上 下
1,039 / 1,548
第十六部・クリスマス 編

バースデープレゼントアゲイン

しおりを挟む
「モフモフでさー。抱っこしたら固まっちゃうんだよ。寝る時はスイッチが切れたみたいにバタンッて寝ちゃったりして」

「そうそう。年中発情可能っていうのもいいよね」

「クラ!」

 セクハラ発言に佑が怒りの突っ込みを入れる。
 それを和ませるように、香澄は立ち上がってバッグを肩に掛けてみた。

「カスミ、沢山入るバッグが好きなんでしょ? 前に言ってたの覚えてる。俺たちのスペシャルなバッグ、ぜひ普段使いにしてね」

「ありがとうございます。マチが広いから沢山入りそうです」

「ホントは自分で持つのは小さいバッグにして、荷物は男に持たせる女の子になってねって思うけど」

「う……」

 レディファースト前提の女になれと言われ、香澄は返す言葉を失う。
 が、誤魔化すようにバッグを褒め始めた。

「そ、それにしても本当に可愛いバッグですね。一目見て好きになりました」

 バッグはモノグラムで、革の茶色と赤のバイカラーになっていて、配色や形、使い心地も香澄好みだ。

「でしょー。僕らも納得いく出来だと思ってる。じゃんじゃん使ってね。あと、これは僕から!」

 クラウスが大きめのショッパーをズイッと出し、香澄は「おとと」と受け取る。

「あ、ありがとうございます」

 ひとまずバッグを下ろし、香澄はクラウスから受け取ったショッパーを開ける。
 箱を開き、やはり薄葉紙に包まれた中にはジャンパーが入っていた。

「わぁ……」

「僕らのブランドの中に『イエローローズ』っていうシリーズがあるんだ。そのシリーズの一点物! 黄色い薔薇は嫉妬っていう花言葉があるんだけど、他の女の子から嫉妬されるような、カッコイイ女の子が着るのをイメージしたんだよね。ローズだけど、エレガントっていうよりは、トゲのあるスパイシーでロックな感じ」

 ジャンパーを広げてみると、お尻の下ぐらいまでありそうな丈だ。
 袖や背中には黄色い薔薇を中心として、アロクラのロゴや十字架などのファッショナブルな刺繍が施されている。

 クラッシュデニムやフェイクレザーのアイテムと合わせると、ロックに着こなせそうだ。

「格好いいですね。すごい……。刺繍ってコストかかりますよね」

「これ、ミシンじゃなくて手縫いだしね。僕らのブランドだとそれぐらいやんないと、値段相応の商品にならないっていうのはあるけど」

「すごい……」

 ジャンパーに袖を通した香澄は、恐る恐る佑を振り返る。

「いいんじゃないか? それに合わせたコーディネイトは、俺が用意する」

 ムッとしないのは大人だが、張り合っているところは隠しきれていない。
 そこでマティアスがポケットに手を入れ、香澄にプレゼントを渡してきた。

「俺からも一応……」

「え? マ、マティアスさんまですみません! ありがとうございます」

 紙袋の中にあるビロードの巾着袋を開けると、ファーでできたキーホルダーが入っていた。

「わあ、可愛い」

「実用的なのがいいと思って、防犯ブザーだ。デザインも可愛いと思うし、音も大きい。ぜひ持ち歩いて役立ててほしい」

「あ、ありがとうございます! リボンのチャームがついているのが可愛いです。毎日持ち歩くバッグにつけますね」

 ファーは子供っぽくないくすみピンクで、金色のリボンのチャームが下がっている。
 確かにこれだとファッション要素が高く、防犯ブザーだと思われないだろう。

「見て、佑さん。可愛い」

「ん、確かに」

 佑は「自分が持たせたかった」という顔をしていたが、大人の女性が持っておかしくないデザインの防犯ブザーについては、勉強になったという表情でもある。

「じゃあ、これにてリベンジバースデープレゼントは終わり! 今回は割とまともだっただろ? タスク」

「マリッジリング送ったぐらいでギャーギャー言うなよなー」

 双子が呆れたように言い、佑はじっとりとした目で二人を睨む。

「普通、男がいる女性に、冗談でもマリッジリングは贈らないと思うが」

「まーまー」

 双子はまたソファに座り、香澄も座ってプレゼントを箱に戻す。

「カスミからのプレゼントも期待してるからね?」

「うっ……。気持ちだけなので、そんなに期待しないでください」

「いやいや、カスミからなら、ホントにだっせぇパンツでも嬉しいから!」

「だからどうしてダサいパンツにこだわるんですか」

 笑いながら突っ込み、何気なく時計を見るともう寝る時間だ。

 その視線に気づいた佑は、カフェインレスティーを飲んでからポンと自分の太腿を叩いた。
しおりを挟む
感想 555

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!

臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。 やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。 他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。 (他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

処理中です...