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第十七部・クリスマスパーティー 編
プレゼント交換の終わり
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「ま、でもここは日本だから気にしなくていいよ。カスミがドイツに来た時も、うちの一族は日本人の習慣をオーマに学んでるから、特に気にしなくていい」
「そうそう。オーマはドイツにいようが自分の子供や孫の誕生日には、必ずプレゼントをくれる人なんだ。『これは日本式のお祝いよ』って言われてたし、僕らもちゃんと理解してる」
「そうなんですね。良かった」
ホッと胸を撫で下ろし、香澄は微笑む。
アンネの誕生日は夏で、ドイツで事故に遭って帰国したあと、こっそり彼女に誕生日プレゼントを渡した。
その時に特に変な顔はされなかったので、アンネも日本式の誕生日には慣れていたのだろうか。
偶然か香澄の気持ちを察してか、佑が口を開く。
「うちはずっと日本式だったな。母からはドイツのやり方も教わっていたが、父が『誕生日なのにプレゼントがないのは可哀想だし、ここは日本だから』と言ってくれていた」
「そうなんだね。お義父さんらしい」
衛は一見アンネの尻に敷かれているイメージがあるが、自分の意志をしっかり持っている人だと聞いている。
その面は、佑にも受け継がれている気がした。
「御劔さん」
その時、キッチンの片付けを終えた斎藤が現れ、ペコリとお辞儀をする。
「私はそろそろお暇しますね。明日また、いつもの時間に出勤します」
「ご苦労様です」
「貴恵さん、ご馳走様でした」
「キエ! ありがとう!」
「また明日ね!」
「美味かった」
全員挨拶に斎藤は頭を下げ、帰り支度をすると「それでは」と出ていった。
「そろそろいい時間だな。プレゼント交換も終わったし、自由時間にしよう」
「んー。それはいーんだけどさ。二十七日になったらマイちゃんと一緒に構ってよね」
「はい。忙しくしていてすみません」
「二十七日は忘年会もあるから、帰りは少し遅くなる。麻衣さんを迎えたあとに帰るから、それまで大人しくしていてくれ」
「分かってるけどさー。早くねー」
「はいはい」
全員でクリスマスプレゼントの後片付けをすると、香澄は佑と一緒に二階に上がった。
「さっき怒ってたの、なんだったの?」
二階の廊下でそれぞれの部屋に入ろうとした時、香澄は気になっていた事を尋ねる。
「ん、んー……。向こうの大人のオモチャ」
気まずそうに言われ、香澄は苦笑いをする。
確かに双子ならやりかねない。
「意外とふざけないな」と思っていたが、佑にはしっかりふざけていた。
「香澄には使わないから安心して」
佑が溜め息混じりに言い、香澄はちょっと彼の揚げ足を取ってみる。
「んー? じゃあ他の誰に使うんですか? 社長」
つん、と顎を上げて生意気そうに言った香澄を見て、佑は一瞬ポカンとしたあと破顔した。
「この。言うようになったな」
手に持っていたプレゼントを床に置き、佑は香澄をギュウギュウと抱き締めてくる。
「んふふふふ……っ」
緩くヘッドロックをされた香澄は、クスクスと笑う。
その上、荷物で手が塞がっているのをいい事に、チュッチュッとキスをされた。
「さて、明日も仕事があるから風呂に入っておいで」
「うん」
「……と、明日なんだけど」
自分の部屋に行こうとした香澄を、佑は肩に置いた手に力を入れて引き留める。
「ん?」
振り向くと、彼はどこかソワソワした様子であさっての方を見てから、香澄を見た。
「明日、ランチ会食あるだろ」
「はい」
仕事の話が絡み、香澄は自然と敬語になる。
「……そのあと、休みを取るつもりだから、香澄もそのつもりでいてくれたら」
「どうしてです?」
きょと、と目を瞬かせた香澄を見て、佑は何かを押し殺した表情で低く呟く。
