物を使うのがストレスがなくていいと思うよ」
「高けりゃいい訳じゃないんだ」
「うん。佑さんの親友に『美人堂』の社長さんがいるの。彼いわく、肌にストレスを与えない、合う物を使っていれば何でもいいんだって。ベーシックな成分はプチプラもデパコスもほぼ同じみたい。高い化粧品は高い原材料を使ってるけど、ほんのちょっぴりしか入っていないみたい。あとはデザイン料、テナント料、広告費、BAさんの人件費や研修費とかがプラスされて高いとか……」
「シビアだね」
麻衣のツッコミに、香澄は思わず笑う。
「んふふ、そう。だから、どこのを使ってもほぼ同じだと思う。要は自己満足。出雲さんも、『自分が化粧品に、何を求めているのかで決めたほうがいいと思う』って言ってた。私は匂いとか使用感で決めてるかな」
出雲に聞いた話も交えて言うと、麻衣はうんうんと頷いた。
「なんか一つ賢くなった感じ。今まで『高い化粧品のほうが効果があるのかな?』って思ってた。他のブランドだったら三万、四万とか手が出せないのもあるし。それに色々模索したくても、あの売り場で新規で行ってみるって勇気要るんだよね……。『ちょっと違った』っていう時に断りづらさがある。それに、皆美人でしょ……」
「分かる! BAさんって、みんな細くて美人で、気後れしちゃうよね」
「香澄だって細くて可愛いじゃん」
「心は道産子のじゃがいも魂なの!」
力んで言うと、麻衣が噴き出した。
「分かる! それ! SNSとかで大都会のキラキラした女子見てると、『自分ってイモっぽいな……』って思うの。なぜかイモ!」
二人でケラケラ笑ったあと、洗面所をあとにしてそろそろ寝る事にする。
「ねぇ、麻衣。一緒に寝てもいい? 邪魔?」
「えー? いいけど、御劔さんは?」
「いいの。麻衣がいる間は、麻衣が優先」
「もー……。ベッド大きいし、いいけどさ」
「やったぁ」
その会話を、佑が書斎でしょっぱい顔をして聞いていたのを、香澄は知らない。
**
リビングで、三人は〝麻衣の一発〟について感想を述べていた。
『久しぶりに〝痛い〟って思ったかも。スパーリングの時とは別の痛みがある』
『そんだけ真剣にカスミの事を思ってるんだろ。イイコだな、マイ』
『僕らにもそんな親友がいたらいいね』
双子はお互いのグラスにワインを注ぎ、クスクス笑う。
その向かいに座っていたマティアスが、人差し指を小さく挙げた。
『俺は友達じゃないか?』
『オイオイ、キモい事いうなよ。ヤローの友達はいらないよ』
呆れたようにクラウスが言い、『そうだ』とからかう表情になってマティウスを揶揄する。
『それはそうとお前、随分気の利く男になったな?』
『そうそう。スーツケース、俺が持ってあげようかなって思ったら、お前がサッと率先するんだもん』
『いいと思った女性には、いいところを見せたいだろ』
マティアスがサラッと言ったので、双子はいつものように話半分に『ふーん』と返事をする。
直後、同じタイミングでワインを噴き出した。
『マジ!? マ?』
『え? どっち? カスミ? もしかしてマイ?』
『マイだ』
双子はこの上もなくポカーンとし、目玉が零れ落ちそうなほど瞠目する。
そのあとお互いの顔を見て、またマティアスを見る。
『え? なんで?』
『ビンタされて目覚めた? お前Mだったの?』
『……え? だっていい女じゃないか?』
真顔で問い返され、双子はまたポカーンとした顔になる。
「うーん、ブースターって言う化粧水前の美容液、使うと浸透率が高くなるんだって。私はアンボワーズのをメインで使ってる」
香澄が愛用しているアンボワーズは、フランスの城の名前を由来とし、バラがロゴマークになっているブランドだ。
特徴的な黒いボトルは高級感があり、香澄は「良さそうだから何かいい効果があるはず」と信じて使っている。
