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第十七部・クリスマスパーティー 編
ようこそ! 御劔邸へ!
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「すっご……! これ、家? っていうか、屋敷……屋敷……」
麻衣は初めて御劔邸に来た香澄と同じように、屋敷の周りを囲む壁に驚いていた。
錬鉄の門が自動で開いて車が敷地内に入ると、彼女は広々とした中庭やプールを見てまた興奮する。
車から降りた彼女に、香澄は大まかな説明した。
「こっちの建物は離れで、常駐の警備員さんが住んでいるんだよ」
「すごぉ……」
麻衣がイルミネーションに照らされた御劔邸をぼんやり眺めている間、後続の車から双子とマティアスが降りてきた。
「麻衣さん、まず中に入ろうか。さっきも言ったけど、今日はもう休んだほうがいい。昼間は仕事納めとはいえ、働いてきたんだろう?」
「は、はい……」
「麻衣、ようこそ! 御劔邸へ!」
香澄は芝居がかった調子で言い、玄関のドアを開いた。
「はぁぁああぁああぁ…………」
麻衣は広々とした玄関ホールを見て、大きな溜め息をつく。
『おかえりなさい、タスクさん。カスミさん』
フェリシアが反応し、それを見て麻衣は感心したように頷く。
それから三階までぶち抜いてある天井を見上げ、玄関ホールにある絵画や美術品、いかにも高級そうな靴を履くための椅子などを見て、「すげぇ……」と呟いた。
「……玄関でこれなら、家の中や部屋を見る頃には、溜め息つきつぎて体中の酸素がなくなってるかも」
「生きて!」
香澄は思わず笑う。
そして麻衣のために用意しておいたスリッパを示し、「さ、ずずいと」と時代劇のように勧めた。
「お、お邪魔します……」
「どうぞ。ごゆっくり」
佑はコートを脱いでハンガーに掛け、玄関のクローゼットにしまっている。
「佑さん、麻衣に飲み物をお願いしていい? 私、部屋に案内するから」
「分かった」
「い! いえ! もう夜遅いですし、お構いなく! 御劔さんに飲み物を用意させるなんてそんな!」
恐縮しきった声を出す麻衣に、香澄は笑う。
「佑さん、普通にご飯も作れる人だから、飲み物ぐらい朝飯前だから大丈夫」
「そういう問題じゃなくて……」
そこに双子が割り込んできた。
「タスク、どうせならシャンパン一本開けない? 皆で一本なら問題ないだろ?」
「そうそう。マイには一杯引っかけさせて寝かせてさ。残ったら僕たちが飲むから」
早くも麻衣の扱いが雑になってきた双子を見て、香澄は笑った。
「とりあえず、コートも脱がないとだし、行こっか」
トントンと麻衣の背中を叩いてスーツケースを持とうとすると、またマティアスがヒョイッと麻衣の荷物を持ち上げた。
「部屋まで運ぶ。運んだらすぐ去るから、いいか?」
「ありがとうございます」
香澄は周囲の男性に助けてもらう事に、段々慣れてきていた。
だが麻衣は自分の荷物を持ってくれる男性――しかもイケメンに慣れておらず、「すみません」とペコペコ頭を下げていた。
「こっちはジムになってるの」
階段に向かう途中、リビングとは反対側を指しながら香澄が案内し、先に階段を上がる。
幅が広くて上りやすい階段は壁にニッチ――壁面の一部をへこませたスペースがあり、洋書や外国語の辞典がある。
「本当にすごいね……。迷わないの?」
「来た当初は迷ったなぁ。でも比較的シンプルだからすぐ慣れると思うよ」
階段を上がり、香澄は二階の奥に進む。
「二階は私と佑さんの部屋があって、主にここで大体の用事が済んじゃう。三階はお客様が来た用。二階にも三階にもリビングがあって、小さいキッチンもあるの」
「すごぉ……」
「ここが私の部屋。いつでも来てね」
香澄は自分の部屋の前で立ち止まり、麻衣に少し中を覗かせる。
「あー、何か配色が香澄の部屋って感じするわ」
「でしょ。で、麻衣の部屋はこっち」
二階の奥にある使っていない客間を案内すると、麻衣が口を開いて室内を見回す。
「……ホテル?」
「いやいや、御劔ハウス」
客間と言っても十畳はあり、ベッドの他に小さなテーブルを挟んだソファセットがある。
