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第十六部・クリスマス 編
診察
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「僕を仲間はずれにするなよー! もー!」
ぶー、と膨れるクラウスをアロイスがハグして宥める。
そして「なんつー病院なの?」と佑に尋ねた。
「都内の原田記念病院だ」
「はーらーだー……と。……OK、場所分かった。タスクからも連絡しといてよ」
アロイスはスマホのマップアプリで場所を確認し、ニカッと笑う。
「分かった。あとは任せたぞ」
「ん」
「じゃーね!」
ビルの前で双子たちと別れ、佑は護衛と共にオフィスに向かう。
専用エレベーターに乗り込むと、佑はスマホを出して香澄に連絡した。
向こうはいま病院なので、コネクターナウにメッセージを入れる。
『今日はもう上がっていいから、診察が終わったら帰ること。アロイス、クラウス、マティアスが病院に向かっているから、一人で行動せず三人と落ち合ってから帰宅してほしい。家に帰ったら今日の自宅パーティー用に、色々準備しておいてくれると助かる』
こうやって役目を与えておけば、香澄も納得するだろう。
(怖い思いをしただろうから、帰りに何か買っていこう)
そう思い、何かあればプレゼントをする事でしか解決できない自分が嫌になる。
はぁ……と大きな溜め息をついて、呉代に尋ねた。
「世の中の男って、落ち込んでいる彼女に何をするんだ?」
「え? 社長がそれを聞くんすか? 俺、クリぼっちですから聞かれても……。えぇ?」
真剣に考える呉代の隣で、妻子持ちの小山内が答えた。
「側にいて差し上げるだけでいいんじゃないですか? クリスマスイブですし、一緒に楽しく過ごすだけで十分です」
「……そうか……」
言われると「なるほど」と思う自分がいるのだが、手ぶらでというのも収まりが悪い。
金で解決するやり方が染みついている自分に、佑はまた溜め息をついた。
その隣で、呉代が「クリぼっち……」と呟いているのは、あえて無視した。
**
病院に行くと佑の婚約者という事で、香澄は一般患者とは別の場所で診察を待っていた。
どうやらそこはVIP用の待合室のようで、医者のほうから足を運んで診てくれる仕組みらしい。
聞けば政治家なども利用しているそうで、自分はそんな大物じゃないのに……と思うのだが、佑の言う事に逆らっても仕方がない。
久住と料理について話していると、香澄のスマホが震えた。
「あ」
「どうかしましたか?」
久住に尋ねられ、香澄は答える。
「今日は病院が終わったら帰りなさいって言われてしまいました。アロイスさんたちもこの病院にいらっしゃるそうなので、合流してからそのまま家に帰るようにって」
遅れて久住と佐野のスマホも震え、彼らはメッセージを見る。
「……のようですね」
香澄は溜め息をつき、出されたお茶を飲む。
待合室はホテルの部屋のようで、室内に診察室で医師が必要とするデスクや道具一式がなければ、本当に客室に見える。
お茶を出してくれたのは看護師ではないが、部屋付きの女性が控えていて、要件があれば聞いてくれるらしい。
と、その時ドアをノックする音がし、五十代ほどの女性医師と看護師が一人入ってきた。
「すみません。前の患者さんの診察が長引きまして」
「いえ、お気にせず」
「御劔さんが、どうしても女性の医師がいいとの事で、私も予定がありましたので遅れてしまいました」
「す、すみません」
女性医師は微笑んで部屋の中央にある仕切りの向こうにある診察椅子に座る。
「付き添いの人はそこで座っていてくださいね」
「はい」
護衛たちが返事をしたあと、香澄は衝立の奥にある診察スペースに入る。
患者用の椅子に座ると「宜しくお願いします」と頭を下げた。
「患部は左肘下と腰という事ですね?」
医師は問診票を見て確認する。
「はい」
「患部を見ますので、服を脱いでベッドの上にうつ伏せになってもらえますか」
「はい」
医師は気を遣ってカーテンの後ろに行き、香澄はその間にジャケット、スカート、シャツを脱ぐ。今回はストッキングもすべて脱いだ。
