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第十七部・クリスマスパーティー 編
空港にて親友を待つ
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「じゃあ、そろそろ行こうか、赤松さん」
全員がぼちぼち帰り支度をしている中、佑がコートを着て香澄を呼ぶ。
「はい。ご馳走様でした、社長」
これから一緒に帰宅するのに、そのやりとりが白々しくて気恥ずかしい。
コートを着る手元――指輪を見られているのは、気のせいではないだろう。
(我慢、我慢……と)
周りに「良いお年を」と挨拶をして外に出ると、駅まで歩いて車に乗り込んだ。
「酔ってないか? 大丈夫?」
「はい。お酒は一杯でやめておいたので」
「もう仕事納めしたんだから、〝秘書〟はいいよ」
「……う、うん……」
スマホを確認すると麻衣から連絡が入っていた。
『いま新千歳ついたよ。年末に東京行くってちょっとアガる!』
メッセージと一緒にコーヒーと、彼女の手によるピースサインが写った写真があった。
「もう少しでフライトなのかな」
香澄は『おきをつけて!』というスタンプをポンと送っておいた。
双子からは『マイちゃん迎えるの楽しみ!』とメッセージがあり、生暖かい気持ちになる。
スマホをしまって息をつくと、シートの上に置いた手に、佑が手を重ねてきた。
佑は手は繋ぐがそれ以外は何もせず、我慢してくれる。
(ありがとう)
心の中で礼を言い、香澄は麻衣への思いを募らせた。
**
一度家に帰ってカジュアルな服に着替えてから、香澄は歯磨きをして口臭ケアのサプリを飲む。
一杯でやめておいたとは言え、麻衣に抱きついた時に「焼き肉食べた? お酒?」と言われるのは嫌だ。
念入りに歯磨きをしている香澄を見て、佑が「まるで彼氏に会う前みたいだな……」と言っていたのは聞かなかった事にした。
双子たちも一緒に空港に行きたがったので、車を三台出動させて羽田空港に向かった。
麻衣は二十二時過ぎに羽田に着くらしい。
第二ターミナルの到着ロビーまで行くと、空いているベンチで待つ事にした。
「僕ら、ちょっとお菓子見てくるね」
甘い物が好きらしい双子たちが、土産物屋に興味を示してブラブラと歩いていく。
「マティアスさんも気になる所があれば、見に行っても大丈夫ですよ」
「いや、問題ない。人間観察をしているのも楽しい」
佑が雇った護衛の他、双子たちのボディガードも来ている。
空港でブラックスーツにコートだと目立ってしまうので、護衛たちも私服を着ていた。
ベンチに座っておしゃべりしていたが、目の前を心許ない表情をした金髪の子供がキョロキョロしながら歩いているのに気づいた。
香澄は「あれ?」と思い、すぐ立ち上がる。
だがその前にマティアスが立ち、子供に話し掛けた。
「迷子らしいから、インフォメーションに連れて行く。カスミの友達が来たらいけないから、二人はそこにいてくれ」
マティアスはそう言って、子供を肩車して歩いていった。
「マティアスさんって面倒見がいいよね」
「そうだな。口数は多くないが、根は優しいと思う」
「根は」と言ってしまうのは、まだ心の底で彼に引っかかりがあるからだろう。
「背が高くて体つきもガッシリしてるし、あまり表情が変わらないからパッと見怖いって思っちゃう。でも話すとすぐにお人柄が分かるよ」
「そうだな……」
佑は香澄の手を握ってくる。
目の前では休みを利用して旅行に向かう人々が歩いている。
「来年の年越しは旅行に行こうか。冬だし、暖かい所がいいかな」
ポツリと佑が呟き、香澄は「え?」と笑う。
「まだ一年も先だよ? 旅行は嬉しいけど」
「楽しみは計画しておきたいじゃないか。普段、忙殺と言っていいほど働いているからこそ、休みの時は頭をからっぽにしたい」
「そう……だね」
佑を見ていれば暇でないのは分かる。
仕事で忙しい上、海外に赴いては上流階級の人々と会い、仕事半分、プライベート半分で話す。
