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第十七部・クリスマスパーティー 編
クリスマス二日目
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「おかえり! プレゼントが腐る!」
「遅い! クリスマスが終わる!」
玄関のドアを開けるや否や双子が待ち構えていて、同時に文句を言う。
(わぁ……。この感じ。さっきまで車でしてた事が嘘みたい)
現実を突きつけられた香澄は、微笑んで「すみません」とひとまず頭を下げる。
「俺たちは仕事があるって言っただろう。これでも残業せずに帰ったんだ。文句を言うな」
「残業しないなんて当たり前だよねー」
「ねー」
「ドイツだって多少はするだろ」
息ピッタリに言った双子にマティアスが突っ込み、即座にアロイスにヘッドロックをかけられ、クラウスに右手を捻り挙げられていた。
「お腹空きました! 貴恵さんいますか?」
香澄はコートを着たままリビングに入り、キッチンに立っている斎藤を見て「いた!」とパッと表情を明るくする。
「お帰りなさい。冷蔵庫にあった残り物をアレンジしています。すぐに出せますから、着替えてきてください」
「はい!」
母親のよう……というには年齢的に申し訳ないのだが、家に帰ると迎えてくれて、ご飯を作って待ってくれている斎藤は、香澄にとって〝お母さん〟のような存在だ。
いそいそと二階に上がった香澄は、コートやマフラーを外し、トレーナーにジーンズというカジュアルな姿になる。
それから洗面所でメイクを落とし、パタパタと階段を下りていく。
キッチンに着くと、さっそく斎藤の手伝いを始めた。
「え~? これローストビーフのお寿司ですか? 美味しそう!」
日本の感覚だと、二十五日のクリスマスは平日と変わりない。
だが斎藤は双子やマティアスの事を考えたのか、翌日もご馳走が楽しめるようにした。
勿論その背景には佑がいて、彼女が望む食材を自由に買っていい事にしている。
長方形の焼き物の皿には、ちょんと山わさびがのった、ローストビーフのにぎり寿司がズラリと並んでいる。
残っていたローストチキンは骨から出汁をとってスープを作り、それに残り肉を入れて煮込みスープパスタになった。
金色の皿にはカナッペが丸く並べられ、中央にある器にはサーモンムースが入っている。
小さな赤い器には、ブロッコリーとポテトをマッシュした物にコーンや赤いパプリカが入り、見た目に楽しい。
「貴恵さん、この緑色のはなんですか?」
ガラスの器には綺麗なグリーンのムースがあり、それを運びながら香澄が尋ねる。
「アボカドのムースですよ。ヨーグルトベースなので酸味があってスッキリしています」
「へぇー!」
ムースの上にはジュレや砕いたナッツ、ハーブも載っていて美味しそうだ。
他にも丸いプレートの中心にドレッシングが入ったガラスの器があり、それを色鮮やかなサラダで囲みリースのようにしたものもある。
「キエ! 僕も運ぶよ」
いつのまに懐いたのかクラウスがキッチンに行き、「お願いします」と斎藤に頼まれたスープ皿を運ぶ。
通りすがるクラウスの手元を覗き込むと、キッチンから斎藤が笑って言った。
「カリフラワーのクリームスープです」
「美味しそう!」
白くてトロトロとしたポタージュの上には、ボイルされた海老が三匹綺麗に並んでいる。
昨日のローストビーフは今日のメインにできるほど残っていないので、斎藤はあらたにバジルで包んだ牛たたきを作ったようだ。
他にも鶏手羽元のはちみつレモンローストもたっぷりとある。
魚料理はアクアパッツァ、先ほど運んだスープパスタの他にもズワイ蟹のトマトクリームパスタもあった。
最後に運んだのはオーブンから出したばかりのポテトグラタンで、二日連続でご馳走だ。
だがまだ若いつもりなので、香澄の胃袋も臨戦態勢だ。
若いとか年齢の事を考えると、たまにニセコで読んだ真奈美からの手紙を思いだす。
(佑さんは『二十代ならまだまだ若い』と言ってくれる。でも真奈美ちゃんみたいに二十代前半なら、私は〝おばさん〟なんだろうな)
思いだしては落ち込んで……と繰り返していたが、最近開き直ろうと思い始めた。
(私には佑さんがいるから、他の人にどう思われるか気にしない。佑さんが『可愛い』と思ってくれるなら、それでいいんだ。それに真奈美ちゃんだって、女子高生、女子中学生から〝おばさん〟って言われるかもしれないし)
そう思ったあと、つくづく思った。
(人を年齢で馬鹿にしたらキリがないな。彼女だってあと五年もすれば私の年齢に近づく訳だし。皆絶対に歳を重ねる。若さが正義なら赤ちゃんが優勝じゃない)
と、針山家で見たりらのぷくぷくほっぺを思い出し、笑顔になる。
(私は年齢や見た目、体型で人を判断しないようにしよう。佑さんだってそんな人を彼女にしたくないと思うし。何をどう言われても、私さえ志を高くしていればいいんだ)
キリッとした顔で決意した時、グゥ……とお腹が鳴り、一人赤面する。
(食いしん坊でも、佑さんは好きだって言ってくれるし)
親戚で集まった時、祖父母は「歳を取ると時間はできるけど健康と体力はなくなる。若い内に夜更かしや暴飲暴食をするのも、醍醐味の一つだ」と言っていた。
(だから……じゃないけど、健康に害のない程度に好きな物を食べたいな。体重が増えたら運動して、なるべくストレスフリーで生きていきたい)