上はキャミソールだけになると、ベッドの上にうつ伏せになり「大丈夫です」と言った。
ぶー、と膨れるクラウスをアロイスがハグして宥める。
そして「なんつー病院なの?」と佑に尋ねた。
「都内の原田記念病院だ」
「はーらーだー……と。……OK、場所分かった。タスクからも連絡しといてよ」
アロイスはスマホのマップアプリで場所を確認し、ニカッと笑う。
「分かった。あとは任せたぞ」
「ん」
「じゃーね!」
ビルの前で双子たちと別れ、佑は護衛と共にオフィスに向かう。
専用エレベーターに乗り込むと、佑はスマホを出して香澄に連絡した。
向こうはいま病院なので、コネクターナウにメッセージを入れる。
『今日はもう上がっていいから、診察が終わったら帰ること。アロイス、クラウス、マティアスが病院に向かっているから、一人で行動せず三人と落ち合ってから帰宅してほしい。家に帰ったら今日の自宅パーティー用に、色々準備しておいてくれると助かる』
こうやって役目を与えておけば、香澄も納得するだろう。
(怖い思いをしただろうから、帰りに何か買っていこう)
そう思い、何かあればプレゼントをする事でしか解決できない自分が嫌になる。
はぁ……と大きな溜め息をついて、呉代に尋ねた。
「世の中の男って、落ち込んでいる彼女に何をするんだ?」
「え? 社長がそれを聞くんすか? 俺、クリぼっちですから聞かれても……。えぇ?」
真剣に考える呉代の隣で、妻子持ちの小山内が答えた。
「側にいて差し上げるだけでいいんじゃないですか? クリスマスイブですし、一緒に楽しく過ごすだけで十分です」
「……そうか……」
言われると「なるほど」と思う自分がいるのだが、手ぶらでというのも収まりが悪い。
金で解決するやり方が染みついている自分に、佑はまた溜め息をついた。
その隣で、呉代が「クリぼっち……」と呟いているのは、あえて無視した。
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どうやらそこはVIP用の待合室のようで、医者のほうから足を運んで診てくれる仕組みらしい。
聞けば政治家なども利用しているそうで、自分はそんな大物じゃないのに……と思うのだが、佑の言う事に逆らっても仕方がない。
久住と料理について話していると、香澄のスマホが震えた。
「あ」
「どうかしましたか?」
久住に尋ねられ、香澄は答える。
「今日は病院が終わったら帰りなさいって言われてしまいました。アロイスさんたちもこの病院にいらっしゃるそうなので、合流してからそのまま家に帰るようにって」
遅れて久住と佐野のスマホも震え、彼らはメッセージを見る。
「……のようですね」
香澄は溜め息をつき、出されたお茶を飲む。
待合室はホテルの部屋のようで、室内に診察室で医師が必要とするデスクや道具一式がなければ、本当に客室に見える。
お茶を出してくれたのは看護師ではないが、部屋付きの女性が控えていて、要件があれば聞いてくれるらしい。
と、その時ドアをノックする音がし、五十代ほどの女性医師と看護師が一人入ってきた。
「すみません。前の患者さんの診察が長引きまして」
「いえ、お気にせず」
「御劔さんが、どうしても女性の医師がいいとの事で、私も予定がありましたので遅れてしまいました」
「す、すみません」
女性医師は微笑んで部屋の中央にある仕切りの向こうにある診察椅子に座る。
「付き添いの人はそこで座っていてくださいね」
「はい」
護衛たちが返事をしたあと、香澄は衝立の奥にある診察スペースに入る。
患者用の椅子に座ると「宜しくお願いします」と頭を下げた。
「患部は左肘下と腰という事ですね?」
医師は問診票を見て確認する。
「はい」
「患部を見ますので、服を脱いでベッドの上にうつ伏せになってもらえますか」
「はい」
医師は気を遣ってカーテンの後ろに行き、香澄はその間にジャケット、スカート、シャツを脱ぐ。今回はストッキングもすべて脱いだ。
上はキャミソールだけになると、ベッドの上にうつ伏せになり「大丈夫です」と言った。
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