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第十七部・クリスマスパーティー 編
マネージャー
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そのあとヘアセットをして、素肌にジョン・アルクールのコロンををボディに重ねづけする。
そして「本日の服は……」とクローゼットのドアを開いた。
(今日はランチ会食があって、午後からクリスマスの番組に出て、それから帰社して残りはオフィス……と)
用途を考えて迷ってから、会食があるので綺麗めのタイトワンピースを着る事にした。
膝丈までのベージュのワンピースの上に、同色のジャケットを着る事にする。
ジャケットとコートは最後に着るので、ハンガーに掛けてリビングに置いておけばパッと出られる。
一階に下りて自分と佑の靴の用意をすると、エプロンをつけてキッチンに立った。
(よし、昨日の残り物を温めて食べよう)
斎藤は昨日イベント日返上で頑張ってくれたので、今日の出勤は遅めだ。
彼女の夫はフランス人だし、恐らくオーブリー家では二十五日をメインにクリスマスを祝うのではと思っている。
佑もそのあたりは配慮していて、なるべくイベント日は前後に休みをあげているようだった。
佑がリビングまで下りてきた頃には、香澄はいつものスムージーを作り終えていた。
「お三方は?」
「様子を見たけど、まだ眠ってるようだ。本当ならクリスマスプレゼントを開ける予定だったが、俺たちも仕事があるから仕方がない。帰ってから開ける事にしよう」
「ん、そうだね」
佑はダイニングテーブルの準備をし、香澄の作業を確認して自分の仕事を探す。
「米は?」
「ん、冷凍おにぎり」
「分かった。すぐレンチンできるようにしとく。味噌汁は?」
「ごめん、作ろうか迷ってるうちに佑さん来ちゃって」
「ん、じゃあ俺が作るよ。具は何でもいい?」
「ありがとう。ごめんね、佑さんにはもっとゆっくり朝を過ごしてほしいのに」
「いや? 二人でやったほうが早いし、そのぶん浮いた時間ができるよ」
「……ん」
こういう考え方をする佑が、堪らなく好きだ。
父の事は普通に好きだが、やはり昭和の父親なので家事は基本的に母に任せている。
家事を母にばかりやらせて威張る人ではないし、皿洗いはするし休日にはカレーなど簡単な物は作る。
それでも母と共同作業はしないので、佑のこういうところを見ると新鮮で「いいな」と思う。
二人で今日の予定について雑談する傍ら手を動かし、香澄は昨日の残りで主菜になりそうな物を温めて皿に盛り付ける。
その間に佑は大根となめこの味噌汁を作ってくれ、香澄は冷蔵庫にある漬物などを出す。
食べ終わったあとの皿洗いは食洗機に任せ、香澄は佑が歯磨きをしている間、斎藤とまだ寝ている三人に向けて、それぞれメモを書いた。
斎藤には三人の面倒を頼み、三人には冷蔵庫にある物を温めて食べてほしいとか、クリスマスプレゼントは帰ってから……などだ。
そうこうしているうちに河野が迎えに来て、佑と一緒に出勤した。
午前中は昨日のイベントの報告会が行われ、昼になると都内のフレンチレストランに行って会食だ。
この時期になっての会食は商談的な意味合いはなく、年末に佑に挨拶をしておきたいという者が一緒にランチを取り、ついでに仕事の話を……という感じだ。
その後、テレビ局に向かってクリスマスの情報バラエティ番組の生放送に出演し、佑は司会者や共演者、テレビカメラに向けてよそ行きの微笑みを浮かべる。
香澄はスタッフたちの後ろで番組を見守っていたのだが、ふいに小声で知らない女性に話し掛けられた。
「あの、すみません」
「はい?」
「私、清村加恋のマネージャーをしている者ですが……」
聞けば、佑と共演している若い女性モデルだ。
「お世話になっております。秘書の赤松です」
マネージャーの名刺を渡されたので、香澄も自分の名刺を渡す。
清村加恋は各ジャンルで引っ張りだこのモデルだ。
「内密の話ですが……」
マネージャーが口元に手を当てたので、香澄は思わず彼女に顔を寄せる。