考えながらテーブルに箸やカトラリーを並べていると、佑が話しかけてきた。
「遅い! クリスマスが終わる!」
玄関のドアを開けるや否や双子が待ち構えていて、同時に文句を言う。
(わぁ……。この感じ。さっきまで車でしてた事が嘘みたい)
現実を突きつけられた香澄は、微笑んで「すみません」とひとまず頭を下げる。
「俺たちは仕事があるって言っただろう。これでも残業せずに帰ったんだ。文句を言うな」
「残業しないなんて当たり前だよねー」
「ねー」
「ドイツだって多少はするだろ」
息ピッタリに言った双子にマティアスが突っ込み、即座にアロイスにヘッドロックをかけられ、クラウスに右手を捻り挙げられていた。
「お腹空きました! 貴恵さんいますか?」
香澄はコートを着たままリビングに入り、キッチンに立っている斎藤を見て「いた!」とパッと表情を明るくする。
「お帰りなさい。冷蔵庫にあった残り物をアレンジしています。すぐに出せますから、着替えてきてください」
「はい!」
母親のよう……というには年齢的に申し訳ないのだが、家に帰ると迎えてくれて、ご飯を作って待ってくれている斎藤は、香澄にとって〝お母さん〟のような存在だ。
いそいそと二階に上がった香澄は、コートやマフラーを外し、トレーナーにジーンズというカジュアルな姿になる。
それから洗面所でメイクを落とし、パタパタと階段を下りていく。
キッチンに着くと、さっそく斎藤の手伝いを始めた。
「え~? これローストビーフのお寿司ですか? 美味しそう!」
日本の感覚だと、二十五日のクリスマスは平日と変わりない。
だが斎藤は双子やマティアスの事を考えたのか、翌日もご馳走が楽しめるようにした。
勿論その背景には佑がいて、彼女が望む食材を自由に買っていい事にしている。
長方形の焼き物の皿には、ちょんと山わさびがのった、ローストビーフのにぎり寿司がズラリと並んでいる。
残っていたローストチキンは骨から出汁をとってスープを作り、それに残り肉を入れて煮込みスープパスタになった。
金色の皿にはカナッペが丸く並べられ、中央にある器にはサーモンムースが入っている。
小さな赤い器には、ブロッコリーとポテトをマッシュした物にコーンや赤いパプリカが入り、見た目に楽しい。
「貴恵さん、この緑色のはなんですか?」
ガラスの器には綺麗なグリーンのムースがあり、それを運びながら香澄が尋ねる。
「アボカドのムースですよ。ヨーグルトベースなので酸味があってスッキリしています」
「へぇー!」
ムースの上にはジュレや砕いたナッツ、ハーブも載っていて美味しそうだ。
他にも丸いプレートの中心にドレッシングが入ったガラスの器があり、それを色鮮やかなサラダで囲みリースのようにしたものもある。
「キエ! 僕も運ぶよ」
いつのまに懐いたのかクラウスがキッチンに行き、「お願いします」と斎藤に頼まれたスープ皿を運ぶ。
通りすがるクラウスの手元を覗き込むと、キッチンから斎藤が笑って言った。
「カリフラワーのクリームスープです」
「美味しそう!」
白くてトロトロとしたポタージュの上には、ボイルされた海老が三匹綺麗に並んでいる。
昨日のローストビーフは今日のメインにできるほど残っていないので、斎藤はあらたにバジルで包んだ牛たたきを作ったようだ。
他にも鶏手羽元のはちみつレモンローストもたっぷりとある。
魚料理はアクアパッツァ、先ほど運んだスープパスタの他にもズワイ蟹のトマトクリームパスタもあった。
最後に運んだのはオーブンから出したばかりのポテトグラタンで、二日連続でご馳走だ。
だがまだ若いつもりなので、香澄の胃袋も臨戦態勢だ。
若いとか年齢の事を考えると、たまにニセコで読んだ真奈美からの手紙を思いだす。
(佑さんは『二十代ならまだまだ若い』と言ってくれる。でも真奈美ちゃんみたいに二十代前半なら、私は〝おばさん〟なんだろうな)
思いだしては落ち込んで……と繰り返していたが、最近開き直ろうと思い始めた。
(私には佑さんがいるから、他の人にどう思われるか気にしない。佑さんが『可愛い』と思ってくれるなら、それでいいんだ。それに真奈美ちゃんだって、女子高生、女子中学生から〝おばさん〟って言われるかもしれないし)
そう思ったあと、つくづく思った。
(人を年齢で馬鹿にしたらキリがないな。彼女だってあと五年もすれば私の年齢に近づく訳だし。皆絶対に歳を重ねる。若さが正義なら赤ちゃんが優勝じゃない)
と、針山家で見たりらのぷくぷくほっぺを思い出し、笑顔になる。
(私は年齢や見た目、体型で人を判断しないようにしよう。佑さんだってそんな人を彼女にしたくないと思うし。何をどう言われても、私さえ志を高くしていればいいんだ)
キリッとした顔で決意した時、グゥ……とお腹が鳴り、一人赤面する。
(食いしん坊でも、佑さんは好きだって言ってくれるし)
親戚で集まった時、祖父母は「歳を取ると時間はできるけど健康と体力はなくなる。若い内に夜更かしや暴飲暴食をするのも、醍醐味の一つだ」と言っていた。
(だから……じゃないけど、健康に害のない程度に好きな物を食べたいな。体重が増えたら運動して、なるべくストレスフリーで生きていきたい)
考えながらテーブルに箸やカトラリーを並べていると、佑が話しかけてきた。
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