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第十六部・クリスマス 編
双子とランチ
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「よし、俺買おーっと」
「へっ?」
双子は、先ほどから美里に似合いそうな物を持ってきては、「自分が買う」と言っている。
ハッキリいって訳が分からない。
これで「買ってあげる」と言われていたなら、きちんと断った上で自分で買おうか検討していた。
だが双子たちが自分で買うと言うなら、「欲しいなら彼らに譲らないと駄目なのかな?」と思い、何も言えない。
そのようにして奇妙な買い物が続き、双子たちは品物を清算してはスタッフに宅配を頼む。
「これ、配送しておいてくれる?」
「はい、かしこまりました」
配送先は彼らが宿泊している『ロイヤルグラン』で、最終的に一同は手ぶらのままひゃかてんを出た。
(何だったんだろう……)
美里は頭の中に「?」を幾つも浮かべたまま、双子に連れられて歩いていった。
ランチタイムになる頃には、買い物をしながら札幌駅近くまで戻っていた。
双子は札幌駅に直結している大角梅坂屋に入り、八階のレストラン街にある和食料理店に入った。
「ここの個室をリザーブしておいたよ」
「はぁ……」
デパートのレストラン街と言えば、店の前に食品サンプルがあるのが美里の認識だ。
だがその店は店先にメニューを置いているだけだ。
加えて一枚板に店名がドンと描かれた看板があり、はっきり言って入りづらい。
「いらっしゃいませ」
男性が、折り目正しくお辞儀して出迎える。
アロイスが「十三時に予約していた、クラウザーだよ」と言うと「お待ちしておりました」と個室へと案内してくれた。
(和食食べたいって言ったけど、こんなお店に連れてこられるとは思わなかった。服装、大丈夫かな)
個室に入り、美里と双子は向かい合わせに座る。
(場違いだって思ってないのかな)
ブルゾンを脱ぎつつ双子を見ても、彼らは特に変わった様子を見せない。
いつまでも悩んでいるのも嫌なので、思い切って言ってみる事にした。
「すみませんでした」
「ん?」
キョトンとする双子に、美里は一瞬躊躇ってから伝える。
「こんな高級そうなお店に来るんだったら、もっと服に気を遣えば良かったです」
「そんな事?」
「気にしなくていいよ。独立した建物ならともかく、百貨店のレストラン街にある店なら、カジュアルでも許されるはずだし」
あっけらかんと言われ、少し気持ちが楽になる。
「お二人って、デザイナーなんですよね? 普段から服装に気を遣っていますか? 今だって質のいい物を着ていますし」
美里の質問に、双子はナチュラルに返事をする。
「んー、自分の気に入った物を着てるだけかな?」
「そうそう。ここだけの話だけど、Chief Everyの服を着る事もあるよ。あいつがこだわっただけあって、質がいいから」
「Chief Everyの服、可愛いですよね。色んなジャンルがあって迷えるのが贅沢です」
言った途端、双子が「ダメダメ!」と声を揃えて反対してきた。
「ミサトが可愛い系着るなら、絶対僕らの服を着て?」
「そうそう! ミサトならサイズを測った上で、オーダーメイドで作ってあげるから」
とんでもない事を言われ、美里は目を剥く。
「だ、駄目です。お二人のブランドって、数十万が当たり前、ちょっと凝った服やバッグなら数百万いくじゃないですか。そんなの、気軽に着られませんって」
その時、スタッフがおしぼりを出し、飲み物のオーダーをする。
美里は夕方になればバーでの仕事があるので、ジュースにした。
「僕らもカジュアルな値段のブランドを作ったらいいのかなぁ」
「あいつはCEPもあるから、俺たちの方が後手に出ている感はあるよな」
先ほどから双子が意識しているのは、御劔佑だろう。
「ハイブランドのデザイナーっていうだけでも、十分凄いじゃないですか」
「でもなぁ。あいつにできて僕らにできてないって……」
ブツブツと言う双子は、佑よりも年上なのにどこか子供っぽい。
「思うんですけど、同じジャンルで手を広げようとしたら、全部遅れての行動になりません? それならお二人のブランド力を生かして、別の分野で戦ったほうがいい気がします」
思った事を言うと、双子は目をまん丸にしたあと顔を見合わせた。
そして考えたあと、「それもそうだな……」とブツブツと言い始める。
「そもそも、どうして従弟なのに御劔社長をライバル視しているんです?」
美里の質問に、双子はまた顔を見合わせ、「だって……ねぇ」と決まり悪そうに言葉を濁す。
「へっ?」
双子は、先ほどから美里に似合いそうな物を持ってきては、「自分が買う」と言っている。
ハッキリいって訳が分からない。
これで「買ってあげる」と言われていたなら、きちんと断った上で自分で買おうか検討していた。
だが双子たちが自分で買うと言うなら、「欲しいなら彼らに譲らないと駄目なのかな?」と思い、何も言えない。
そのようにして奇妙な買い物が続き、双子たちは品物を清算してはスタッフに宅配を頼む。
「これ、配送しておいてくれる?」
「はい、かしこまりました」
配送先は彼らが宿泊している『ロイヤルグラン』で、最終的に一同は手ぶらのままひゃかてんを出た。
(何だったんだろう……)
美里は頭の中に「?」を幾つも浮かべたまま、双子に連れられて歩いていった。
ランチタイムになる頃には、買い物をしながら札幌駅近くまで戻っていた。
双子は札幌駅に直結している大角梅坂屋に入り、八階のレストラン街にある和食料理店に入った。
「ここの個室をリザーブしておいたよ」
「はぁ……」
デパートのレストラン街と言えば、店の前に食品サンプルがあるのが美里の認識だ。
だがその店は店先にメニューを置いているだけだ。
加えて一枚板に店名がドンと描かれた看板があり、はっきり言って入りづらい。
「いらっしゃいませ」
男性が、折り目正しくお辞儀して出迎える。
アロイスが「十三時に予約していた、クラウザーだよ」と言うと「お待ちしておりました」と個室へと案内してくれた。
(和食食べたいって言ったけど、こんなお店に連れてこられるとは思わなかった。服装、大丈夫かな)
個室に入り、美里と双子は向かい合わせに座る。
(場違いだって思ってないのかな)
ブルゾンを脱ぎつつ双子を見ても、彼らは特に変わった様子を見せない。
いつまでも悩んでいるのも嫌なので、思い切って言ってみる事にした。
「すみませんでした」
「ん?」
キョトンとする双子に、美里は一瞬躊躇ってから伝える。
「こんな高級そうなお店に来るんだったら、もっと服に気を遣えば良かったです」
「そんな事?」
「気にしなくていいよ。独立した建物ならともかく、百貨店のレストラン街にある店なら、カジュアルでも許されるはずだし」
あっけらかんと言われ、少し気持ちが楽になる。
「お二人って、デザイナーなんですよね? 普段から服装に気を遣っていますか? 今だって質のいい物を着ていますし」
美里の質問に、双子はナチュラルに返事をする。
「んー、自分の気に入った物を着てるだけかな?」
「そうそう。ここだけの話だけど、Chief Everyの服を着る事もあるよ。あいつがこだわっただけあって、質がいいから」
「Chief Everyの服、可愛いですよね。色んなジャンルがあって迷えるのが贅沢です」
言った途端、双子が「ダメダメ!」と声を揃えて反対してきた。
「ミサトが可愛い系着るなら、絶対僕らの服を着て?」
「そうそう! ミサトならサイズを測った上で、オーダーメイドで作ってあげるから」
とんでもない事を言われ、美里は目を剥く。
「だ、駄目です。お二人のブランドって、数十万が当たり前、ちょっと凝った服やバッグなら数百万いくじゃないですか。そんなの、気軽に着られませんって」
その時、スタッフがおしぼりを出し、飲み物のオーダーをする。
美里は夕方になればバーでの仕事があるので、ジュースにした。
「僕らもカジュアルな値段のブランドを作ったらいいのかなぁ」
「あいつはCEPもあるから、俺たちの方が後手に出ている感はあるよな」
先ほどから双子が意識しているのは、御劔佑だろう。
「ハイブランドのデザイナーっていうだけでも、十分凄いじゃないですか」
「でもなぁ。あいつにできて僕らにできてないって……」
ブツブツと言う双子は、佑よりも年上なのにどこか子供っぽい。
「思うんですけど、同じジャンルで手を広げようとしたら、全部遅れての行動になりません? それならお二人のブランド力を生かして、別の分野で戦ったほうがいい気がします」
思った事を言うと、双子は目をまん丸にしたあと顔を見合わせた。
そして考えたあと、「それもそうだな……」とブツブツと言い始める。
「そもそも、どうして従弟なのに御劔社長をライバル視しているんです?」
美里の質問に、双子はまた顔を見合わせ、「だって……ねぇ」と決まり悪そうに言葉を濁す。
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