1,078 / 1,559
第十七部・クリスマスパーティー 編
プレゼント交換
しおりを挟む
中から出て来たのは和紙の箱で、その中から掌サイズのタヌキの置物がでてきた。
もちろん、マティアスにも手書きメッセージのカードがある。
「おお……!」
彼はキラキラとした目でタヌキの置物を見ている。
「それ、ちゃんと信楽焼きなんです。お好きかと思って」
「ちゃんと金玉がついてるな。小さいのにでかい」
マティアスが変な所にこだわり、香澄は思わず声もなく笑い崩れて横を向く。
双子もゲラゲラ笑い、佑も体を震わせている。
「もー……。マティアスさんって大概ヘンですよね?」
「香澄? 俺には?」
耳元で佑の声がし、香澄はビクッと肩をすくめる。
「え、えっと……佑さんには」
そう言って香澄は、えんじ色の包装紙に金色のリボンが掛かった小箱を渡す。
「どうぞ。あ、あの……お三方には悪いのですが、その……佑さんは婚約者で特別なので、プレゼントの中身もちょっと特別と言いますか……」
中身に差がある事を伝えると、双子があっけらかんとして答える。
「あ、それは気にしなくていいよ。俺たちはカスミからのプレゼントを値段で判断してないし」
「そうそう。カスミが僕らにプレゼントを贈るのに、考えてくれた時間やこの! カスミ直筆のメッセージカード! が、いいの」
クラウスはクリスマス柄のメッセージカードを佑の目の前に掲げ、決して中身は見せず表紙を指でトントントントンと叩いてみせる。
佑は香澄から直筆メッセージを受け取っていないため、それを悔しそうに見ていた。
「お前、心の狭い男だからカスミが僕らになんてメッセージくれたのか、すっげぇ気になってるんだろ」
クラウスが意地の悪い顔をし、佑はさらに悔しそうにする。
「気になるよ。悪いか?」
素直な返事を聞いて、双子は胸の前で手を打ち鳴らしてキャッキャと喜ぶ。
「ぜってー見せてやんねー」
「一生気にしたまんまでいるといいよ!」
「もー、お二人とも……。佑さん、開けてみて?」
香澄は双子に向かって「まぁまぁ」と手を向けていなしたあと、佑にプレゼントを示す。
佑は「ん、んンっ」と咳払いをし、中から出てきた小箱を開ける。
小箱の中には、小粒の宝石が輝くネクタイピンがあった。
「六月の誕生石がついたネクタイピンにしたの。六月ってパールとムーンストーンも誕生石なんだけど、石言葉を調べてアレキサンドライトは『高貴、情熱』っていう意味があるから、それがいいなって思って」
普段、佑が贈ってくれる高級な宝石と比べると安物かもしれないが、香澄からすれば奮発した金額だ。
実はこれを買うに当たって美鈴に相談し、信頼できる宝石屋を紹介してもらった。
佑はクリスマスカードを見て、「あとで一人で読もう」と呟いてシャツの胸ポケットにしまう。そしてとろけるような微笑みを浮かべた。
「ありがとう。毎日つけるよ」
佑は香澄の手を握り、手の甲にチュッと口づける。
「そ、そんっ……あ、ありがとう……」
佑に色々されるのは慣れていい頃合いなのだが、こうしてお姫様のように手の甲にキスされると、ドキッとしてしまう。
「じゃあ、香澄へのプレゼントの一番乗りは俺だな」
佑はそう言って香澄の手に、ポンと赤い包装紙に金色のリボンが巻かれた箱を置く。
「じゃ、じゃあ。開けさせて頂きます」
この一年、佑にはプレゼント攻撃――もとい爆撃を受けていたが、それでもプレゼントをもらうとなると嬉しい。
「ん……?」
出てきたのは、アクセサリーの入ったビロードの箱だ。
「んっ?」
もう一度声が漏れたのは、リングケースの台座に指輪が二つ嵌まっていたからだ。
(ペアリング? まさかマリッジリングじゃないと思うけど……)
「え……と」
指輪はプラチナで、中央に大きめの石、その左右二つずつ、合計五つの石が嵌まっている。
指輪の片方は濃いピンクの石で統一され、もう片方はオレンジとも朱色ともつかない色で統一されている。
もちろん、マティアスにも手書きメッセージのカードがある。
「おお……!」
彼はキラキラとした目でタヌキの置物を見ている。
「それ、ちゃんと信楽焼きなんです。お好きかと思って」
「ちゃんと金玉がついてるな。小さいのにでかい」
マティアスが変な所にこだわり、香澄は思わず声もなく笑い崩れて横を向く。