備え付けのクローゼットや、奥にあるドアの向こうには洗面所と手洗い、バスもある。
麻衣は初めて御劔邸に来た香澄と同じように、屋敷の周りを囲む壁に驚いていた。
錬鉄の門が自動で開いて車が敷地内に入ると、彼女は広々とした中庭やプールを見てまた興奮する。
車から降りた彼女に、香澄は大まかな説明した。
「こっちの建物は離れで、常駐の警備員さんが住んでいるんだよ」
「すごぉ……」
麻衣がイルミネーションに照らされた御劔邸をぼんやり眺めている間、後続の車から双子とマティアスが降りてきた。
「麻衣さん、まず中に入ろうか。さっきも言ったけど、今日はもう休んだほうがいい。昼間は仕事納めとはいえ、働いてきたんだろう?」
「は、はい……」
「麻衣、ようこそ! 御劔邸へ!」
香澄は芝居がかった調子で言い、玄関のドアを開いた。
「はぁぁああぁああぁ…………」
麻衣は広々とした玄関ホールを見て、大きな溜め息をつく。
『おかえりなさい、タスクさん。カスミさん』
フェリシアが反応し、それを見て麻衣は感心したように頷く。
それから三階までぶち抜いてある天井を見上げ、玄関ホールにある絵画や美術品、いかにも高級そうな靴を履くための椅子などを見て、「すげぇ……」と呟いた。
「……玄関でこれなら、家の中や部屋を見る頃には、溜め息つきつぎて体中の酸素がなくなってるかも」
「生きて!」
香澄は思わず笑う。
そして麻衣のために用意しておいたスリッパを示し、「さ、ずずいと」と時代劇のように勧めた。
「お、お邪魔します……」
「どうぞ。ごゆっくり」
佑はコートを脱いでハンガーに掛け、玄関のクローゼットにしまっている。
「佑さん、麻衣に飲み物をお願いしていい? 私、部屋に案内するから」
「分かった」
「い! いえ! もう夜遅いですし、お構いなく! 御劔さんに飲み物を用意させるなんてそんな!」
恐縮しきった声を出す麻衣に、香澄は笑う。
「佑さん、普通にご飯も作れる人だから、飲み物ぐらい朝飯前だから大丈夫」
「そういう問題じゃなくて……」
そこに双子が割り込んできた。
「タスク、どうせならシャンパン一本開けない? 皆で一本なら問題ないだろ?」
「そうそう。マイには一杯引っかけさせて寝かせてさ。残ったら僕たちが飲むから」
早くも麻衣の扱いが雑になってきた双子を見て、香澄は笑った。
「とりあえず、コートも脱がないとだし、行こっか」
トントンと麻衣の背中を叩いてスーツケースを持とうとすると、またマティアスがヒョイッと麻衣の荷物を持ち上げた。
「部屋まで運ぶ。運んだらすぐ去るから、いいか?」
「ありがとうございます」
香澄は周囲の男性に助けてもらう事に、段々慣れてきていた。
だが麻衣は自分の荷物を持ってくれる男性――しかもイケメンに慣れておらず、「すみません」とペコペコ頭を下げていた。
「こっちはジムになってるの」
階段に向かう途中、リビングとは反対側を指しながら香澄が案内し、先に階段を上がる。
幅が広くて上りやすい階段は壁にニッチ――壁面の一部をへこませたスペースがあり、洋書や外国語の辞典がある。
「本当にすごいね……。迷わないの?」
「来た当初は迷ったなぁ。でも比較的シンプルだからすぐ慣れると思うよ」
階段を上がり、香澄は二階の奥に進む。
「二階は私と佑さんの部屋があって、主にここで大体の用事が済んじゃう。三階はお客様が来た用。二階にも三階にもリビングがあって、小さいキッチンもあるの」
「すごぉ……」
「ここが私の部屋。いつでも来てね」
香澄は自分の部屋の前で立ち止まり、麻衣に少し中を覗かせる。
「あー、何か配色が香澄の部屋って感じするわ」
「でしょ。で、麻衣の部屋はこっち」
二階の奥にある使っていない客間を案内すると、麻衣が口を開いて室内を見回す。
「……ホテル?」
「いやいや、御劔ハウス」
客間と言っても十畳はあり、ベッドの他に小さなテーブルを挟んだソファセットがある。
備え付けのクローゼットや、奥にあるドアの向こうには洗面所と手洗い、バスもある。
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