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第十七部・クリスマスパーティー 編
クリスマスパーティー開始
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「すまない、俺のせいだ」
香澄は犯人が誰で、どんな人なのか知らされていない。
ただ双子と蕎麦屋にいた時にチラッと〝女〟だと聞いていた。
なので漠然と、佑のディープなファンなのかな思っていた。
エミリアの事があったし、佑の隣にいて妬みを買わないほうがおかしい。
だから、何があってもある程度の覚悟はしていた。
「気にしないで。ちょっとの傷で済んだし、私は佑さんに怪我がなくて安心しているの」
婚約者として、秘書として、二重の意味で言うと、佑は視線を落とす。
彼の代わりに双子が言った。
「まー、アレだね。自社ビル内だからってぼやぼやしてたら、一般客や社員、来客を装って何があるか分かったもんじゃない」
「これからマティアスも日本に住むって言うしさ、本気でこいつに身の回り守ってもらえば? 正規の護衛じゃ出しゃばれないところも働いてくれると思うけど」
「それが仕事になるなら、異論はない」
マティアスもそう言ってくれるが、香澄は少し違うと感じた。
「……お気持ちはありがたいのですが、マティアスさんには日本で好きな事をしてほしいです。『負い目があるから』という理由で、守ってもらいたいと思いません」
言ってから、少し言い方がきつかったかな? とすぐに言い直す。
「確かに色々ありましたけど、贖罪の気持ちをいつまでも引きずってほしくないんです。好意や親切は受け取りたいですし、友達として仲良くしたいです。でも、以前の事があったからという理由での関係は、もうやめにしたいんです」
香澄はマティアスに向かって微笑みかけ、さらに言葉を足す。
「先日誘拐されかけて助けてくださったのも、今回犯人を追いかけてくださったのも、偶然でしたし助けて頂いて本当に感謝しています。でも私を守る事を仕事にしてほしくないです。マティアスさんは秘書のスキルがあるんでしょう? 他にも投資家としての顔もあります。せっかくの能力を私のお守りで潰してほしくないんです」
香澄は丁寧に自分の気持ちを伝える。
マティアスはその言葉を真摯に受け止め、頷いた。
「……承知した。必要以上に、『役に立たないと』と思っていたかもしれない。過剰なまでにカスミに干渉しようとするのはやめるが、側にいて適役だと思った時はこれからも助けさせてほしい。勿論、犯罪に巻き込まれそうな時は問答無用で助ける」
「はい。心強いです」
香澄はニコッと笑ってから、スモークサーモンとイクラ、クリームチーズがのったカナッペを口に運んだ。
「さて、そろそろ料理ができるかな? 俺たち味にうるさいし量食うけど、大丈夫だよな? タスク」
「ああ、そのために食材を大量に取り寄せたし、早い時間から斎藤さんに来てもらっている」
挑むようなアロイスの言葉に、なぜか佑が受けて立つという顔で返事をする。
思わず笑った香澄は、「はいっ」と挙手して「私もたっぷり食べます!」と宣誓した。
料理の準備がすべて終わったあと、照明を落としてキャンドルを灯し、全員で『きよしこの夜』を歌った。
香澄はスマホで歌詞を見て日本語で歌い、残る四人は英語だ。
こういう事をするのは小学生以来の気がし、楽しくて仕方がない。
イケメン四人に対し女性が自分一人だけというのは少し恥ずかしいので、ここに麻衣がいればいいのに……と思ってしまう。
「あー、イセエビんまいね!」
焼き伊勢海老にレモン汁をかけ、もっもっと食べているクラウスが唸り、アロイスが「タラバもいけるよ」と太い脚から身を綺麗に取り、もぐもぐと食べていく。
双子は見た目が綺麗な前菜はそこそこに、海鮮にがっついていた。
「お二人とも、海鮮お好きなんですね」
「いやー、札幌行ったでしょ? スシもんまいけど、カニとかウニとか美味くてさぁ」
「目覚めたよね」
「あ、それは嬉しいです。東京にも美味しい海鮮があると思いますけど、北海道の海鮮は美味しいと思うので」
「だよねぇ。カスミも海鮮好きならさ、今度こっち来たらムール貝の酒蒸しとかバケツ一杯喰えるから、んまいもんの旅しようよ」
「ドイツだと海鮮料理ってHeringsgerichte……ニシン料理ぐらいしかないんだよね。日本みたいに海に囲まれてないからさ、それほど目ざとい物がないっていうか」
「芋だな」
「そ! 芋!」
絶妙に合いの手を入れたマティアスの「芋」に、双子がゲラゲラ笑う。
香澄はエビクリームのフィットチーネを食べつつ、ニコニコして双子達の話を聞いていた。
