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第十七部・クリスマスパーティー 編
クリスマスの違い
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「なんだよマティアスやらしーな。お前、男が女に口紅贈る意味、分かってんのか?」
「…………。……え? ……使ってください、じゃないのか?」
そういう事に関してはまったく疎いマティアスの答えに、双子はつまらなさそうに舌打ちする。
いっぽう佑は裏があった訳ではないと知り、苦笑いしながら教えてやった。
「男から女性に口紅を贈る場合、『あなたにキスをしたい』という解釈をされる場合もあるから、今度からは気を付けたほうがいいかもな」
マティアスはしばし固まっていたが、眉を顰め低くうなる。
「難しいな。似合うと思った物もプレゼントできないのか」
「あっ、あの! 私は気にしてませんから、本当にありがたく使わせて頂きます! リップって、日常的に使いますし。リップクリームやハンドクリームも凄く使います」
「それなら良かった」
マティアスは小さく微笑む。
「タスクってカスミにあげるプレゼント、一つなの?」
アロイスが尋ね、香澄は誤解がないように先に口を挟む。
「佑さんは誕生日に沢山プレゼントをくれたので、クリスマスは一つだけにしてって、私からお願いしたんです」
「へーぇ、そうなんだー。僕だったらそう言われていても、用意しちゃうけどね」
「香澄に気を遣わせるのは本意じゃない。遠慮してほしいと言われたら、そうするさ」
クラウスの煽りに、佑は涼しい顔で応える。
(誕生日にあれだけのプレゼント爆撃をしたのに……)
香澄は生ぬるく笑う。
「なんか、私ばっかり高価な物をもらってすみません。私のプレゼント、大した事なくて……」
四人からの豪華な品々を思うと、シュンとしてしまう。
「ほんとーに気にしないで? 俺らがカスミにたかると思う?」
「そうそう。僕たち、その気になったら世界中にある物のほとんどを自分で買えちゃう。カスミが選んでくれて、メッセージカードをつけてくれたのが何より嬉しいの。そこ、大事」
「ホント俺たちには気を遣わなくていいからね? なんなら、手料理とかでも嬉しいし、足りないって思うなら一晩添い寝」
「アロ」
佑が低く名前を呼び、アロイスは目を天井に向けて下唇を出す。
その後、男性同士のクリスマスプレゼント交換も開催された。
佑から双子には日本製の高級腕時計を色違いで贈り、マティアスには江戸切子の徳利と銚子セット、ペアタンブラーを贈った。
双子から佑には、佑がドイツで好んで飲んでいるらしいドイツワイン、ビール、コーヒーなどが贈られる。
(意外と普通にプレゼントするんだな。もっとふざけるかと思った)
……と思っていたら、紙袋に入っていた何かを佑が覗き込み、香澄の分からない言葉で怒っていたので、何かしらの悪戯はされたようだ。
マティアスから佑には、微妙な顔のマスコットがついた栓抜きと、ワインオープナーが贈られた。
一通り終わってから、マティアスが息をつく。
「……これが日本式のクリスマスなんだな。郷に入っては郷に従えと言うが、やはり変な気分だ」
「あれ? ドイツって違いましたっけ?」
この一年、彼らと付き合いが増えたと言っても、一緒にクリスマスを過ごした事はない。
香澄が質問をすると、双子が教えてくれる。
「ドイツ……っていうか欧米って、基本的にプレゼントって渡さないからね」
「あ……! そう言えば以前に少し聞いたような」
「誕生日だと、誕生日の奴が周りに色々振る舞うんだ。逆にホイホイプレゼント渡してると、『生活に困ってると思われた』って解釈されて嫌がられるかも。基本的に自立心が強いからね」
「そ。会社で働いてるって言っても、終身雇用で『雇ってほしい』とか思わないし、ボスにヘコヘコしない。金銭的な問題で買えない物があっても、それを代わりにプレゼントするとかは、相手を侮辱した事に繋がる。その人が『買わない』って判断を尊重しなかった……ってね」
「はぁ……。今度から気を付けます」
