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第十七部・クリスマスパーティー 編
麻衣と双子とマティアスの邂逅
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「僕はクラウス、宜しくね!」
そう言ってクラウスもハグとビズをし、「ヘイ」とマティアスにバトンタッチする。
だがマティアスは勢いに乗る前に、顔を真っ赤にさせて硬直している麻衣に、改めて尋ねた。
「挨拶をしても大丈夫だろうか?」
「は……はい……」
呆然としたまま頷いた麻衣は、もはやこの集団に逆らう気力もないのだろう。
意思確認をしたあと、マティアスも彼女をぎゅっと抱き、両頬に軽く唇をつけた。
「じゃあ、そろそろ家に向かおうか。麻衣さんは疲れているだろうし、家で落ち着いてもらって、明日積もる話をしよう」
「そうだね」
佑の提案に香澄は頷き、麻衣が引っ張ってきた赤いスーツケースと土産物らしい紙袋を持つ。
「俺が持つ」
だがそれをマティアスがスイッと受け取ってくれたので、「さすがレディファーストだな」と思い「ありがとうございます」と礼を言った。
空港の駐車場はあるにはあるのだが、予約をする上に別途千円かかるそうだ。
佑が千円をケチる訳がないのだが、麻衣を迎えてすぐ戻るので、車を車寄せに置いたままにしてある。
ちなみに空港の車寄せは、ドライバーが運転席に座ったまま〝停車〟しているのならOKらしい。
エンジンを切ってドライバーが車を離れ〝駐車〟になると、法律違反になり警察に取り締まられてしまうのだとか。
なので三台の車にはそれぞれ運転手を乗せたまま、待機してもらっている。
「香澄、凄い人たちと一緒にいるんだね」
麻衣はスーツケースを引っ張るマティアスを気にしつつ、コソコソと耳打ちしてくる。
「……だよね。改めて思うと本当にそう思うよ。顔面偏差値が高すぎて、毎日ドキドキしてる。でも中身は気さくに話せる人たちだよ?」
香澄は麻衣と手を繋ぎ、やはりコソコソと返事をする。
「同じ顔の物凄い美形が目の前にいると、破壊力が凄いね」
「でしょー。あのお二人、スキンシップが激しいから心臓もたないよ」
「すっっごい……いい匂いした」
「だよねぇ。最近のお二人のお気に入りは、ジョン・アルクールのヴェルヴェットローズ&ウードみたいだよ?」
「……本当に躊躇いなく、ハグっていうか、してくるんだね? 私みたいなの、抱きつくの嫌なんじゃないかって、一瞬自虐しちゃった」
麻衣は自分の体型を気にしてか、少し暗い声で言う。
「そういう事、考えちゃ駄目。っていうか、ドイツだと本当はあそこまでブチュッってビズしないんだって。あそこまでするのはイタリアとかフランスとからしいけど」
「ビズ? ほっぺのキスの事? 海外って皆するんじゃないの?」
「そうそう。……んー、私も最初同じ事を考えてた。でもお国柄があって、ドイツの人は控えめみたい。でも親しい人にはするらしいから、麻衣はそこをクリアしたんじゃないかな? ビズをする国でも、見知らぬ人にいきなりやると『何だコイツ』ってなると思うし」
「なるほど。でも心臓に悪かった……。イケメンって生きる殺人兵器だな」
少し疲れたような麻衣の感想にクスクス笑った頃、一行は車止めについた。
「ありがとうございます。えぇと……」
そう言えばマティアスの名前を知らなかった麻衣が固まっていると、彼がまっすぐ彼女を見つめて再び握手を求める。
「マティアス・シュナイダー」
「岩本麻衣です。日本語上手ですね。あと、スーツケースありがとうございました」
「問題ない」
佑と香澄、麻衣が乗る車のトランクに、マティアスがスーツケースと紙袋を載せる。
それから各々車に乗り込み、白金台の家に向かう事になった。
「飛行機は揺れませんでしたか?」
助手席に乗った佑が、麻衣に話し掛ける。
「あ、はい。エアポケット? ちょっとヒヤッとした所はありましたが、大丈夫でした」
麻衣はまだ佑に緊張しているようで、香澄はそんな親友の姿を見てニヤニヤしている。
「あ、あの。御劔社長。図々しいお願いがあるんですが……」
「何ですか? 因みに、もっと砕けた呼び方で構いませんよ」
「へっ? じゃ、じゃあ……御劔、……さん……?」
二人のやり取りを聞いている香澄は、甘酸っぱい少女漫画の始まりを見ているようで、おかしくて堪らない。
「あー、もう。二人とも、〝佑さん〟呼びでいいし、敬語っていうか、そういうのナシでいこうよ」
「いや、香澄。それはおかしいでしょ。香澄が名前で呼ぶのは婚約者の特権だけど、私まで同じ呼び方したら絶対変!」
「俺はなんでもいいよ、麻衣さん。親しくするのが嫌でなかったら、これから一週間一緒に過ごすから、仲良くやっていこう」
