1,031 / 1,544
第十六部・クリスマス 編
カスミの友達ってどんな子?
しおりを挟む
「そんな事ないですよ。……もしあるとしたら、メイクさんに教えて頂いたお陰です」
「ふぅん? けど、実際メイクしたのはカスミだよね?」
双子は呼吸するように女性を褒めているイメージがあるが、実際美形の彼らに褒められると、どうしても照れてしまう。
「う、うぅー……。ど、どうしたんですか。行きたい場所でもあるんですか?」
下心を探ると、彼は舌を鳴らしてから天井を仰いだ。
「あれ、俺ってそういう風に見えてたのかー。たまに本気で褒めるとこうなるのかー」
「お前らは日頃の行いが悪いからだ」
佑が呆れ返った時、アミューズが運ばれてきた。
なんと缶の蓋を開けるとキャビアがぎっしり詰まった一品で、スプーンですくって食べると下には野菜のジュレとクリームチーズが入っている。
「香澄、うまいか?」
「ん、美味しい」
にっこり笑うと、佑も嬉しそうに微笑んでくれる。
以前はキャビアなど食べ慣れず、良さが分からない気がしていたが、最近はちょくちょく口にする機会が増えて美味しさが分かってきた。
プチプチとしょっぱさ、そしてチーズと野菜の風味を味わっていると、クラウスが話しかけてきた。
「カスミさぁ、今度一緒にフランス行こうよ。場所によっては宮殿みたいな所で食べられるし、行ってみる価値はあると思うよ。国内で食うのもアリだけど、場所を変えると楽しいし、経験積みなって」
クラウスに言われ、香澄は佑とフランスに行った時の事を思いだす。
「そうですね……。パリに行った時、星付きのお店には行かなかったかもです。でもホテルのお部屋で食べたクレープやガレット、カフェとか、お肉も美味しかったですよ」
香澄返事を聞き、双子は「肉……」と呟く。
「肉はカスミらしくていいんだけどさ。問題はタスクだよ。パリに連れてったなら、たんまり美味いもん食わせてやりなよ。この子食いしん坊なんだろ? 可哀想じゃないか。ホテルに籠もってイチャついてる場合じゃないだろ」
「あれっ? 私、そんな食いしん坊扱いですか? 可哀想まで言わなくても……」
アロイスの言葉に香澄は焦りを覚える。
「佑さんは悪くありません。私の望みを叶えてくれました。ラーメンも食べられたから満足だったし。それに着いた直後は、何か用事があるみたいで忙しそうだったし……」
「あー……」
そう言うと、双子は合点のいった表情になって黙った。
彼らの様子を見て、香澄は双子も事情を知っているのだとピンと察した。
(でも佑さんが話そうとしないのなら、聞かないほうがいいんだろうな。〝人に会ってきた〟って、いい意味じゃない場合もあるし)
一皿目の前菜は、牡丹海老と西洋葱に柚子風味のソースを添えた物だ。
カトラリーを手に取り、香澄は雰囲気を変えるために話題を変える。
「次は前回行けなかった所に行きたいです。旅行会社のパンフレットを見ると、綺麗な村があるみたいだし、モン・サン=ミッシェルにも興味があります! あそこ、オムレツが名物みたいですね。ふわっふわの、揺すったらプルプルするやつ。食べてみたいです!」
希望を述べると、双子はケラケラ笑う。
「あはは! カスミは食べる事ばっかだねぇ。ソコが可愛いんだけど」
「け、景色も楽しみですよ? もともとは修道院で、干潟にあるんでしたっけ? テレビで場所によっては底なし沼みたいになってる所があるって、言っていました」
「そうそう。嵌まった人をレスキューするための見回りもいるよ」
話している間にも、マティアスは黙々と前菜を食べている。
「ねぇ、今回会えるカスミの友達ってどんな子?」
アロイスに尋ねられ、香澄はパッと笑顔になった。
「麻衣って言うんです。私の高校時代からの親友ですよ」
「ふーん? 仲良くなりたいな!」
焼きたてパンが出されたあと、二皿目の前菜、鮑のクリーム煮がサーブされる。
柔らかな鮑とクリームの優しい味わいを楽しみつつ、香澄は親友を思いだしにっこりして言う。
「麻衣はハッキリした子ですね。人の好き嫌いもそうかもです」
「「お~」」
双子は面白い事を聞いたという表情になり、顔を見合わせてニヤッと笑う。
(でも麻衣はこの三人の事、あまり好きじゃないっぽいんだよな……。私が色々話しちゃったから……)
これから年末年始を一緒に過ごすのに、ギクシャクしたくない。
(麻衣はちゃんと謝ったら怒りを引きずらない人だけど、お二人やマティアスさんと会うのは初めてだし、喧嘩腰にならないといいんだけど……)
考えていると、三皿目の前菜のフォアグラが出された。
大きな椎茸の上にソテーされたフォアグラがあり、上には黒トリュフがのっている。
柔らかで香りのいいそれを食べつつ、香澄は「言いづらいけど……」と思いながら三人に伝えておく。
