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第十七部・クリスマスパーティー 編
焼き肉
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(麻衣のための部屋、二階に用意できて良かった。……一緒に寝てもいいって言ってくれるかな。遅くまでおしゃべりしてたい)
香澄はチョレギサラダをつつきつつ、顔のにやつきを止められずにいる。
「赤松さん、もうニヤついてるの? 酔うの早くない?」
話しかけてきたのは、目の前に座っている生島だ。
生島は佑ともよく話すため、先手必勝と言わんばかりに佑の近くの席をもぎとったらしい。そこは流石、営業のエースだ。
生島の周りにいるメンツも、彼が普段絡んでいる営業のやり手たちで、いわゆる〝クラスの目立つ系〟のオーラを漂わせている。
「え、いえ。仕事納めが嬉しいなーって」
「あ、なーる。俺も明日から彼女と旅行だから、気持ち分かりますよ」
「旅行なんですね。どこに行くんです?」
「んー、九州です。博多でうまいもん食べたり、温泉入ったり」
「素敵です。楽しんできてください」
ニコニコして言うと、生島が少し顔を寄せて囁いてきた。
「怪我は大丈夫ですか?」
言われてからクリスマスイベントでの事を思い出し、そう言えば……となる。
確かにあの時とても怖かったが、佑とホテルでイチャイチャし、たっぷり甘えた今は大分落ち着いた。
「はい、大丈夫です」
「……ならいいんですけど。気を付けてくださいよ? 赤松さんに何かあったら、冗談じゃなくこの会社、終わる気がしますから」
「そ、そんな事ありませんよ。社長は責任感のある立派な方ですし」
「セレブみたいな格好した赤松さんが、外国人の男をはべらせて高級レストランに入ったって話を聞いたんです。何をしても勝手ですが、頼みますよ?」
(う……!)
言われたのはきっと、双子たちが来日した時、一緒にレストランに行った時の事だろう。
(だ、誰かに見られてたんだ……)
「ち、違うんです! あれは……!」
そのとき佑が席に戻ってきて、「ん?」とわざとらしく香澄の隣に座ってくる。
河野は香澄の隣でゴッゴッと喉を鳴らして、ビールのジョッキを傾けていた。
ちなみに松井は少し離れたテーブルで、自分と年の近い管理職と話をしている。
「あ、社長。お疲れ様です」
生島が乾杯を求め、佑は「はい、お疲れ様」とジョッキを合わせた。
テーブルには肉を焼く網があり、生島はもうシャツを腕まくりしている。
やがて目の前にタン塩と塩ハラミの盛り合わせが運ばれてきた。
「わぁ、タン塩だ!」
焼き肉の中でも特に牛タンが好きな香澄が声を上げ、佑にクスクス笑われる。
そこで生島が尋ねてきた。
そこで生島が尋ねてきた。
「あー、ホルモンとかハツとか、そういうのはちょっと馴染みがないかもです。カルビとか普通のお肉なら大丈夫なんですが、うちの母が内臓系を好まなくて、それで私もあまり食べ慣れていない感じですね」
「そういう親の味覚からの影響、ありますよね。あとは地域の馴染みもありますよね。俺の彼女が釧路出身なんですけど、実家に遊びに行った時、生のホッケを調理しててビックリしました。こっちでは生のホッケって馴染みがないんで」
「へぇ~! 私、札幌にいた時、生のホッケをフライにしたり煮付けにしてました」
「ホッケって言ったら、干物しかイメージがないですね。あと、北海道は回転寿司が美味いですねぇ」
「でしょう! 密かな自慢なんです」
「あと北海道って〝くき〟? ニシンの。あれ、見てみたいなーって何となく思ってます」
「渋いところきますね。ニシンの群来は今年の春も小樽沿岸にきたみたいですよ」
地元ネタが続き、香澄はノリノリで話している。
いっぽう佑は、二人の会話を聞きつつ香澄のためにタン塩を焼いていた。
「ニシンもあまり馴染みがなくて。にしん蕎麦しかイメージがありませんね」
「にしん蕎麦、京都のイメージが強いですけど、北海道でも郷土料理なんですよ。あと、私は生のニシンを手に入れたら三枚におろして、揚げて南蛮漬けにします」
「へぇ~。赤松さんって結構料理できる感じなんですね?」
「そんな事ないですよ。写真映えするようなのは全然できません」
そこまで会話が進んだ時、佑が「はい、赤松さん。牛タン」と取り皿に焼けた牛タンを載せてきた。
「あ、ありがとうございます。社長」
「生島も、はい。河野も」
「すみません、ありがとうございます。社長」
生島は自分が焼くつもり満々でいたのに、話に夢中になって佑にやらせてしまい、ばつの悪い顔をしている。
「……社長は〝やく〟のがうまいですよね」
河野がボソッと茶々を入れる。
「誰がうまい事を言えと」
佑は苦笑いをし、塩ハラミを焼き始める。