双子もゲラゲラ笑い、佑も体を震わせている。
「もー……。マティアスさんって大概ヘンですよね?」
「香澄? 俺には?」
耳元で佑の声がし、香澄はビクッと肩をすくめる。
「え、えっと……佑さんには」
そう言って香澄は、えんじ色の包装紙に金色のリボンが掛かった小箱を渡す。
「どうぞ。あ、あの……お三方には悪いのですが、その……佑さんは婚約者で特別なので、プレゼントの中身もちょっと特別と言いますか……」
中身に差がある事を伝えると、双子があっけらかんとして答える。
「あ、それは気にしなくていいよ。俺たちはカスミからのプレゼントを値段で判断してないし」
「そうそう。カスミが僕らにプレゼントを贈るのに、考えてくれた時間やこの! カスミ直筆のメッセージカード! が、いいの」
クラウスはクリスマス柄のメッセージカードを佑の目の前に掲げ、決して中身は見せず表紙を指でトントントントンと叩いてみせる。
佑は香澄から直筆メッセージを受け取っていないため、それを悔しそうに見ていた。
「お前、心の狭い男だからカスミが僕らになんてメッセージくれたのか、すっげぇ気になってるんだろ」
クラウスが意地の悪い顔をし、佑はさらに悔しそうにする。
「気になるよ。悪いか?」
素直な返事を聞いて、双子は胸の前で手を打ち鳴らしてキャッキャと喜ぶ。
「ぜってー見せてやんねー」
「一生気にしたまんまでいるといいよ!」
「もー、お二人とも……。佑さん、開けてみて?」
香澄は双子に向かって「まぁまぁ」と手を向けていなしたあと、佑にプレゼントを示す。
佑は「ん、んンっ」と咳払いをし、中から出てきた小箱を開ける。
小箱の中には、小粒の宝石が輝くネクタイピンがあった。
「六月の誕生石がついたネクタイピンにしたの。六月ってパールとムーンストーンも誕生石なんだけど、石言葉を調べてアレキサンドライトは『高貴、情熱』っていう意味があるから、それがいいなって思って」
普段、佑が贈ってくれる高級な宝石と比べると安物かもしれないが、香澄からすれば奮発した金額だ。
実はこれを買うに当たって美鈴に相談し、信頼できる宝石屋を紹介してもらった。
佑はクリスマスカードを見て、「あとで一人で読もう」と呟いてシャツの胸ポケットにしまう。そしてとろけるような微笑みを浮かべた。
「ありがとう。毎日つけるよ」
佑は香澄の手を握り、手の甲にチュッと口づける。
「そ、そんっ……あ、ありがとう……」
佑に色々されるのは慣れていい頃合いなのだが、こうしてお姫様のように手の甲にキスされると、ドキッとしてしまう。
「じゃあ、香澄へのプレゼントの一番乗りは俺だな」
佑はそう言って香澄の手に、ポンと赤い包装紙に金色のリボンが巻かれた箱を置く。
「じゃ、じゃあ。開けさせて頂きます」
この一年、佑にはプレゼント攻撃――もとい爆撃を受けていたが、それでもプレゼントをもらうとなると嬉しい。
「ん……?」
出てきたのは、アクセサリーの入ったビロードの箱だ。
「んっ?」
もう一度声が漏れたのは、リングケースの台座に指輪が二つ嵌まっていたからだ。
(ペアリング? まさかマリッジリングじゃないと思うけど……)
「え……と」
指輪はプラチナで、中央に大きめの石、その左右二つずつ、合計五つの石が嵌まっている。
指輪の片方は濃いピンクの石で統一され、もう片方はオレンジとも朱色ともつかない色で統一されている。
13
お気に入りに追加
2,572
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」
三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。
一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。
「忘れたとは言わせねぇぞ?」
偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。
「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」
その溺愛からは、もう逃れられない。
*第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる