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第十六部・クリスマス 編
DVなんてされてません
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「今まで、気持ちのないエッチに応える人がいた事が異常だったんです。普通の女性にとって、ベッドインは特別な事です。すぐ下半身に訴える考え方、やめたんじゃなかったんですか? いつまでもそうだと、信頼されたくてもされませんよ?」
「……カスミさぁ」
椅子の背もたれに体を預け、腕を組んだアロイスはまじまじと香澄を見る。
「はい?」
「自分の事じゃないとホント強気だよね。自分の事も、それぐらい強気に守れたらいいのにね」
「確かに」
隣で佑が同意し、香澄は恥ずかしくなって俯いた。
「……す、すみません……」
「いや、僕らはカスミがもっとキリッとしてくれたら万々歳だけど」
「お前らがそれを言うのか」
思わず突っ込んだ佑に、クラウスは小首を傾げてみせる。
「カスミがタスクに酷い事されたら、僕らはいつでも受け入れるよ。恋の相手にもなるけど、絶対見つからない隠れ家も準備できてる」
「なんで俺が加害者なんだ」
佑は忌々しそうに言う。
「だってお前、カスミの事になるとすっごい盲目的になるじゃん。見てて危なっかしいし、一つ間違えるとDVっぽくなるんじゃないの?」
アロイスが何気なく言った言葉に、佑は一瞬固まった。
それを見逃す双子ではない。
「はぁ~ん……。心当たりあるんだな?」
唇を歪ませて黙った佑に、香澄が加勢する。
「DVなんてされてません」
「カスミ、分かってる? それってDVを自覚してない女の子が、決まって言うセリフだよ?」
アロイスがまじめな表情で言い、「何やってんだか」という目で佑を見る。
そして続けた。
「カスミを匿うっていうのは半分冗談だけど、もしシャレになんない事になったらいつでも言うんだよ? 俺たちだっていつもふざけてる訳じゃない。カスミには借りがあるし、本当に困ってる時はちゃんと手を貸すよ」
「ありがとうございます。でも、その。本当に心配ないので……」
頑なに否定する香澄に、双子は顔を見合わせ肩をすくめる。
「ま、カスミがそれでいいなら問題ないけどね。今はこれ以上何も言わないけど、本当に困った時は言いなよ?」
「はい」
DV男の前提で会話されて、佑は大きな溜め息をつく。
その時、黙っていたマティアスが助け船ならぬ、とどめを刺した。
「カイもアロクラも、ここにいる全員が心の童貞なんだから、あまりいじめてやるな」
その言葉を聞いて、双子が噴きだした。
「っぶふっ……! やめ……っ」
「やべぇ、鼻水出かけた」
「……せっかくの星つきレストランなんだから、もう少し上品にいこう」
佑が額に手を当てて言った時、食前酒が運ばれてきた。
ソムリエがボトルを開封し、グラスに金色の液体が注がれる。
「じゃ、改めて乾杯しよっか」
「Prost!」
丸テーブルの中央に置かれてある卓上花の上で、五人のグラスが透明な音を立てる。
香澄はいつものように乾杯しかけ、ハッと思いだす。
『ドイツ式の乾杯は、相手にしっかり目を合わせないと、その後七年いいセックスができない』
焦ってぐっと目に力を込め、アロイス、クラウス、マティアスと乾杯し、最後に佑の目をじぃっと見る。
「……そんな凝視しなくても可愛いけど」
佑が困惑して言うが、双子たちは無言で肩を震わせていた。
「そ、そうじゃなくて……。うう……」
(佑さんは日本で暮らしてるから、この事知らないのかな?)
