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第十七部・クリスマスパーティー 編
うさぎのモコモコパーカー
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「カスミ! 絶対コレ! コレ着て! らくちんだし、沢山食べてもお腹がきつくならないし、これしかない!」
笑いながらクラウスが言い、アロイスも目元を拭いながら頷いている。
「俺もコレ着てほしい! モコモコだしクリスマスっぽいじゃん!?」
「あ、あの! 楽しんでますよね!?」
くすみピンクのそれは、子供っぽい色ではないので、大人の女性のルームウェアとしては可愛い。
シチュエーションによっては、香澄が着ても全然アリなのだろう。
けれど「ドイツでは神聖な扱いのクリスマスだからまじめに着飾ろう」と思ったのに、「ネタで決められた服を着てもいいのだろうか?」という気持ちになる。
「いや、俺は可愛いと思う」
マティアスに真顔で言われてもあまり慰めにならない。
(彼は人より一つズレてるから……)
「た、佑さんが何と言うか……」
精一杯頑張ってみたが、双子はニコニコして同じタイミングで首を横に振った。
「それ、着てみよっか」
「え……? と……。へ、ヘアメイクするんじゃなかったんでしたっけ? だったらちゃんとした服のほうが……」
「するよー? でも何にでも合わせられるじゃん。ナチュラルな感じがいいな。ちょっと抜け感のあるアップヘアにして、メイクは肌の綺麗さを出したツヤメイクにしよっか」
「うー……うぅう……」
情けなくうめく香澄の手に、ルームウェアが押しつけられる。
「じゃあ、僕たちも着替えてくるからさ、その前に今のメイク落として着替えなよ。準備できたら教えて」
「は……はい……」
結局押し切られてしまい、三人が服を片付けて出ていったあと、香澄は溜め息をついて今着ている服を脱ぎ始めた。
二階に誰もいないのを確認し、プリンパルフェのショートパンツとレッグウォーマー、上はキャミソールという姿で洗面所に入り、メイクを落とす。
いつものように念入りに基礎化粧品を肌に叩き込む。
「……こんなんでクリスマスしていいのかな?」
太腿から膝までは素足が出てしまっているが、御劔邸の中は暖房が効いているので特に寒くない。
モコモコのスリッパを履いた足で部屋に戻ろうとして、双子たちに準備ができたと言ったほうがいいのか、と考える。
階段を上がると、ちょうどテーパードパンツにシャツ、ネクタイにベストという姿のクラウスが、笑いながら部屋から廊下に出てきたところだ。
「あーっ! と、カスミ……っ、ぶふぉっ! か、可愛い……っ!」
「ちょ、俺にも見せて! ぶふぉぉっ!!」
そしてクラウスが出てきた部屋からアロイスも出てきて、二人してゲラゲラ笑いだす。
「~~~~」
三人が言う通りルームウェアを着ただけなのに……と、香澄は赤面してむくれる。
「可愛いじゃないか」
そこでマティアスが顔をだし、香澄をしげしげと見たあとにうさぎの耳がついたフードをつまみ、頭に被せた。
「っぶふぉんっ!!」
「ちょ、可愛いからやめ……っ!」
途端、双子の爆笑がさらに激しくなった。
「~~~~あんまり笑うなら、やめます!」
「うそうそうそ! 待って、可愛いから待って」
「はいはい、カスミ、メイクしよっか」
アロイスが香澄の手を取り、お姫様のようにクルッと回して二階に連れていく。
「カスミの部屋に入っていい? メイク道具そこにあるんでしょ?」
「あ……はい、別に……いいですけど」
香澄の私室まで行き、双子は「可愛い部屋だね」とそれとなく部屋の中を見回す。
「可愛いというほどでは……。可愛いよりも、実用性を重視しているので」
言う通り、香澄の部屋には女の子らしいパステルカラーの何かや、ぬいぐるみなどはない。
デスクの上に麻衣からもらったプレゼントの雑貨は飾ってあるが、可愛いと言えるのはそれぐらいだ。
ベッドもデスクもシンプルな物だし、レースやフリルという女子らしさはない。
かろうじてベッドカバーは海外ブランドの気に入った花柄の物だが、ゴテゴテとした飾りはない。
カーテンは薄いエメラルドグリーンに同色の色が混ざっている柄で、可愛いというよりは清潔感のある印象だ。
