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第十七部・クリスマスパーティー 編
いい物長く
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「舌に合った瞬間を見てしまった。嬉しいな」
この上なく嬉しそうに笑うものだから、香澄も思わず微笑んでしまう。
「美味しいよ。もしかして毎回、違うの頼んでは私の反応を見てた?」
「……まぁ、……そう、ではあるかな。香澄が飲むならドゥミ・セックかドゥー辺りだという見当はつけていたけど」
「どぅー?」
「甘さの度合い。一番辛いのはブリュット・ナチュール。その次はエクストラ・ブリュット。その次がブリュット。エクストラ・ドライとセックは、中辛ぐらい。あとは今言った、甘口のドゥミ・セックと超甘口のドゥー」
「友達の結婚式で乾杯したシャンパン、ちょっと辛かったな。いつだったか、『ドンペル飲んじゃった』って言ってた子もいたな」
シャンパンと言えば、なドン・ペルグランの名前を出すと、佑が頷く。
「ネームバリューで言えば一番だろうな。あと、昔は甘口が流行っていたけど、今は辛口が世界的に主流となってるのもあるかな」
「高級バッグのヴィドンヌとかと同じような物かな?」
「まぁ、そうだな。人によって価値観は異なるよ。アイコン的な知名度を取るか、自分の味の好みで探すか、通が好むものを追求するとか。食事でもファッションでも、何にでも通じると思う。自己肯定感を上げる物か、自分の好みにこだわったものか、実用的か、目的はみんな違うと思う」
「ふぅん……。佑さんは?」
シャンパンをちびちび飲んでいると、アルコール度数が高いので、すぐに体がフワッと熱くなってくる。
「その時によりかな? 仕事の契約で広告として使っている物もあるし、プライベートなら使いやすくて長持ちする物を求める。食なら新しいレストランを新規開拓しつつ、馴染みの店を楽しみながら、ベースは斎藤さんの安定した料理かな」
「ふぅん……。何か、意外。変な意味じゃないけど、『長持ちする物』を求めてるって、ちょっと……うん、意外だった」
甘さが残る唇をペロリと舐めた香澄に、佑は微笑みかける。
「オーパとオーマがすべての根源かな。ドイツ人って、とても〝勿体ない〟精神の強い人たちなんだ。どれだけボロボロになっても、直せるうちは直して使う。オーパはそういう気質で、オーマは竹本の令嬢であっても、散財するタイプではない。オーマの代の日本人って、質のいい物を代々受け継いでいくじゃないか」
「うちにお祖母ちゃんの嫁入り道具の、桐の箪笥があるなぁ。お母さんが譲り受けたんだって」
香澄は実家の家具を思いだした。
「母の価値観もあまり変わらない。だから俺もそんな感じ。子供の頃から少しいい物をもらっていたけど、万年筆とかは今でも使い続けているよ」
「素敵だね」
そういえば佑が愛用している万年筆があったと思いだし、頷く。
「ファッション業界も過渡期にあるな。化学繊維はプラスチックが入っているから、海を汚染すると厳しく言われている。商売を展開しながら今後どうしていくか、慎重に考えなければいけない」
佑が珍しく感傷的な事を言うので、香澄は少し大きな声で励ます。
「大丈夫! 顧客の事を考えて価格を抑えようとすると、どうしても安価な素材になりがちだけど、その分Chief Everyの研究所で独自の生地を開発しているでしょう? 商売を大きく展開していると色々言われるけど、サイトの分かりやすい図で説明してるのも、見る人は見てちゃんと評価してくれてるじゃない」
企業ページは見やすくする事を心がけていて、その中に『当社の製品について』という項目がある。
そこでは独自に開発している、比較的安価に提供でき、それでいてエコにもきちんと配慮している素材などをCGや動画で説明していた。
きちんとサイトに目を通す顧客からは、評価され、ネットなどでも褒めてもらえている。
いつになく強い口調で言った香澄を、佑は愛しげに見つめてから抱き締めてきた。
「わっ……」
力強い腕に囲われた中で、香澄が持っていたフルートグラスは谷間に埋まる。
「そう言ってくれる香澄が好きだよ。俺がどうなっても、香澄だけは俺の味方でいてくれると信じてる。……自惚れじゃなければいいけど」
「自惚れじゃないよ。私はいつでも佑さんの味方。心の中で、チアガールの格好していつでも応援してるから」
「それはぜひリアルでやってもらいたいな」
「んふふ、駄目。佑さん、すぐおじさんみたいな反応するんだから」
彼の反応に、香澄はクスクス笑う。
「コスプレが好きっていうのは、おじさんなのかな……」
たまに香澄との年齢差を気にする佑が、がっくりと項垂れてぼやく。
「佑さん、コスプレ好きなの? そもそもバニーガール好き?」
「……いや、そうじゃないけど。最初のアレはギャップだって言っただろ。コスプレは香澄がしてくれるなら、何でも美味しく頂きますよ、っていう話だ」