内心首を傾げながら、香澄はシャンパンを一口飲む。
「……ん、おいし」
そのあと一口のお楽しみが運ばれ、香澄は小さく美しく整えられたそれにうっとりする。
「カスミ、今日のアイメイク可愛いね。ボルドーとレッドが入ってて、クリスマスっぽい。ラメもめちゃ可愛い!」
不意にアロイスに顔を覗き込まれ、香澄は嬉しくなって微笑んだ。
「クリスマスコフレのアイシャドウです。買ってくれたので、使わないとって思って」
「そっかー。最近メイクも上手になってきたし、ますます洗練されてきたね」
褒められて香澄は赤面する。
「……カスミさぁ」
椅子の背もたれに体を預け、腕を組んだアロイスはまじまじと香澄を見る。
「はい?」
「自分の事じゃないとホント強気だよね。自分の事も、それぐらい強気に守れたらいいのにね」
「確かに」
隣で佑が同意し、香澄は恥ずかしくなって俯いた。
「……す、すみません……」
「いや、僕らはカスミがもっとキリッとしてくれたら万々歳だけど」
「お前らがそれを言うのか」
思わず突っ込んだ佑に、クラウスは小首を傾げてみせる。
「カスミがタスクに酷い事されたら、僕らはいつでも受け入れるよ。恋の相手にもなるけど、絶対見つからない隠れ家も準備できてる」
「なんで俺が加害者なんだ」
佑は忌々しそうに言う。
「だってお前、カスミの事になるとすっごい盲目的になるじゃん。見てて危なっかしいし、一つ間違えるとDVっぽくなるんじゃないの?」
アロイスが何気なく言った言葉に、佑は一瞬固まった。
それを見逃す双子ではない。
「はぁ~ん……。心当たりあるんだな?」
唇を歪ませて黙った佑に、香澄が加勢する。
「DVなんてされてません」
「カスミ、分かってる? それってDVを自覚してない女の子が、決まって言うセリフだよ?」
アロイスがまじめな表情で言い、「何やってんだか」という目で佑を見る。
そして続けた。
「カスミを匿うっていうのは半分冗談だけど、もしシャレになんない事になったらいつでも言うんだよ? 俺たちだっていつもふざけてる訳じゃない。カスミには借りがあるし、本当に困ってる時はちゃんと手を貸すよ」
「ありがとうございます。でも、その。本当に心配ないので……」
頑なに否定する香澄に、双子は顔を見合わせ肩をすくめる。
「ま、カスミがそれでいいなら問題ないけどね。今はこれ以上何も言わないけど、本当に困った時は言いなよ?」
「はい」
DV男の前提で会話されて、佑は大きな溜め息をつく。
その時、黙っていたマティアスが助け船ならぬ、とどめを刺した。
「カイもアロクラも、ここにいる全員が心の童貞なんだから、あまりいじめてやるな」
その言葉を聞いて、双子が噴きだした。
「っぶふっ……! やめ……っ」
「やべぇ、鼻水出かけた」
「……せっかくの星つきレストランなんだから、もう少し上品にいこう」
佑が額に手を当てて言った時、食前酒が運ばれてきた。
ソムリエがボトルを開封し、グラスに金色の液体が注がれる。
「じゃ、改めて乾杯しよっか」
「Prost!」
丸テーブルの中央に置かれてある卓上花の上で、五人のグラスが透明な音を立てる。
香澄はいつものように乾杯しかけ、ハッと思いだす。
『ドイツ式の乾杯は、相手にしっかり目を合わせないと、その後七年いいセックスができない』
焦ってぐっと目に力を込め、アロイス、クラウス、マティアスと乾杯し、最後に佑の目をじぃっと見る。
「……そんな凝視しなくても可愛いけど」
佑が困惑して言うが、双子たちは無言で肩を震わせていた。
「そ、そうじゃなくて……。うう……」
(佑さんは日本で暮らしてるから、この事知らないのかな?)
内心首を傾げながら、香澄はシャンパンを一口飲む。
「……ん、おいし」
そのあと一口のお楽しみが運ばれ、香澄は小さく美しく整えられたそれにうっとりする。
「カスミ、今日のアイメイク可愛いね。ボルドーとレッドが入ってて、クリスマスっぽい。ラメもめちゃ可愛い!」
不意にアロイスに顔を覗き込まれ、香澄は嬉しくなって微笑んだ。
「クリスマスコフレのアイシャドウです。買ってくれたので、使わないとって思って」
「そっかー。最近メイクも上手になってきたし、ますます洗練されてきたね」
褒められて香澄は赤面する。
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