生島は白米と一緒にタン塩をパクパクッと食べ、「社長、俺が焼き(育て)ます」と言ってトングを受け取った。
会話を弾ませていると、とろ肉が出て、絶妙な脂身の入り具合に頬が落ちそうになる。
香澄はチョレギサラダをつつきつつ、顔のにやつきを止められずにいる。
「赤松さん、もうニヤついてるの? 酔うの早くない?」
話しかけてきたのは、目の前に座っている生島だ。
生島は佑ともよく話すため、先手必勝と言わんばかりに佑の近くの席をもぎとったらしい。そこは流石、営業のエースだ。
生島の周りにいるメンツも、彼が普段絡んでいる営業のやり手たちで、いわゆる〝クラスの目立つ系〟のオーラを漂わせている。
「え、いえ。仕事納めが嬉しいなーって」
「あ、なーる。俺も明日から彼女と旅行だから、気持ち分かりますよ」
「旅行なんですね。どこに行くんです?」
「んー、九州です。博多でうまいもん食べたり、温泉入ったり」
「素敵です。楽しんできてください」
ニコニコして言うと、生島が少し顔を寄せて囁いてきた。
「怪我は大丈夫ですか?」
言われてからクリスマスイベントでの事を思い出し、そう言えば……となる。
確かにあの時とても怖かったが、佑とホテルでイチャイチャし、たっぷり甘えた今は大分落ち着いた。
「はい、大丈夫です」
「……ならいいんですけど。気を付けてくださいよ? 赤松さんに何かあったら、冗談じゃなくこの会社、終わる気がしますから」
「そ、そんな事ありませんよ。社長は責任感のある立派な方ですし」
「セレブみたいな格好した赤松さんが、外国人の男をはべらせて高級レストランに入ったって話を聞いたんです。何をしても勝手ですが、頼みますよ?」
(う……!)
言われたのはきっと、双子たちが来日した時、一緒にレストランに行った時の事だろう。
(だ、誰かに見られてたんだ……)
「ち、違うんです! あれは……!」
そのとき佑が席に戻ってきて、「ん?」とわざとらしく香澄の隣に座ってくる。
河野は香澄の隣でゴッゴッと喉を鳴らして、ビールのジョッキを傾けていた。
ちなみに松井は少し離れたテーブルで、自分と年の近い管理職と話をしている。
「あ、社長。お疲れ様です」
生島が乾杯を求め、佑は「はい、お疲れ様」とジョッキを合わせた。
テーブルには肉を焼く網があり、生島はもうシャツを腕まくりしている。
やがて目の前にタン塩と塩ハラミの盛り合わせが運ばれてきた。
「わぁ、タン塩だ!」
焼き肉の中でも特に牛タンが好きな香澄が声を上げ、佑にクスクス笑われる。
そこで生島が尋ねてきた。
そこで生島が尋ねてきた。
「あー、ホルモンとかハツとか、そういうのはちょっと馴染みがないかもです。カルビとか普通のお肉なら大丈夫なんですが、うちの母が内臓系を好まなくて、それで私もあまり食べ慣れていない感じですね」
「そういう親の味覚からの影響、ありますよね。あとは地域の馴染みもありますよね。俺の彼女が釧路出身なんですけど、実家に遊びに行った時、生のホッケを調理しててビックリしました。こっちでは生のホッケって馴染みがないんで」
「へぇ~! 私、札幌にいた時、生のホッケをフライにしたり煮付けにしてました」
「ホッケって言ったら、干物しかイメージがないですね。あと、北海道は回転寿司が美味いですねぇ」
「でしょう! 密かな自慢なんです」
「あと北海道って〝くき〟? ニシンの。あれ、見てみたいなーって何となく思ってます」
「渋いところきますね。ニシンの群来は今年の春も小樽沿岸にきたみたいですよ」
地元ネタが続き、香澄はノリノリで話している。
いっぽう佑は、二人の会話を聞きつつ香澄のためにタン塩を焼いていた。
「ニシンもあまり馴染みがなくて。にしん蕎麦しかイメージがありませんね」
「にしん蕎麦、京都のイメージが強いですけど、北海道でも郷土料理なんですよ。あと、私は生のニシンを手に入れたら三枚におろして、揚げて南蛮漬けにします」
「へぇ~。赤松さんって結構料理できる感じなんですね?」
「そんな事ないですよ。写真映えするようなのは全然できません」
そこまで会話が進んだ時、佑が「はい、赤松さん。牛タン」と取り皿に焼けた牛タンを載せてきた。
「あ、ありがとうございます。社長」
「生島も、はい。河野も」
「すみません、ありがとうございます。社長」
生島は自分が焼くつもり満々でいたのに、話に夢中になって佑にやらせてしまい、ばつの悪い顔をしている。
「……社長は〝やく〟のがうまいですよね」
河野がボソッと茶々を入れる。
「誰がうまい事を言えと」
佑は苦笑いをし、塩ハラミを焼き始める。
生島は白米と一緒にタン塩をパクパクッと食べ、「社長、俺が焼き(育て)ます」と言ってトングを受け取った。
会話を弾ませていると、とろ肉が出て、絶妙な脂身の入り具合に頬が落ちそうになる。
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