「Chief Every内で芸能部署を立ち上げるという話を小耳に挟んだのですが、本当ですか?」
「!」
香澄はギクッとする。
そして「本日の服は……」とクローゼットのドアを開いた。
(今日はランチ会食があって、午後からクリスマスの番組に出て、それから帰社して残りはオフィス……と)
用途を考えて迷ってから、会食があるので綺麗めのタイトワンピースを着る事にした。
膝丈までのベージュのワンピースの上に、同色のジャケットを着る事にする。
ジャケットとコートは最後に着るので、ハンガーに掛けてリビングに置いておけばパッと出られる。
一階に下りて自分と佑の靴の用意をすると、エプロンをつけてキッチンに立った。
(よし、昨日の残り物を温めて食べよう)
斎藤は昨日イベント日返上で頑張ってくれたので、今日の出勤は遅めだ。
彼女の夫はフランス人だし、恐らくオーブリー家では二十五日をメインにクリスマスを祝うのではと思っている。
佑もそのあたりは配慮していて、なるべくイベント日は前後に休みをあげているようだった。
佑がリビングまで下りてきた頃には、香澄はいつものスムージーを作り終えていた。
「お三方は?」
「様子を見たけど、まだ眠ってるようだ。本当ならクリスマスプレゼントを開ける予定だったが、俺たちも仕事があるから仕方がない。帰ってから開ける事にしよう」
「ん、そうだね」
佑はダイニングテーブルの準備をし、香澄の作業を確認して自分の仕事を探す。
「米は?」
「ん、冷凍おにぎり」
「分かった。すぐレンチンできるようにしとく。味噌汁は?」
「ごめん、作ろうか迷ってるうちに佑さん来ちゃって」
「ん、じゃあ俺が作るよ。具は何でもいい?」
「ありがとう。ごめんね、佑さんにはもっとゆっくり朝を過ごしてほしいのに」
「いや? 二人でやったほうが早いし、そのぶん浮いた時間ができるよ」
「……ん」
こういう考え方をする佑が、堪らなく好きだ。
父の事は普通に好きだが、やはり昭和の父親なので家事は基本的に母に任せている。
家事を母にばかりやらせて威張る人ではないし、皿洗いはするし休日にはカレーなど簡単な物は作る。
それでも母と共同作業はしないので、佑のこういうところを見ると新鮮で「いいな」と思う。
二人で今日の予定について雑談する傍ら手を動かし、香澄は昨日の残りで主菜になりそうな物を温めて皿に盛り付ける。
その間に佑は大根となめこの味噌汁を作ってくれ、香澄は冷蔵庫にある漬物などを出す。
食べ終わったあとの皿洗いは食洗機に任せ、香澄は佑が歯磨きをしている間、斎藤とまだ寝ている三人に向けて、それぞれメモを書いた。
斎藤には三人の面倒を頼み、三人には冷蔵庫にある物を温めて食べてほしいとか、クリスマスプレゼントは帰ってから……などだ。
そうこうしているうちに河野が迎えに来て、佑と一緒に出勤した。
午前中は昨日のイベントの報告会が行われ、昼になると都内のフレンチレストランに行って会食だ。
この時期になっての会食は商談的な意味合いはなく、年末に佑に挨拶をしておきたいという者が一緒にランチを取り、ついでに仕事の話を……という感じだ。
その後、テレビ局に向かってクリスマスの情報バラエティ番組の生放送に出演し、佑は司会者や共演者、テレビカメラに向けてよそ行きの微笑みを浮かべる。
香澄はスタッフたちの後ろで番組を見守っていたのだが、ふいに小声で知らない女性に話し掛けられた。
「あの、すみません」
「はい?」
「私、清村加恋のマネージャーをしている者ですが……」
聞けば、佑と共演している若い女性モデルだ。
「お世話になっております。秘書の赤松です」
マネージャーの名刺を渡されたので、香澄も自分の名刺を渡す。
清村加恋は各ジャンルで引っ張りだこのモデルだ。
「内密の話ですが……」
マネージャーが口元に手を当てたので、香澄は思わず彼女に顔を寄せる。
「Chief Every内で芸能部署を立ち上げるという話を小耳に挟んだのですが、本当ですか?」
「!」
香澄はギクッとする。
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