上 下
1,031 / 1,548
第十六部・クリスマス 編

カスミの友達ってどんな子?

しおりを挟む
「そんな事ないですよ。……もしあるとしたら、メイクさんに教えて頂いたお陰です」

「ふぅん? けど、実際メイクしたのはカスミだよね?」

 双子は呼吸するように女性を褒めているイメージがあるが、実際美形の彼らに褒められると、どうしても照れてしまう。

「う、うぅー……。ど、どうしたんですか。行きたい場所でもあるんですか?」

 下心を探ると、彼は舌を鳴らしてから天井を仰いだ。

「あれ、俺ってそういう風に見えてたのかー。たまに本気で褒めるとこうなるのかー」

「お前らは日頃の行いが悪いからだ」

 佑が呆れ返った時、アミューズが運ばれてきた。

 なんと缶の蓋を開けるとキャビアがぎっしり詰まった一品で、スプーンですくって食べると下には野菜のジュレとクリームチーズが入っている。

「香澄、うまいか?」

「ん、美味しい」

 にっこり笑うと、佑も嬉しそうに微笑んでくれる。

 以前はキャビアなど食べ慣れず、良さが分からない気がしていたが、最近はちょくちょく口にする機会が増えて美味しさが分かってきた。

 プチプチとしょっぱさ、そしてチーズと野菜の風味を味わっていると、クラウスが話しかけてきた。

「カスミさぁ、今度一緒にフランス行こうよ。場所によっては宮殿みたいな所で食べられるし、行ってみる価値はあると思うよ。国内で食うのもアリだけど、場所を変えると楽しいし、経験積みなって」

 クラウスに言われ、香澄は佑とフランスに行った時の事を思いだす。

「そうですね……。パリに行った時、星付きのお店には行かなかったかもです。でもホテルのお部屋で食べたクレープやガレット、カフェとか、お肉も美味しかったですよ」

 香澄返事を聞き、双子は「肉……」と呟く。

「肉はカスミらしくていいんだけどさ。問題はタスクだよ。パリに連れてったなら、たんまり美味いもん食わせてやりなよ。この子食いしん坊なんだろ? 可哀想じゃないか。ホテルに籠もってイチャついてる場合じゃないだろ」

「あれっ? 私、そんな食いしん坊扱いですか? 可哀想まで言わなくても……」

 アロイスの言葉に香澄は焦りを覚える。

「佑さんは悪くありません。私の望みを叶えてくれました。ラーメンも食べられたから満足だったし。それに着いた直後は、何か用事があるみたいで忙しそうだったし……」

「あー……」

 そう言うと、双子は合点のいった表情になって黙った。

 彼らの様子を見て、香澄は双子も事情を知っているのだとピンと察した。

(でも佑さんが話そうとしないのなら、聞かないほうがいいんだろうな。〝人に会ってきた〟って、いい意味じゃない場合もあるし)

 一皿目の前菜は、牡丹海老と西洋葱に柚子風味のソースを添えた物だ。

 カトラリーを手に取り、香澄は雰囲気を変えるために話題を変える。

「次は前回行けなかった所に行きたいです。旅行会社のパンフレットを見ると、綺麗な村があるみたいだし、モン・サン=ミッシェルにも興味があります! あそこ、オムレツが名物みたいですね。ふわっふわの、揺すったらプルプルするやつ。食べてみたいです!」

 希望を述べると、双子はケラケラ笑う。

「あはは! カスミは食べる事ばっかだねぇ。ソコが可愛いんだけど」

「け、景色も楽しみですよ? もともとは修道院で、干潟にあるんでしたっけ? テレビで場所によっては底なし沼みたいになってる所があるって、言っていました」

「そうそう。嵌まった人をレスキューするための見回りもいるよ」

 話している間にも、マティアスは黙々と前菜を食べている。

「ねぇ、今回会えるカスミの友達ってどんな子?」

 アロイスに尋ねられ、香澄はパッと笑顔になった。

「麻衣って言うんです。私の高校時代からの親友ですよ」

「ふーん? 仲良くなりたいな!」

 焼きたてパンが出されたあと、二皿目の前菜、鮑のクリーム煮がサーブされる。
 柔らかな鮑とクリームの優しい味わいを楽しみつつ、香澄は親友を思いだしにっこりして言う。

「麻衣はハッキリした子ですね。人の好き嫌いもそうかもです」

「「お~」」

 双子は面白い事を聞いたという表情になり、顔を見合わせてニヤッと笑う。

(でも麻衣はこの三人の事、あまり好きじゃないっぽいんだよな……。私が色々話しちゃったから……)

 これから年末年始を一緒に過ごすのに、ギクシャクしたくない。

(麻衣はちゃんと謝ったら怒りを引きずらない人だけど、お二人やマティアスさんと会うのは初めてだし、喧嘩腰にならないといいんだけど……)

 考えていると、三皿目の前菜のフォアグラが出された。
 大きな椎茸の上にソテーされたフォアグラがあり、上には黒トリュフがのっている。

 柔らかで香りのいいそれを食べつつ、香澄は「言いづらいけど……」と思いながら三人に伝えておく。
しおりを挟む
感想 555

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!

臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。 やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。 他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。 (他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

処理中です...