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第十六部・クリスマス 編
クリスマスイベント
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現在、香澄はTMタワーのホールで、ニコニコしながらイベントが行われているステージを見ていた。
佑はスーツ姿で司会者の女性の進行に合わせ、Chief Everyの今年のクリスマステーマなどを語っている。
会場には物凄い数の応募者から当選した五十名が、ランウェイの左右に並べられたパイプ椅子に座り、熱のこもった目で佑を見ていた。
その外側にもイベントを見たい立ち見客が集まっている。
先日言っていた〝餅まき〟の没案の代案は勿論できている。
サンタクロースのコスプレをした社員がバスケットを持って、客にお菓子を配る事になっている。
大勢の客が来る事を想定しているので、〝お菓子部隊〟は大勢人員を用意していた。
香澄もヘルプとしてサンタガールの格好をしている。
頭にはサンタクロースの帽子、縁にファーがついた赤いワンピースにボレロ、そしてストレッチブーツだ。
当選した五十名には、別途ノベルティを用意してある。
ノベルティは、この日のためにデザインされた小物や、『美人堂』とコラボしてデザインした化粧品のミニサンプルなどだ。
勿論、そのコラボ化粧品の現品は、『美人堂』から商品として新年に合わせて売られる予定になっている。
今会場では『東京ヘブンオーケストラ』が、楽器と歌とでリズミカルで楽しげなクリスマスのソングを奏でている。
巨大クリスマスツリーの前で行われるクリスマスイベントは、大盛り上がりしていた。
ホールに面した各フロアのバルコニーにも、客が大勢いて手拍子をしている。
アーティストの演奏が終わると、次はステージに女性歌手Masiaが歩み出た。
そして曲に合わせ、Masiaが声量のあるドラマティックな声で、クリスマスソングを歌い上げる。
(すごい……)
プロの歌手の歌をまともに聴いた事のない香澄は、思わず自分の体を抱き締めてゾクゾクッと鳥肌を立てた。
ときおり掠れたような声になるのが色っぽく、一気に引き込まれる。まるでライブ会場にいるかのような気持ちだ。
ポーッとして歌手の歌声を聞いていたが、ふとすぐ近くでカシャッとシャッター音が聞こえて「ん?」となった。
横を向くと、すぐ近くに一般男性がいて、あきらかに香澄を狙って一眼レフを構えている。
(え……と)
「ねぇ、君、香澄ちゃんでしょ? 御劔社長の婚約者のAさんって君でしょ?」
あっけに取られている香澄は、すぐに気持ちを切り替えて微笑む。
「お客様。私は社長秘書で一般人です。無断撮影はご遠慮願います」
香澄は男性に向かってビジネススマイルを浮かべ、やんわりと伝える。
「えー? いいじゃん。香澄ちゃんだってアイドル並みに可愛いんだから」
「許可なく撮影する事は、ご遠慮申し上げます」
(どうしよう……)
イベント会場は全員Masiaに注目し、佑もステージのソデに司会と一緒にいるのでこちらに気づいていない。
そもそも距離が離れている上、ステージのライトなどもあるので、お互いの姿が見えないのだ。
こういう時のために久住と佐野が控えていて、少し離れた場所にいた彼らは慌ててこちらに来ようとしている。
二人が駆けつけようとしているのを見て、香澄は内心安心した。
「ねぇ、香澄ちゃん。連絡先交換しない?」
「お客様、お願いがあるのですが宜しいですか?」
香澄はできるだけ可愛く、あざとく微笑み、小首を傾げて男性を見る。
「え? な、なに?」
とたんにデレッとした男性の顔を、香澄は覗き込む。
「素敵なカメラですね? 一眼レフですか? 私、カメラに疎くて」
「そ、そうなんだよ」
パァッと表情を明るくした男性は、猛烈な勢いでカメラの性能や型番などについて語り始める。
久住と佐野、インカムで連絡された警備員はすぐ近くまで来ていた。
「さっき撮ってくださった写真、見せて頂けますか?」
「あ、ああ。いいよ」
男性はカメラの液晶部分を香澄に向け、香澄はそれを覗き込む。
「わぁ……。香澄ちゃんいい匂いがするな……」
男性は夢見心地でクンクンと香澄の香りを嗅ぐが、香澄はそれを無視しにっこりと微笑んだ。
「お願いですが、こんなに立派なカメラでここまで綺麗に撮られてしまっては、今日手抜きでメイクしてしまったのがバレバレになっちゃうんです。お願いですから、消して頂けませんか? 恥ずかしいです……」
男性の顔の目の前で、香澄は媚びるように上目遣いをし、小首を傾げてみせた。
佑はスーツ姿で司会者の女性の進行に合わせ、Chief Everyの今年のクリスマステーマなどを語っている。
会場には物凄い数の応募者から当選した五十名が、ランウェイの左右に並べられたパイプ椅子に座り、熱のこもった目で佑を見ていた。
その外側にもイベントを見たい立ち見客が集まっている。
先日言っていた〝餅まき〟の没案の代案は勿論できている。
サンタクロースのコスプレをした社員がバスケットを持って、客にお菓子を配る事になっている。
大勢の客が来る事を想定しているので、〝お菓子部隊〟は大勢人員を用意していた。
香澄もヘルプとしてサンタガールの格好をしている。
頭にはサンタクロースの帽子、縁にファーがついた赤いワンピースにボレロ、そしてストレッチブーツだ。
当選した五十名には、別途ノベルティを用意してある。
ノベルティは、この日のためにデザインされた小物や、『美人堂』とコラボしてデザインした化粧品のミニサンプルなどだ。
勿論、そのコラボ化粧品の現品は、『美人堂』から商品として新年に合わせて売られる予定になっている。
今会場では『東京ヘブンオーケストラ』が、楽器と歌とでリズミカルで楽しげなクリスマスのソングを奏でている。
巨大クリスマスツリーの前で行われるクリスマスイベントは、大盛り上がりしていた。
ホールに面した各フロアのバルコニーにも、客が大勢いて手拍子をしている。
アーティストの演奏が終わると、次はステージに女性歌手Masiaが歩み出た。
そして曲に合わせ、Masiaが声量のあるドラマティックな声で、クリスマスソングを歌い上げる。
(すごい……)
プロの歌手の歌をまともに聴いた事のない香澄は、思わず自分の体を抱き締めてゾクゾクッと鳥肌を立てた。
ときおり掠れたような声になるのが色っぽく、一気に引き込まれる。まるでライブ会場にいるかのような気持ちだ。
ポーッとして歌手の歌声を聞いていたが、ふとすぐ近くでカシャッとシャッター音が聞こえて「ん?」となった。
横を向くと、すぐ近くに一般男性がいて、あきらかに香澄を狙って一眼レフを構えている。
(え……と)
「ねぇ、君、香澄ちゃんでしょ? 御劔社長の婚約者のAさんって君でしょ?」
あっけに取られている香澄は、すぐに気持ちを切り替えて微笑む。
「お客様。私は社長秘書で一般人です。無断撮影はご遠慮願います」
香澄は男性に向かってビジネススマイルを浮かべ、やんわりと伝える。
「えー? いいじゃん。香澄ちゃんだってアイドル並みに可愛いんだから」
「許可なく撮影する事は、ご遠慮申し上げます」
(どうしよう……)
イベント会場は全員Masiaに注目し、佑もステージのソデに司会と一緒にいるのでこちらに気づいていない。
そもそも距離が離れている上、ステージのライトなどもあるので、お互いの姿が見えないのだ。
こういう時のために久住と佐野が控えていて、少し離れた場所にいた彼らは慌ててこちらに来ようとしている。
二人が駆けつけようとしているのを見て、香澄は内心安心した。
「ねぇ、香澄ちゃん。連絡先交換しない?」
「お客様、お願いがあるのですが宜しいですか?」
香澄はできるだけ可愛く、あざとく微笑み、小首を傾げて男性を見る。
「え? な、なに?」
とたんにデレッとした男性の顔を、香澄は覗き込む。
「素敵なカメラですね? 一眼レフですか? 私、カメラに疎くて」
「そ、そうなんだよ」
パァッと表情を明るくした男性は、猛烈な勢いでカメラの性能や型番などについて語り始める。
久住と佐野、インカムで連絡された警備員はすぐ近くまで来ていた。
「さっき撮ってくださった写真、見せて頂けますか?」
「あ、ああ。いいよ」
男性はカメラの液晶部分を香澄に向け、香澄はそれを覗き込む。
「わぁ……。香澄ちゃんいい匂いがするな……」
男性は夢見心地でクンクンと香澄の香りを嗅ぐが、香澄はそれを無視しにっこりと微笑んだ。
「お願いですが、こんなに立派なカメラでここまで綺麗に撮られてしまっては、今日手抜きでメイクしてしまったのがバレバレになっちゃうんです。お願いですから、消して頂けませんか? 恥ずかしいです……」
男性の顔の目の前で、香澄は媚びるように上目遣いをし、小首を傾げてみせた。
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