ちなみに佑は、ホスト役として大きなチキンを切り分けている。
香澄は犯人が誰で、どんな人なのか知らされていない。
ただ双子と蕎麦屋にいた時にチラッと〝女〟だと聞いていた。
なので漠然と、佑のディープなファンなのかな思っていた。
エミリアの事があったし、佑の隣にいて妬みを買わないほうがおかしい。
だから、何があってもある程度の覚悟はしていた。
「気にしないで。ちょっとの傷で済んだし、私は佑さんに怪我がなくて安心しているの」
婚約者として、秘書として、二重の意味で言うと、佑は視線を落とす。
彼の代わりに双子が言った。
「まー、アレだね。自社ビル内だからってぼやぼやしてたら、一般客や社員、来客を装って何があるか分かったもんじゃない」
「これからマティアスも日本に住むって言うしさ、本気でこいつに身の回り守ってもらえば? 正規の護衛じゃ出しゃばれないところも働いてくれると思うけど」
「それが仕事になるなら、異論はない」
マティアスもそう言ってくれるが、香澄は少し違うと感じた。
「……お気持ちはありがたいのですが、マティアスさんには日本で好きな事をしてほしいです。『負い目があるから』という理由で、守ってもらいたいと思いません」
言ってから、少し言い方がきつかったかな? とすぐに言い直す。
「確かに色々ありましたけど、贖罪の気持ちをいつまでも引きずってほしくないんです。好意や親切は受け取りたいですし、友達として仲良くしたいです。でも、以前の事があったからという理由での関係は、もうやめにしたいんです」
香澄はマティアスに向かって微笑みかけ、さらに言葉を足す。
「先日誘拐されかけて助けてくださったのも、今回犯人を追いかけてくださったのも、偶然でしたし助けて頂いて本当に感謝しています。でも私を守る事を仕事にしてほしくないです。マティアスさんは秘書のスキルがあるんでしょう? 他にも投資家としての顔もあります。せっかくの能力を私のお守りで潰してほしくないんです」
香澄は丁寧に自分の気持ちを伝える。
マティアスはその言葉を真摯に受け止め、頷いた。
「……承知した。必要以上に、『役に立たないと』と思っていたかもしれない。過剰なまでにカスミに干渉しようとするのはやめるが、側にいて適役だと思った時はこれからも助けさせてほしい。勿論、犯罪に巻き込まれそうな時は問答無用で助ける」
「はい。心強いです」
香澄はニコッと笑ってから、スモークサーモンとイクラ、クリームチーズがのったカナッペを口に運んだ。
「さて、そろそろ料理ができるかな? 俺たち味にうるさいし量食うけど、大丈夫だよな? タスク」
「ああ、そのために食材を大量に取り寄せたし、早い時間から斎藤さんに来てもらっている」
挑むようなアロイスの言葉に、なぜか佑が受けて立つという顔で返事をする。
思わず笑った香澄は、「はいっ」と挙手して「私もたっぷり食べます!」と宣誓した。
料理の準備がすべて終わったあと、照明を落としてキャンドルを灯し、全員で『きよしこの夜』を歌った。
香澄はスマホで歌詞を見て日本語で歌い、残る四人は英語だ。
こういう事をするのは小学生以来の気がし、楽しくて仕方がない。
イケメン四人に対し女性が自分一人だけというのは少し恥ずかしいので、ここに麻衣がいればいいのに……と思ってしまう。
「あー、イセエビんまいね!」
焼き伊勢海老にレモン汁をかけ、もっもっと食べているクラウスが唸り、アロイスが「タラバもいけるよ」と太い脚から身を綺麗に取り、もぐもぐと食べていく。
双子は見た目が綺麗な前菜はそこそこに、海鮮にがっついていた。
「お二人とも、海鮮お好きなんですね」
「いやー、札幌行ったでしょ? スシもんまいけど、カニとかウニとか美味くてさぁ」
「目覚めたよね」
「あ、それは嬉しいです。東京にも美味しい海鮮があると思いますけど、北海道の海鮮は美味しいと思うので」
「だよねぇ。カスミも海鮮好きならさ、今度こっち来たらムール貝の酒蒸しとかバケツ一杯喰えるから、んまいもんの旅しようよ」
「ドイツだと海鮮料理ってHeringsgerichte……ニシン料理ぐらいしかないんだよね。日本みたいに海に囲まれてないからさ、それほど目ざとい物がないっていうか」
「芋だな」
「そ! 芋!」
絶妙に合いの手を入れたマティアスの「芋」に、双子がゲラゲラ笑う。
香澄はエビクリームのフィットチーネを食べつつ、ニコニコして双子達の話を聞いていた。
ちなみに佑は、ホスト役として大きなチキンを切り分けている。
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