今さらながら文化の違いを教えられ、香澄は日本式のクリスマスをして良かったのか戸惑う。
それを察したのか、双子はニコッと微笑んだ。
「…………。……え? ……使ってください、じゃないのか?」
そういう事に関してはまったく疎いマティアスの答えに、双子はつまらなさそうに舌打ちする。
いっぽう佑は裏があった訳ではないと知り、苦笑いしながら教えてやった。
「男から女性に口紅を贈る場合、『あなたにキスをしたい』という解釈をされる場合もあるから、今度からは気を付けたほうがいいかもな」
マティアスはしばし固まっていたが、眉を顰め低くうなる。
「難しいな。似合うと思った物もプレゼントできないのか」
「あっ、あの! 私は気にしてませんから、本当にありがたく使わせて頂きます! リップって、日常的に使いますし。リップクリームやハンドクリームも凄く使います」
「それなら良かった」
マティアスは小さく微笑む。
「タスクってカスミにあげるプレゼント、一つなの?」
アロイスが尋ね、香澄は誤解がないように先に口を挟む。
「佑さんは誕生日に沢山プレゼントをくれたので、クリスマスは一つだけにしてって、私からお願いしたんです」
「へーぇ、そうなんだー。僕だったらそう言われていても、用意しちゃうけどね」
「香澄に気を遣わせるのは本意じゃない。遠慮してほしいと言われたら、そうするさ」
クラウスの煽りに、佑は涼しい顔で応える。
(誕生日にあれだけのプレゼント爆撃をしたのに……)
香澄は生ぬるく笑う。
「なんか、私ばっかり高価な物をもらってすみません。私のプレゼント、大した事なくて……」
四人からの豪華な品々を思うと、シュンとしてしまう。
「ほんとーに気にしないで? 俺らがカスミにたかると思う?」
「そうそう。僕たち、その気になったら世界中にある物のほとんどを自分で買えちゃう。カスミが選んでくれて、メッセージカードをつけてくれたのが何より嬉しいの。そこ、大事」
「ホント俺たちには気を遣わなくていいからね? なんなら、手料理とかでも嬉しいし、足りないって思うなら一晩添い寝」
「アロ」
佑が低く名前を呼び、アロイスは目を天井に向けて下唇を出す。
その後、男性同士のクリスマスプレゼント交換も開催された。
佑から双子には日本製の高級腕時計を色違いで贈り、マティアスには江戸切子の徳利と銚子セット、ペアタンブラーを贈った。
双子から佑には、佑がドイツで好んで飲んでいるらしいドイツワイン、ビール、コーヒーなどが贈られる。
(意外と普通にプレゼントするんだな。もっとふざけるかと思った)
……と思っていたら、紙袋に入っていた何かを佑が覗き込み、香澄の分からない言葉で怒っていたので、何かしらの悪戯はされたようだ。
マティアスから佑には、微妙な顔のマスコットがついた栓抜きと、ワインオープナーが贈られた。
一通り終わってから、マティアスが息をつく。
「……これが日本式のクリスマスなんだな。郷に入っては郷に従えと言うが、やはり変な気分だ」
「あれ? ドイツって違いましたっけ?」
この一年、彼らと付き合いが増えたと言っても、一緒にクリスマスを過ごした事はない。
香澄が質問をすると、双子が教えてくれる。
「ドイツ……っていうか欧米って、基本的にプレゼントって渡さないからね」
「あ……! そう言えば以前に少し聞いたような」
「誕生日だと、誕生日の奴が周りに色々振る舞うんだ。逆にホイホイプレゼント渡してると、『生活に困ってると思われた』って解釈されて嫌がられるかも。基本的に自立心が強いからね」
「そ。会社で働いてるって言っても、終身雇用で『雇ってほしい』とか思わないし、ボスにヘコヘコしない。金銭的な問題で買えない物があっても、それを代わりにプレゼントするとかは、相手を侮辱した事に繋がる。その人が『買わない』って判断を尊重しなかった……ってね」
「はぁ……。今度から気を付けます」
今さらながら文化の違いを教えられ、香澄は日本式のクリスマスをして良かったのか戸惑う。
それを察したのか、双子はニコッと微笑んだ。
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