「……たった数日だけど、やっぱり我慢できない。年内の仕事はもうほぼないし、明日は社内でも掃除や整頓で終わる」
「……はぁ……」
いまだ佑の言いたい事が分からず、香澄は曖昧な返事をする。
「そうそう。オーマはドイツにいようが自分の子供や孫の誕生日には、必ずプレゼントをくれる人なんだ。『これは日本式のお祝いよ』って言われてたし、僕らもちゃんと理解してる」
「そうなんですね。良かった」
ホッと胸を撫で下ろし、香澄は微笑む。
アンネの誕生日は夏で、ドイツで事故に遭って帰国したあと、こっそり彼女に誕生日プレゼントを渡した。
その時に特に変な顔はされなかったので、アンネも日本式の誕生日には慣れていたのだろうか。
偶然か香澄の気持ちを察してか、佑が口を開く。
「うちはずっと日本式だったな。母からはドイツのやり方も教わっていたが、父が『誕生日なのにプレゼントがないのは可哀想だし、ここは日本だから』と言ってくれていた」
「そうなんだね。お義父さんらしい」
衛は一見アンネの尻に敷かれているイメージがあるが、自分の意志をしっかり持っている人だと聞いている。
その面は、佑にも受け継がれている気がした。
「御劔さん」
その時、キッチンの片付けを終えた斎藤が現れ、ペコリとお辞儀をする。
「私はそろそろお暇しますね。明日また、いつもの時間に出勤します」
「ご苦労様です」
「貴恵さん、ご馳走様でした」
「キエ! ありがとう!」
「また明日ね!」
「美味かった」
全員挨拶に斎藤は頭を下げ、帰り支度をすると「それでは」と出ていった。
「そろそろいい時間だな。プレゼント交換も終わったし、自由時間にしよう」
「んー。それはいーんだけどさ。二十七日になったらマイちゃんと一緒に構ってよね」
「はい。忙しくしていてすみません」
「二十七日は忘年会もあるから、帰りは少し遅くなる。麻衣さんを迎えたあとに帰るから、それまで大人しくしていてくれ」
「分かってるけどさー。早くねー」
「はいはい」
全員でクリスマスプレゼントの後片付けをすると、香澄は佑と一緒に二階に上がった。
「さっき怒ってたの、なんだったの?」
二階の廊下でそれぞれの部屋に入ろうとした時、香澄は気になっていた事を尋ねる。
「ん、んー……。向こうの大人のオモチャ」
気まずそうに言われ、香澄は苦笑いをする。
確かに双子ならやりかねない。
「意外とふざけないな」と思っていたが、佑にはしっかりふざけていた。
「香澄には使わないから安心して」
佑が溜め息混じりに言い、香澄はちょっと彼の揚げ足を取ってみる。
「んー? じゃあ他の誰に使うんですか? 社長」
つん、と顎を上げて生意気そうに言った香澄を見て、佑は一瞬ポカンとしたあと破顔した。
「この。言うようになったな」
手に持っていたプレゼントを床に置き、佑は香澄をギュウギュウと抱き締めてくる。
「んふふふふ……っ」
緩くヘッドロックをされた香澄は、クスクスと笑う。
その上、荷物で手が塞がっているのをいい事に、チュッチュッとキスをされた。
「さて、明日も仕事があるから風呂に入っておいで」
「うん」
「……と、明日なんだけど」
自分の部屋に行こうとした香澄を、佑は肩に置いた手に力を入れて引き留める。
「ん?」
振り向くと、彼はどこかソワソワした様子であさっての方を見てから、香澄を見た。
「明日、ランチ会食あるだろ」
「はい」
仕事の話が絡み、香澄は自然と敬語になる。
「……そのあと、休みを取るつもりだから、香澄もそのつもりでいてくれたら」
「どうしてです?」
きょと、と目を瞬かせた香澄を見て、佑は何かを押し殺した表情で低く呟く。
「……たった数日だけど、やっぱり我慢できない。年内の仕事はもうほぼないし、明日は社内でも掃除や整頓で終わる」
「……はぁ……」
いまだ佑の言いたい事が分からず、香澄は曖昧な返事をする。
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