本棚もシンプルな木製の物で、ドレッサーのみ佑が選んでくれた少しエレガントな形だが、それも木製なので部屋で浮いているという事はない。
笑いながらクラウスが言い、アロイスも目元を拭いながら頷いている。
「俺もコレ着てほしい! モコモコだしクリスマスっぽいじゃん!?」
「あ、あの! 楽しんでますよね!?」
くすみピンクのそれは、子供っぽい色ではないので、大人の女性のルームウェアとしては可愛い。
シチュエーションによっては、香澄が着ても全然アリなのだろう。
けれど「ドイツでは神聖な扱いのクリスマスだからまじめに着飾ろう」と思ったのに、「ネタで決められた服を着てもいいのだろうか?」という気持ちになる。
「いや、俺は可愛いと思う」
マティアスに真顔で言われてもあまり慰めにならない。
(彼は人より一つズレてるから……)
「た、佑さんが何と言うか……」
精一杯頑張ってみたが、双子はニコニコして同じタイミングで首を横に振った。
「それ、着てみよっか」
「え……? と……。へ、ヘアメイクするんじゃなかったんでしたっけ? だったらちゃんとした服のほうが……」
「するよー? でも何にでも合わせられるじゃん。ナチュラルな感じがいいな。ちょっと抜け感のあるアップヘアにして、メイクは肌の綺麗さを出したツヤメイクにしよっか」
「うー……うぅう……」
情けなくうめく香澄の手に、ルームウェアが押しつけられる。
「じゃあ、僕たちも着替えてくるからさ、その前に今のメイク落として着替えなよ。準備できたら教えて」
「は……はい……」
結局押し切られてしまい、三人が服を片付けて出ていったあと、香澄は溜め息をついて今着ている服を脱ぎ始めた。
二階に誰もいないのを確認し、プリンパルフェのショートパンツとレッグウォーマー、上はキャミソールという姿で洗面所に入り、メイクを落とす。
いつものように念入りに基礎化粧品を肌に叩き込む。
「……こんなんでクリスマスしていいのかな?」
太腿から膝までは素足が出てしまっているが、御劔邸の中は暖房が効いているので特に寒くない。
モコモコのスリッパを履いた足で部屋に戻ろうとして、双子たちに準備ができたと言ったほうがいいのか、と考える。
階段を上がると、ちょうどテーパードパンツにシャツ、ネクタイにベストという姿のクラウスが、笑いながら部屋から廊下に出てきたところだ。
「あーっ! と、カスミ……っ、ぶふぉっ! か、可愛い……っ!」
「ちょ、俺にも見せて! ぶふぉぉっ!!」
そしてクラウスが出てきた部屋からアロイスも出てきて、二人してゲラゲラ笑いだす。
「~~~~」
三人が言う通りルームウェアを着ただけなのに……と、香澄は赤面してむくれる。
「可愛いじゃないか」
そこでマティアスが顔をだし、香澄をしげしげと見たあとにうさぎの耳がついたフードをつまみ、頭に被せた。
「っぶふぉんっ!!」
「ちょ、可愛いからやめ……っ!」
途端、双子の爆笑がさらに激しくなった。
「~~~~あんまり笑うなら、やめます!」
「うそうそうそ! 待って、可愛いから待って」
「はいはい、カスミ、メイクしよっか」
アロイスが香澄の手を取り、お姫様のようにクルッと回して二階に連れていく。
「カスミの部屋に入っていい? メイク道具そこにあるんでしょ?」
「あ……はい、別に……いいですけど」
香澄の私室まで行き、双子は「可愛い部屋だね」とそれとなく部屋の中を見回す。
「可愛いというほどでは……。可愛いよりも、実用性を重視しているので」
言う通り、香澄の部屋には女の子らしいパステルカラーの何かや、ぬいぐるみなどはない。
デスクの上に麻衣からもらったプレゼントの雑貨は飾ってあるが、可愛いと言えるのはそれぐらいだ。
ベッドもデスクもシンプルな物だし、レースやフリルという女子らしさはない。
かろうじてベッドカバーは海外ブランドの気に入った花柄の物だが、ゴテゴテとした飾りはない。
カーテンは薄いエメラルドグリーンに同色の色が混ざっている柄で、可愛いというよりは清潔感のある印象だ。
本棚もシンプルな木製の物で、ドレッサーのみ佑が選んでくれた少しエレガントな形だが、それも木製なので部屋で浮いているという事はない。
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