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第十七部・クリスマスパーティー 編

双子へのプレゼント

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「ご馳走、楽しみだな」

 彼は手にワインを持っていて、今日の食事に合いそうな物をワイナリーから選んできたところだ。

「うん! 一日働いてお腹空いたから、張り切って食べる!」

 子供のように無邪気に喜ぶ香澄を見て、全員が笑った。

 そして二十五日のディナーが始まり、香澄は楽しいおしゃべりをしながらご馳走をパクパクと胃袋に収めていく。

 食べ終えると斎藤が後片付けを始め、香澄も手伝おうとしたがこう言われてしまった。

「クリスマスプレゼントを待たれていたので、どうぞそちらを優先してください」

「はい、すみません」

 ペコッと会釈をした時、アロイスに腕を引っ張られた。

「カスミ! おいでよ!」

 そのまま、香澄は玄関ホールに連れて行かれる。

 ピカピカとイルミネーションの灯ったクリスマスツリーの下には、沢山のプレゼントが置かれている。

「……ん? 増えてる?」

「あ、バレた? 今日、待ってるの暇だからカスミのプレゼント増やそうかって言って、三人で出掛けてたんだ」

 クラウスが悪びれもせずに言い、楽しそうに笑う。

「誰のから開ける?」

 佑の質問に双子がバッと人差し指を挙げる。

「カスミからのプレゼントを早く見たい!」

「僕も!」

「そ……、そんな……。大した物じゃないですよ?」

「カスミからもらえるなら、何だっていいよ!」

「そうそう! ヒャッキンのでも大切にするよ」

「外していたらすみません」

 そう言いつつ、香澄は双子へのプレゼントを手に取った。
 二人とも差ができるのは嫌だろうから、色違いの物を買った。

「その……小さくてすみません」

 詫びながら双子に渡したのは、小さな箱だ。

「開けていーい?」

「どうぞ」

 香澄は双子の反応を窺いつつ、緊張してギュッと体を固くする。

 アロイスには赤いリボンのかかった箱で、クラウスには青いリボンのかかった箱だ。

 二人は同時に小箱の箱を開け、「Wow!」と声を上げる。

 双子に送ったのは、USBメモリーだ。

 レザーケースになっていて、黒い革にゴールドで名入れをしてあるのはアロイスの物。茶色の革に黒で名入れしてあるのがクラウスの物だ。

 それに加え、ちょっとしたクリスマスの挨拶程度の、小さなメッセージカードも入れている。

「すみません……。お二人なら何でも手に入りそうだから、考えるのが難しくて……。漢字の名前が入ったグラスとかも考えたんですが、お二人とも日本に精通しているから『ださい』って思うかも分かりませんし。結局、実用重視でUSBメモリーにしました」

 誕生日の時にもらったプレゼントを思えば、五千円にも満たないお返しなので、情けなくて堪らない。

 申し訳なくてペコリと頭を下げた時、フッ……と視界が暗くなった。

「え……」

「おい」

 佑の声が聞こえたかと思うと、香澄は双子によってギュウギュウと抱き締められていた。

「ありがとー!」

「USBのストレージ一杯に、カスミの写真を入れとくねー!」

 両側から抱き締められた挙げ句、左右の頬にちゅーっとキスをされる。

「あっ、あぅ、やっ、その……っ」

Das ist esそこまでだ

 佑がドイツ語で割り込み、双子の顔面を掌で押してメリッ……と香澄から引き剥がす。

「ちょっとぐらいいーじゃん!」

「ブーブー!!」

 双子のブーイングを聞きながら、香澄は佑に抱き締められて後ろにズリ……と引き寄せられる。

「えっと次はマティアスさんですが……」

 意識をマティアスに向けると、彼はすでに正座をして待機していた。

「……す、すみません。そこまで期待されるほどの物じゃないんですけど……。本当に、友達が泊まりに来た時のプレゼント交換の価格でして……」

 謝っても、マティアスも双子と同じ態度だ。

「いや、価格は関係ない。俺は日本の友達にプレゼントをもらえるのが嬉しい」

 そう言って揃えた両掌を差しだしてくるので、香澄は苦笑しながらマティアスの手に拳大の箱をポンと置いた。

「どうぞ」

「ありがとう」

 マティアスは彼にしては珍しく微笑みながら金色のリボンに手を掛け、ミッドナイトブルーのラッピングを解いていく。
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