「ふぅん? けど、実際メイクしたのはカスミだよね?」
双子は呼吸するように女性を褒めているイメージがあるが、実際美形の彼らに褒められると、どうしても照れてしまう。
「う、うぅー……。ど、どうしたんですか。行きたい場所でもあるんですか?」
下心を探ると、彼は舌を鳴らしてから天井を仰いだ。
「あれ、俺ってそういう風に見えてたのかー。たまに本気で褒めるとこうなるのかー」
「お前らは日頃の行いが悪いからだ」
佑が呆れ返った時、アミューズが運ばれてきた。
なんと缶の蓋を開けるとキャビアがぎっしり詰まった一品で、スプーンですくって食べると下には野菜のジュレとクリームチーズが入っている。
「香澄、うまいか?」
「ん、美味しい」
にっこり笑うと、佑も嬉しそうに微笑んでくれる。
以前はキャビアなど食べ慣れず、良さが分からない気がしていたが、最近はちょくちょく口にする機会が増えて美味しさが分かってきた。
プチプチとしょっぱさ、そしてチーズと野菜の風味を味わっていると、クラウスが話しかけてきた。
「カスミさぁ、今度一緒にフランス行こうよ。場所によっては宮殿みたいな所で食べられるし、行ってみる価値はあると思うよ。国内で食うのもアリだけど、場所を変えると楽しいし、経験積みなって」
クラウスに言われ、香澄は佑とフランスに行った時の事を思いだす。
「そうですね……。パリに行った時、星付きのお店には行かなかったかもです。でもホテルのお部屋で食べたクレープやガレット、カフェとか、お肉も美味しかったですよ」
香澄返事を聞き、双子は「肉……」と呟く。
「肉はカスミらしくていいんだけどさ。問題はタスクだよ。パリに連れてったなら、たんまり美味いもん食わせてやりなよ。この子食いしん坊なんだろ? 可哀想じゃないか。ホテルに籠もってイチャついてる場合じゃないだろ」
「あれっ? 私、そんな食いしん坊扱いですか? 可哀想まで言わなくても……」
アロイスの言葉に香澄は焦りを覚える。
「佑さんは悪くありません。私の望みを叶えてくれました。ラーメンも食べられたから満足だったし。それに着いた直後は、何か用事があるみたいで忙しそうだったし……」
「あー……」
そう言うと、双子は合点のいった表情になって黙った。
彼らの様子を見て、香澄は双子も事情を知っているのだとピンと察した。
(でも佑さんが話そうとしないのなら、聞かないほうがいいんだろうな。〝人に会ってきた〟って、いい意味じゃない場合もあるし)
一皿目の前菜は、牡丹海老と西洋葱に柚子風味のソースを添えた物だ。
カトラリーを手に取り、香澄は雰囲気を変えるために話題を変える。
「次は前回行けなかった所に行きたいです。旅行会社のパンフレットを見ると、綺麗な村があるみたいだし、モン・サン=ミッシェルにも興味があります! あそこ、オムレツが名物みたいですね。ふわっふわの、揺すったらプルプルするやつ。食べてみたいです!」
希望を述べると、双子はケラケラ笑う。
「あはは! カスミは食べる事ばっかだねぇ。ソコが可愛いんだけど」
「け、景色も楽しみですよ? もともとは修道院で、干潟にあるんでしたっけ? テレビで場所によっては底なし沼みたいになってる所があるって、言っていました」
「そうそう。嵌まった人をレスキューするための見回りもいるよ」
話している間にも、マティアスは黙々と前菜を食べている。
「ねぇ、今回会えるカスミの友達ってどんな子?」
アロイスに尋ねられ、香澄はパッと笑顔になった。
「麻衣って言うんです。私の高校時代からの親友ですよ」
「ふーん? 仲良くなりたいな!」
焼きたてパンが出されたあと、二皿目の前菜、鮑のクリーム煮がサーブされる。
柔らかな鮑とクリームの優しい味わいを楽しみつつ、香澄は親友を思いだしにっこりして言う。
「麻衣はハッキリした子ですね。人の好き嫌いもそうかもです」
「「お~」」
双子は面白い事を聞いたという表情になり、顔を見合わせてニヤッと笑う。
(でも麻衣はこの三人の事、あまり好きじゃないっぽいんだよな……。私が色々話しちゃったから……)
これから年末年始を一緒に過ごすのに、ギクシャクしたくない。
(麻衣はちゃんと謝ったら怒りを引きずらない人だけど、お二人やマティアスさんと会うのは初めてだし、喧嘩腰にならないといいんだけど……)
考えていると、三皿目の前菜のフォアグラが出された。
大きな椎茸の上にソテーされたフォアグラがあり、上には黒トリュフがのっている。
柔らかで香りのいいそれを食べつつ、香澄は「言いづらいけど……」と思いながら三人に伝えておく。
12
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる