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第十六部・クリスマス 編
日本式のクリスマス
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「んー? 香澄ちょっとしょげてる? クラ、虐めた?」
そう言われ、香澄とクラウスは同時に目を丸くし、反応する。
「まさか!」
「違いますよ! 私がちょっと……、イギリスでの事を聞きたがっただけで」
香澄はプルプルと首を横に振る。
「あー、アレね。クラは『思い出さない方がいい』って言ったんでしょ?」
「はい」
「俺も賛成。カスミのためにならないよ。あんな事を思い出さなくていいぐらい、俺たちが楽しくさせてあげるから。ね?」
ポンポンと頭を撫でられ微笑まれるうちに、「まぁいいか」という気持ちになった。
「……そうですね。年末年始、思いっきり楽しまないと」
「うん、それが一番」
微笑んだアロイスが「んー」と唇を突き出して顔を寄せた時、「アロ」と佑の声がした。
「何やってるんだ」
こちらも風呂上がりの佑が、キッチンに来てアロイスを冷淡な目で見る。
そしてズラリと並んだラ・フランスを見て香澄に「ご苦労様」と微笑んだ。
「マティアスはまだか。几帳面に荷物整えてるのかな。先にあっちで食ってようよ」
「あ、紅茶の用意しますね」
香澄が慌ててカフェインレスティーの用意をし始めると、何も言わずとも佑が手伝ってくれた。
やがてマティアスもリビングに来て、五人でティータイムをとる。
「日本ってクリスマスイブにディナー行くんだってね?」
「あと! 性の六時間だっけ? 僕、それ知ったとき呼吸困難になるまで笑った!」
「……せいの六時間?」
クラウスが笑っている理由が分からない香澄は、〝性〟を〝聖〟だと思い、「何がおかしいんだろう?」と内心首をひねっている。
分からないのでとりあえず、ドイツでのクリスマスを話題にした。
「そちらでは家族で仲良く過ごすんですよね」
「そうそう。家族との絆を深める日で、ムッティはシュトーレンやクッキー、ご馳走を作ったりするね。俺たちはマーケットに行ってグリューワイン飲んでソーセージ食ったり……まぁ、毎年やってること変わんないんだけど。アドベントカレンダーなんかは、ドキドキするから毎年楽しみだけどね」
知っている単語が出て、香澄はパッと表情を明るくする。
「あ! アドベントカレンダー、私も好きです! 百貨店のコスメのやつとか、持っているアイテムがあるのに、ワクワクしちゃいます」
「あれはいい商売してるよねー。特別感がある。僕らもいっその事、化粧品部門作ろうかとか言ってるよ」
「た、佑さん。CEPでも何かやらないと!」
とっさに香澄は隣に座っている佑の手を握り、必死に訴える。
「そうだな。十二月は金が動くから、服やアクセだけと言わないで色々考えないとな」
顎に手を当てて「ふむ」と頷いた佑は、香澄を抱き寄せてスンッと匂いを嗅ぐ。
「どうせなら、フレグランスから着手してみようかな。好きな女を自分の香りにするのも、味わい方が違うかもしれない」
佑の案を聞いて、香澄はニコニコする。
「楽しみにしてるね。フルーツの香りがいいな」
「だな。俺も嗅いだら、かぶりつきたくなるのがいい」
見つめ合って微笑んでいると、双子がわざとらしく咳払いをする。
「カスミに一番似合う香水作るの、僕たちなんですけど」
「は? 俺以上に香澄を知ってる男がいる訳がないだろう」
妙な張り合いを始めた三人を見て苦笑いしつつ、香澄はラ・フランスをもぐもぐと食べる。
「お三方は、あと四日間どうします? 私たちは会社がありますし、二十七日も忘年会があります。麻衣は二十七日の夜に東京に来るので、忘年会を早めに切り上げた足で迎えに行く形になりますが」
「ふぅーん。まぁ、俺たちはプラプラ遊ぶから気にしなくていいよ。戸締まりはどうしたらいい?」
アロイスに尋ねられ、佑は紅茶を飲んで返事をする。
「出掛ける時は離れに声を掛けてくれ。円山さんが施錠してくれるはずだから」
「りょーかい」
「明日の夜、ここでパーティーするの?」
今度はクラウスに尋ねられ、佑は不承不承という感じで頷く。
「日本式で言えばそうだな。不本意だが、クリスマスツリーの下に、お前らのプレゼントも用意しておいた。日本式のクリスマスを楽しんでくれ」
佑が溜め息をつきつつ言うと、プレゼントと聞いて双子がパッと顔を見合わせた。
そのあと、リビングの隅にある、天井まで届きそうなクリスマスツリーを見る。
「マジ!? タスクいいところあるじゃん!」
「楽しみにしてる! アロ! 僕らも急ごしらえだけどタスクのプレゼント買ってやろうぜ。カスミのだけは用意してきたけど、気が変わった!」
プレゼントと聞いて子供のようにはしゃぐ双子を、香澄は苦笑して見る。
その時、マティアスが尋ねた。
そう言われ、香澄とクラウスは同時に目を丸くし、反応する。
「まさか!」
「違いますよ! 私がちょっと……、イギリスでの事を聞きたがっただけで」
香澄はプルプルと首を横に振る。
「あー、アレね。クラは『思い出さない方がいい』って言ったんでしょ?」
「はい」
「俺も賛成。カスミのためにならないよ。あんな事を思い出さなくていいぐらい、俺たちが楽しくさせてあげるから。ね?」
ポンポンと頭を撫でられ微笑まれるうちに、「まぁいいか」という気持ちになった。
「……そうですね。年末年始、思いっきり楽しまないと」
「うん、それが一番」
微笑んだアロイスが「んー」と唇を突き出して顔を寄せた時、「アロ」と佑の声がした。
「何やってるんだ」
こちらも風呂上がりの佑が、キッチンに来てアロイスを冷淡な目で見る。
そしてズラリと並んだラ・フランスを見て香澄に「ご苦労様」と微笑んだ。
「マティアスはまだか。几帳面に荷物整えてるのかな。先にあっちで食ってようよ」
「あ、紅茶の用意しますね」
香澄が慌ててカフェインレスティーの用意をし始めると、何も言わずとも佑が手伝ってくれた。
やがてマティアスもリビングに来て、五人でティータイムをとる。
「日本ってクリスマスイブにディナー行くんだってね?」
「あと! 性の六時間だっけ? 僕、それ知ったとき呼吸困難になるまで笑った!」
「……せいの六時間?」
クラウスが笑っている理由が分からない香澄は、〝性〟を〝聖〟だと思い、「何がおかしいんだろう?」と内心首をひねっている。
分からないのでとりあえず、ドイツでのクリスマスを話題にした。
「そちらでは家族で仲良く過ごすんですよね」
「そうそう。家族との絆を深める日で、ムッティはシュトーレンやクッキー、ご馳走を作ったりするね。俺たちはマーケットに行ってグリューワイン飲んでソーセージ食ったり……まぁ、毎年やってること変わんないんだけど。アドベントカレンダーなんかは、ドキドキするから毎年楽しみだけどね」
知っている単語が出て、香澄はパッと表情を明るくする。
「あ! アドベントカレンダー、私も好きです! 百貨店のコスメのやつとか、持っているアイテムがあるのに、ワクワクしちゃいます」
「あれはいい商売してるよねー。特別感がある。僕らもいっその事、化粧品部門作ろうかとか言ってるよ」
「た、佑さん。CEPでも何かやらないと!」
とっさに香澄は隣に座っている佑の手を握り、必死に訴える。
「そうだな。十二月は金が動くから、服やアクセだけと言わないで色々考えないとな」
顎に手を当てて「ふむ」と頷いた佑は、香澄を抱き寄せてスンッと匂いを嗅ぐ。
「どうせなら、フレグランスから着手してみようかな。好きな女を自分の香りにするのも、味わい方が違うかもしれない」
佑の案を聞いて、香澄はニコニコする。
「楽しみにしてるね。フルーツの香りがいいな」
「だな。俺も嗅いだら、かぶりつきたくなるのがいい」
見つめ合って微笑んでいると、双子がわざとらしく咳払いをする。
「カスミに一番似合う香水作るの、僕たちなんですけど」
「は? 俺以上に香澄を知ってる男がいる訳がないだろう」
妙な張り合いを始めた三人を見て苦笑いしつつ、香澄はラ・フランスをもぐもぐと食べる。
「お三方は、あと四日間どうします? 私たちは会社がありますし、二十七日も忘年会があります。麻衣は二十七日の夜に東京に来るので、忘年会を早めに切り上げた足で迎えに行く形になりますが」
「ふぅーん。まぁ、俺たちはプラプラ遊ぶから気にしなくていいよ。戸締まりはどうしたらいい?」
アロイスに尋ねられ、佑は紅茶を飲んで返事をする。
「出掛ける時は離れに声を掛けてくれ。円山さんが施錠してくれるはずだから」
「りょーかい」
「明日の夜、ここでパーティーするの?」
今度はクラウスに尋ねられ、佑は不承不承という感じで頷く。
「日本式で言えばそうだな。不本意だが、クリスマスツリーの下に、お前らのプレゼントも用意しておいた。日本式のクリスマスを楽しんでくれ」
佑が溜め息をつきつつ言うと、プレゼントと聞いて双子がパッと顔を見合わせた。
そのあと、リビングの隅にある、天井まで届きそうなクリスマスツリーを見る。
「マジ!? タスクいいところあるじゃん!」
「楽しみにしてる! アロ! 僕らも急ごしらえだけどタスクのプレゼント買ってやろうぜ。カスミのだけは用意してきたけど、気が変わった!」
プレゼントと聞いて子供のようにはしゃぐ双子を、香澄は苦笑して見る。
その時、マティアスが尋ねた。
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