「ふぅん……」
話題がコスプレになり、香澄は自分が持ってきた荷物を思い出してにんまりと笑う。
この上なく嬉しそうに笑うものだから、香澄も思わず微笑んでしまう。
「美味しいよ。もしかして毎回、違うの頼んでは私の反応を見てた?」
「……まぁ、……そう、ではあるかな。香澄が飲むならドゥミ・セックかドゥー辺りだという見当はつけていたけど」
「どぅー?」
「甘さの度合い。一番辛いのはブリュット・ナチュール。その次はエクストラ・ブリュット。その次がブリュット。エクストラ・ドライとセックは、中辛ぐらい。あとは今言った、甘口のドゥミ・セックと超甘口のドゥー」
「友達の結婚式で乾杯したシャンパン、ちょっと辛かったな。いつだったか、『ドンペル飲んじゃった』って言ってた子もいたな」
シャンパンと言えば、なドン・ペルグランの名前を出すと、佑が頷く。
「ネームバリューで言えば一番だろうな。あと、昔は甘口が流行っていたけど、今は辛口が世界的に主流となってるのもあるかな」
「高級バッグのヴィドンヌとかと同じような物かな?」
「まぁ、そうだな。人によって価値観は異なるよ。アイコン的な知名度を取るか、自分の味の好みで探すか、通が好むものを追求するとか。食事でもファッションでも、何にでも通じると思う。自己肯定感を上げる物か、自分の好みにこだわったものか、実用的か、目的はみんな違うと思う」
「ふぅん……。佑さんは?」
シャンパンをちびちび飲んでいると、アルコール度数が高いので、すぐに体がフワッと熱くなってくる。
「その時によりかな? 仕事の契約で広告として使っている物もあるし、プライベートなら使いやすくて長持ちする物を求める。食なら新しいレストランを新規開拓しつつ、馴染みの店を楽しみながら、ベースは斎藤さんの安定した料理かな」
「ふぅん……。何か、意外。変な意味じゃないけど、『長持ちする物』を求めてるって、ちょっと……うん、意外だった」
甘さが残る唇をペロリと舐めた香澄に、佑は微笑みかける。
「オーパとオーマがすべての根源かな。ドイツ人って、とても〝勿体ない〟精神の強い人たちなんだ。どれだけボロボロになっても、直せるうちは直して使う。オーパはそういう気質で、オーマは竹本の令嬢であっても、散財するタイプではない。オーマの代の日本人って、質のいい物を代々受け継いでいくじゃないか」
「うちにお祖母ちゃんの嫁入り道具の、桐の箪笥があるなぁ。お母さんが譲り受けたんだって」
香澄は実家の家具を思いだした。
「母の価値観もあまり変わらない。だから俺もそんな感じ。子供の頃から少しいい物をもらっていたけど、万年筆とかは今でも使い続けているよ」
「素敵だね」
そういえば佑が愛用している万年筆があったと思いだし、頷く。
「ファッション業界も過渡期にあるな。化学繊維はプラスチックが入っているから、海を汚染すると厳しく言われている。商売を展開しながら今後どうしていくか、慎重に考えなければいけない」
佑が珍しく感傷的な事を言うので、香澄は少し大きな声で励ます。
「大丈夫! 顧客の事を考えて価格を抑えようとすると、どうしても安価な素材になりがちだけど、その分Chief Everyの研究所で独自の生地を開発しているでしょう? 商売を大きく展開していると色々言われるけど、サイトの分かりやすい図で説明してるのも、見る人は見てちゃんと評価してくれてるじゃない」
企業ページは見やすくする事を心がけていて、その中に『当社の製品について』という項目がある。
そこでは独自に開発している、比較的安価に提供でき、それでいてエコにもきちんと配慮している素材などをCGや動画で説明していた。
きちんとサイトに目を通す顧客からは、評価され、ネットなどでも褒めてもらえている。
いつになく強い口調で言った香澄を、佑は愛しげに見つめてから抱き締めてきた。
「わっ……」
力強い腕に囲われた中で、香澄が持っていたフルートグラスは谷間に埋まる。
「そう言ってくれる香澄が好きだよ。俺がどうなっても、香澄だけは俺の味方でいてくれると信じてる。……自惚れじゃなければいいけど」
「自惚れじゃないよ。私はいつでも佑さんの味方。心の中で、チアガールの格好していつでも応援してるから」
「それはぜひリアルでやってもらいたいな」
「んふふ、駄目。佑さん、すぐおじさんみたいな反応するんだから」
彼の反応に、香澄はクスクス笑う。
「コスプレが好きっていうのは、おじさんなのかな……」
たまに香澄との年齢差を気にする佑が、がっくりと項垂れてぼやく。
「佑さん、コスプレ好きなの? そもそもバニーガール好き?」
「……いや、そうじゃないけど。最初のアレはギャップだって言っただろ。コスプレは香澄がしてくれるなら、何でも美味しく頂きますよ、っていう話だ」
「ふぅん……」
話題がコスプレになり、香澄は自分が持ってきた荷物を思い出してにんまりと笑う。
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