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第十六部・クリスマス 編
来てくださっていたんだ
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『赤松さん。男性のお客様に絡まれていたと報告があったが、大丈夫だったか?』
「はい、社長。問題なく解決できました」
気に掛けてくれたのだと思うと嬉しく、香澄は小さく微笑む。
『良かった。イベントもあと三十分ほどだ。頑張ろう』
「はい!」
小さな声で返事をしたあと、佑からの通信が切れた。
佑の声に元気をもらった香澄は、会場全体をグルリと見回してみる。
(……あれ?)
ふと、二階に見慣れた人影を見つけた。
同じ背丈の金髪はアロイスとクラウスだ。隣にはマティアスもいる。
三人はコーヒーを片手に、手すりに寄りかかって一階で行われているイベントを見てくれていた。
(来てくださっていたんだ)
嬉しくなった香澄は、思わず微笑む。
この距離とこの暗さではお互い分からないだろうけれど、心強い気持ちで一杯になった。
(お三方が佑さんと私の仕事を見てくださるの、純粋に嬉しいな)
元気をもらった香澄は、「よしっ」と自分に気合いを入れてステージや会場に異変がないか目を凝らした。
その間、二十五人の女性モデルがランウェイをもう一度歩いたあと、男性モデルがランウェイを歩く。
Chief Everyのショーなので、基本的にカジュアルなコーディネートが主軸だ。
だがモデルは背が高くスタイルがいいので、ジーンズにジャンパーという格好でも十分に格好いい。
春のデートに着られそうなカジュアルスマートにも応用したコーディネートもあり、イベントを見ている男性客は女性の時とはまた違った目でショーに見入っている。
男性のショーがすべて終わったあと、プロジェクションマッピングの桜吹雪がより激しさを増し、Chief Everyのロゴを交えてDJがミキサーする音楽に合わせて動く。
ヴィヴァルディの『春』をクラブミュージック風にアレンジした曲が終わりを迎えようとしたタイミングで、ドンッ! と雷が落ちる効果音が鳴る。
プロジェクションマッピングにも落雷が描かれ、そのうち雨の効果音がすると同時にザアザアと激しい雨が降ってくる。
雷と雨は次第に烈しくなり、それに合わせてDJが別の曲に綺麗に繋ぐ。
と、ステージの上手と下手から、世界中で活躍するダンスパフォーマンスグループが、バク転をしながら登場した。
またイベント会場が観客の歓声で沸き、大きな拍手に合わせプロのダンサー達が息ぴったりのダンスを魅せる。
ドン、ドンという地響きとも言える低音に合わせて力強くステージを踏みならし、まるで重力などないかのように軽やかに宙を舞う。
全身ダークスーツで固めたダンスパフォーマンスグループ『FULL ORDER』は、踊りにくそうなスーツ姿に拘わらず高度なダンステクニックを見せる。
また帽子やステッキなど、スーツにまつわる小道具も用いていた。
(すごい……。すごい、すごい。…………佑さん、すごい)
香澄は普段、デスク仕事や佑の随行をしているだけで、イベント慣れはしていない。
だからこのような大がかりなイベントがあると、様々なプロの技を見られて当たり前に感動する。
歌手の生歌に背筋を震わせ、会場をドラマティックに彩るプロのライティングに見惚れる。
プロジェクションマッピングの幻想的な美しさに息を呑み、スタイルの良いモデルたちが自社の服を着て最高の形で魅せてくれる姿に見入る。
おまけに世界レベルのプロダンサーが踊り、巨大なステレオを使ったDJがミキシングする音楽に、興奮し、震えるなというほうがおかしい。
最終的に、それらすべての人にイベントに協力してもらえる魅力、十分な報酬を払える佑の財力が「凄い」という事になる。
それに、これが佑以外の人がオーナーであるビルなら、ここまで好き放題できないだろう。
ビルもしっかりと防音設備が整っているので、上階のマンションにも迷惑をかけない。
自社ビルの商業施設にChief Every本店があるため、オフィスから商業施設の間にも荷物用のエレベーターが複数基あり、スムーズに作業が行える。
何もかも、御劔佑の王国とも言えるTMタワーだからこそのマジックだ。
ダンサー達がポーンと放り投げるような軌道で宙返りをし、一糸乱れぬフォーメーションで帽子やステッキを放り投げてはキャッチする。
優しく緻密な動きを見せたかと思えば、重低音に合わせてダンッと足を踏み出し力強い動きを見せる。
気が付けば香澄は『FULL ORDER』のダンスに見入っていた。
そしてダンスがクライマックスを迎え、再び会場に大きな雷が落ちたところで、ハッとしてすべてのショーが終わった合図だと思いだした。
落雷と同時にキャノン砲から銀テープが飛び、また観客がワァッと沸いた。
その時、司令部から担当者の声がし、香澄はシャキッと背筋を伸ばす。
「はい、社長。問題なく解決できました」
気に掛けてくれたのだと思うと嬉しく、香澄は小さく微笑む。
『良かった。イベントもあと三十分ほどだ。頑張ろう』
「はい!」
小さな声で返事をしたあと、佑からの通信が切れた。
佑の声に元気をもらった香澄は、会場全体をグルリと見回してみる。
(……あれ?)