佑もクスクス笑い、先ほどより堅苦しさのなくなった口調で言う。
そう言ってクラウスもハグとビズをし、「ヘイ」とマティアスにバトンタッチする。
だがマティアスは勢いに乗る前に、顔を真っ赤にさせて硬直している麻衣に、改めて尋ねた。
「挨拶をしても大丈夫だろうか?」
「は……はい……」
呆然としたまま頷いた麻衣は、もはやこの集団に逆らう気力もないのだろう。
意思確認をしたあと、マティアスも彼女をぎゅっと抱き、両頬に軽く唇をつけた。
「じゃあ、そろそろ家に向かおうか。麻衣さんは疲れているだろうし、家で落ち着いてもらって、明日積もる話をしよう」
「そうだね」
佑の提案に香澄は頷き、麻衣が引っ張ってきた赤いスーツケースと土産物らしい紙袋を持つ。
「俺が持つ」
だがそれをマティアスがスイッと受け取ってくれたので、「さすがレディファーストだな」と思い「ありがとうございます」と礼を言った。
空港の駐車場はあるにはあるのだが、予約をする上に別途千円かかるそうだ。
佑が千円をケチる訳がないのだが、麻衣を迎えてすぐ戻るので、車を車寄せに置いたままにしてある。
ちなみに空港の車寄せは、ドライバーが運転席に座ったまま〝停車〟しているのならOKらしい。
エンジンを切ってドライバーが車を離れ〝駐車〟になると、法律違反になり警察に取り締まられてしまうのだとか。
なので三台の車にはそれぞれ運転手を乗せたまま、待機してもらっている。
「香澄、凄い人たちと一緒にいるんだね」
麻衣はスーツケースを引っ張るマティアスを気にしつつ、コソコソと耳打ちしてくる。
「……だよね。改めて思うと本当にそう思うよ。顔面偏差値が高すぎて、毎日ドキドキしてる。でも中身は気さくに話せる人たちだよ?」
香澄は麻衣と手を繋ぎ、やはりコソコソと返事をする。
「同じ顔の物凄い美形が目の前にいると、破壊力が凄いね」
「でしょー。あのお二人、スキンシップが激しいから心臓もたないよ」
「すっっごい……いい匂いした」
「だよねぇ。最近のお二人のお気に入りは、ジョン・アルクールのヴェルヴェットローズ&ウードみたいだよ?」
「……本当に躊躇いなく、ハグっていうか、してくるんだね? 私みたいなの、抱きつくの嫌なんじゃないかって、一瞬自虐しちゃった」
麻衣は自分の体型を気にしてか、少し暗い声で言う。
「そういう事、考えちゃ駄目。っていうか、ドイツだと本当はあそこまでブチュッってビズしないんだって。あそこまでするのはイタリアとかフランスとからしいけど」
「ビズ? ほっぺのキスの事? 海外って皆するんじゃないの?」
「そうそう。……んー、私も最初同じ事を考えてた。でもお国柄があって、ドイツの人は控えめみたい。でも親しい人にはするらしいから、麻衣はそこをクリアしたんじゃないかな? ビズをする国でも、見知らぬ人にいきなりやると『何だコイツ』ってなると思うし」
「なるほど。でも心臓に悪かった……。イケメンって生きる殺人兵器だな」
少し疲れたような麻衣の感想にクスクス笑った頃、一行は車止めについた。
「ありがとうございます。えぇと……」
そう言えばマティアスの名前を知らなかった麻衣が固まっていると、彼がまっすぐ彼女を見つめて再び握手を求める。
「マティアス・シュナイダー」
「岩本麻衣です。日本語上手ですね。あと、スーツケースありがとうございました」
「問題ない」
佑と香澄、麻衣が乗る車のトランクに、マティアスがスーツケースと紙袋を載せる。
それから各々車に乗り込み、白金台の家に向かう事になった。
「飛行機は揺れませんでしたか?」
助手席に乗った佑が、麻衣に話し掛ける。
「あ、はい。エアポケット? ちょっとヒヤッとした所はありましたが、大丈夫でした」
麻衣はまだ佑に緊張しているようで、香澄はそんな親友の姿を見てニヤニヤしている。
「あ、あの。御劔社長。図々しいお願いがあるんですが……」
「何ですか? 因みに、もっと砕けた呼び方で構いませんよ」
「へっ? じゃ、じゃあ……御劔、……さん……?」
二人のやり取りを聞いている香澄は、甘酸っぱい少女漫画の始まりを見ているようで、おかしくて堪らない。
「あー、もう。二人とも、〝佑さん〟呼びでいいし、敬語っていうか、そういうのナシでいこうよ」
「いや、香澄。それはおかしいでしょ。香澄が名前で呼ぶのは婚約者の特権だけど、私まで同じ呼び方したら絶対変!」
「俺はなんでもいいよ、麻衣さん。親しくするのが嫌でなかったら、これから一週間一緒に過ごすから、仲良くやっていこう」
佑もクスクス笑い、先ほどより堅苦しさのなくなった口調で言う。
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