半分は遊んでいるようなものと思われるかもしれないが、付きまとう責任や、動く金の大きさを考えると、感じるストレスは半端なものではないだろう。
全員がぼちぼち帰り支度をしている中、佑がコートを着て香澄を呼ぶ。
「はい。ご馳走様でした、社長」
これから一緒に帰宅するのに、そのやりとりが白々しくて気恥ずかしい。
コートを着る手元――指輪を見られているのは、気のせいではないだろう。
(我慢、我慢……と)
周りに「良いお年を」と挨拶をして外に出ると、駅まで歩いて車に乗り込んだ。
「酔ってないか? 大丈夫?」
「はい。お酒は一杯でやめておいたので」
「もう仕事納めしたんだから、〝秘書〟はいいよ」
「……う、うん……」
スマホを確認すると麻衣から連絡が入っていた。
『いま新千歳ついたよ。年末に東京行くってちょっとアガる!』
メッセージと一緒にコーヒーと、彼女の手によるピースサインが写った写真があった。
「もう少しでフライトなのかな」
香澄は『おきをつけて!』というスタンプをポンと送っておいた。
双子からは『マイちゃん迎えるの楽しみ!』とメッセージがあり、生暖かい気持ちになる。
スマホをしまって息をつくと、シートの上に置いた手に、佑が手を重ねてきた。
佑は手は繋ぐがそれ以外は何もせず、我慢してくれる。
(ありがとう)
心の中で礼を言い、香澄は麻衣への思いを募らせた。
**
一度家に帰ってカジュアルな服に着替えてから、香澄は歯磨きをして口臭ケアのサプリを飲む。
一杯でやめておいたとは言え、麻衣に抱きついた時に「焼き肉食べた? お酒?」と言われるのは嫌だ。
念入りに歯磨きをしている香澄を見て、佑が「まるで彼氏に会う前みたいだな……」と言っていたのは聞かなかった事にした。
双子たちも一緒に空港に行きたがったので、車を三台出動させて羽田空港に向かった。
麻衣は二十二時過ぎに羽田に着くらしい。
第二ターミナルの到着ロビーまで行くと、空いているベンチで待つ事にした。
「僕ら、ちょっとお菓子見てくるね」
甘い物が好きらしい双子たちが、土産物屋に興味を示してブラブラと歩いていく。
「マティアスさんも気になる所があれば、見に行っても大丈夫ですよ」
「いや、問題ない。人間観察をしているのも楽しい」
佑が雇った護衛の他、双子たちのボディガードも来ている。
空港でブラックスーツにコートだと目立ってしまうので、護衛たちも私服を着ていた。
ベンチに座っておしゃべりしていたが、目の前を心許ない表情をした金髪の子供がキョロキョロしながら歩いているのに気づいた。
香澄は「あれ?」と思い、すぐ立ち上がる。
だがその前にマティアスが立ち、子供に話し掛けた。
「迷子らしいから、インフォメーションに連れて行く。カスミの友達が来たらいけないから、二人はそこにいてくれ」
マティアスはそう言って、子供を肩車して歩いていった。
「マティアスさんって面倒見がいいよね」
「そうだな。口数は多くないが、根は優しいと思う」
「根は」と言ってしまうのは、まだ心の底で彼に引っかかりがあるからだろう。
「背が高くて体つきもガッシリしてるし、あまり表情が変わらないからパッと見怖いって思っちゃう。でも話すとすぐにお人柄が分かるよ」
「そうだな……」
佑は香澄の手を握ってくる。
目の前では休みを利用して旅行に向かう人々が歩いている。
「来年の年越しは旅行に行こうか。冬だし、暖かい所がいいかな」
ポツリと佑が呟き、香澄は「え?」と笑う。
「まだ一年も先だよ? 旅行は嬉しいけど」
「楽しみは計画しておきたいじゃないか。普段、忙殺と言っていいほど働いているからこそ、休みの時は頭をからっぽにしたい」
「そう……だね」
佑を見ていれば暇でないのは分かる。
仕事で忙しい上、海外に赴いては上流階級の人々と会い、仕事半分、プライベート半分で話す。
半分は遊んでいるようなものと思われるかもしれないが、付きまとう責任や、動く金の大きさを考えると、感じるストレスは半端なものではないだろう。
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