ふと、二階に見慣れた人影を見つけた。
同じ背丈の金髪はアロイスとクラウスだ。隣にはマティアスもいる。
三人はコーヒーを片手に、手すりに寄りかかって一階で行われているイベントを見てくれていた。
(来てくださっていたんだ)
嬉しくなった香澄は、思わず微笑む。
この距離とこの暗さではお互い分からないだろうけれど、心強い気持ちで一杯になった。
(お三方が佑さんと私の仕事を見てくださるの、純粋に嬉しいな)
元気をもらった香澄は、「よしっ」と自分に気合いを入れてステージや会場に異変がないか目を凝らした。
その間、二十五人の女性モデルがランウェイをもう一度歩いたあと、男性モデルがランウェイを歩く。
Chief Everyのショーなので、基本的にカジュアルなコーディネートが主軸だ。
だがモデルは背が高くスタイルがいいので、ジーンズにジャンパーという格好でも十分に格好いい。
春のデートに着られそうなカジュアルスマートにも応用したコーディネートもあり、イベントを見ている男性客は女性の時とはまた違った目でショーに見入っている。
男性のショーがすべて終わったあと、プロジェクションマッピングの桜吹雪がより激しさを増し、Chief Everyのロゴを交えてDJがミキサーする音楽に合わせて動く。
ヴィヴァルディの『春』をクラブミュージック風にアレンジした曲が終わりを迎えようとしたタイミングで、ドンッ! と雷が落ちる効果音が鳴る。
プロジェクションマッピングにも落雷が描かれ、そのうち雨の効果音がすると同時にザアザアと激しい雨が降ってくる。
雷と雨は次第に烈しくなり、それに合わせてDJが別の曲に綺麗に繋ぐ。
と、ステージの上手と下手から、世界中で活躍するダンスパフォーマンスグループが、バク転をしながら登場した。
またイベント会場が観客の歓声で沸き、大きな拍手に合わせプロのダンサー達が息ぴったりのダンスを魅せる。
ドン、ドンという地響きとも言える低音に合わせて力強くステージを踏みならし、まるで重力などないかのように軽やかに宙を舞う。
全身ダークスーツで固めたダンスパフォーマンスグループ『FULL ORDER』は、踊りにくそうなスーツ姿に拘わらず高度なダンステクニックを見せる。
また帽子やステッキなど、スーツにまつわる小道具も用いていた。
(すごい……。すごい、すごい。…………佑さん、すごい)
香澄は普段、デスク仕事や佑の随行をしているだけで、イベント慣れはしていない。
だからこのような大がかりなイベントがあると、様々なプロの技を見られて当たり前に感動する。
歌手の生歌に背筋を震わせ、会場をドラマティックに彩るプロのライティングに見惚れる。
プロジェクションマッピングの幻想的な美しさに息を呑み、スタイルの良いモデルたちが自社の服を着て最高の形で魅せてくれる姿に見入る。
おまけに世界レベルのプロダンサーが踊り、巨大なステレオを使ったDJがミキシングする音楽に、興奮し、震えるなというほうがおかしい。
最終的に、それらすべての人にイベントに協力してもらえる魅力、十分な報酬を払える佑の財力が「凄い」という事になる。
それに、これが佑以外の人がオーナーであるビルなら、ここまで好き放題できないだろう。
ビルもしっかりと防音設備が整っているので、上階のマンションにも迷惑をかけない。
自社ビルの商業施設にChief Every本店があるため、オフィスから商業施設の間にも荷物用のエレベーターが複数基あり、スムーズに作業が行える。
何もかも、御劔佑の王国とも言えるTMタワーだからこそのマジックだ。
ダンサー達がポーンと放り投げるような軌道で宙返りをし、一糸乱れぬフォーメーションで帽子やステッキを放り投げてはキャッチする。
優しく緻密な動きを見せたかと思えば、重低音に合わせてダンッと足を踏み出し力強い動きを見せる。
気が付けば香澄は『FULL ORDER』のダンスに見入っていた。
そしてダンスがクライマックスを迎え、再び会場に大きな雷が落ちたところで、ハッとしてすべてのショーが終わった合図だと思いだした。
落雷と同時にキャノン砲から銀テープが飛び、また観客がワァッと沸いた。
その時、司令部から担当者の声がし、香澄はシャキッと背筋を伸ばす。
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