「メインで使ってるポーイドラテは、匂いや刺激が少なくて好きかな」
「私も香澄が使ってるのを見て、売り場に突撃してみた。確かに匂いがないのは使いやすい」
「でしょでしょ。けどやっぱり、一番は肌に合うかどうかだと思う。匂いもそうだし、テクスチャーとか、自分に合う物を使うのがストレスがなくていいと思うよ」
「高けりゃいい訳じゃないんだ」
「うん。佑さんの親友に『美人堂』の社長さんがいるの。彼いわく、肌にストレスを与えない、合う物を使っていれば何でもいいんだって。ベーシックな成分はプチプラもデパコスもほぼ同じみたい。高い化粧品は高い原材料を使ってるけど、ほんのちょっぴりしか入っていないみたい。あとはデザイン料、テナント料、広告費、BAさんの人件費や研修費とかがプラスされて高いとか……」
「シビアだね」
麻衣のツッコミに、香澄は思わず笑う。
「んふふ、そう。だから、どこのを使ってもほぼ同じだと思う。要は自己満足。出雲さんも、『自分が化粧品に、何を求めているのかで決めたほうがいいと思う』って言ってた。私は匂いとか使用感で決めてるかな」
出雲に聞いた話も交えて言うと、麻衣はうんうんと頷いた。
「なんか一つ賢くなった感じ。今まで『高い化粧品のほうが効果があるのかな?』って思ってた。他のブランドだったら三万、四万とか手が出せないのもあるし。それに色々模索したくても、あの売り場で新規で行ってみるって勇気要るんだよね……。『ちょっと違った』っていう時に断りづらさがある。それに、皆美人でしょ……」
「分かる! BAさんって、みんな細くて美人で、気後れしちゃうよね」
「香澄だって細くて可愛いじゃん」
「心は道産子のじゃがいも魂なの!」
力んで言うと、麻衣が噴き出した。
「分かる! それ! SNSとかで大都会のキラキラした女子見てると、『自分ってイモっぽいな……』って思うの。なぜかイモ!」
二人でケラケラ笑ったあと、洗面所をあとにしてそろそろ寝る事にする。
「ねぇ、麻衣。一緒に寝てもいい? 邪魔?」
「えー? いいけど、御劔さんは?」
「いいの。麻衣がいる間は、麻衣が優先」
「もー……。ベッド大きいし、いいけどさ」
「やったぁ」
その会話を、佑が書斎でしょっぱい顔をして聞いていたのを、香澄は知らない。
**
リビングで、三人は〝麻衣の一発〟について感想を述べていた。
『久しぶりに〝痛い〟って思ったかも。スパーリングの時とは別の痛みがある』
『そんだけ真剣にカスミの事を思ってるんだろ。イイコだな、マイ』
『僕らにもそんな親友がいたらいいね』
双子はお互いのグラスにワインを注ぎ、クスクス笑う。
その向かいに座っていたマティアスが、人差し指を小さく挙げた。
『俺は友達じゃないか?』
『オイオイ、キモい事いうなよ。ヤローの友達はいらないよ』
呆れたようにクラウスが言い、『そうだ』とからかう表情になってマティウスを揶揄する。
『それはそうとお前、随分気の利く男になったな?』
『そうそう。スーツケース、俺が持ってあげようかなって思ったら、お前がサッと率先するんだもん』
『いいと思った女性には、いいところを見せたいだろ』
マティアスがサラッと言ったので、双子はいつものように話半分に『ふーん』と返事をする。
直後、同じタイミングでワインを噴き出した。
『マジ!? マ?』
『え? どっち? カスミ? もしかしてマイ?』
『マイだ』
双子はこの上もなくポカーンとし、目玉が零れ落ちそうなほど瞠目する。
そのあとお互いの顔を見て、またマティアスを見る。
『え? なんで?』
『ビンタされて目覚めた? お前Mだったの?』
『……え? だっていい女じゃないか?』
真顔で問い返され、双子はまたポカーンとした顔になる。
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