1,004 / 1,549
第十六部・クリスマス 編
コンビニショッピング
しおりを挟む
「俺はホットコーヒーにしようかな。香澄、おやつは?」
「え? うーん……。食べちゃう?」
たっぷりカロリーを取ったあとなので、罪悪感がある。
「せっかくのドライブデートだから、食べよう。俺も一緒に食べるよ」
「ん。じゃあ、コンビニスイーツ」
「分かった」
こうやって佑とコンビニで買い物をするのも、新鮮で堪らない。
飲み物も食べ物も、佑がつれて行ってくれる店や、斎藤が作ってくれる物のほうが当たり前に美味しい。
けれどこの状況で食べられるなら、ご馳走よりもっと美味しく感じられると思った。
店内にいる女性は香澄を見て、羨ましそうな顔をしている。
我ながら性格が悪いと思いつつ、その視線が気持ち良かった。
「私、カフェラテ飲も。無糖のやつ。あ、でもロイヤルミルクティーもいいな。甘いのそんなに飲まないんだけど、これだけは何か別なんだよね」
「じゃあ、両方買おう」
香澄が迷っていたロイヤルミルクティーを、佑がポンとカゴに入れてしまう。
「スイーツ、何あるかな」
「俺はプリンにしようかな」
「ふふ。佑さん、生クリーム苦手だもんね。シンプルなプリンなら食べるって、知ってるよ」
ずっと一緒にいるからこそ、佑の食の嗜好にも気づける。
指摘すると、佑がポンポンと頭を撫でてきた。
「俺の苦手な物があると、香澄がさり気なく食べてくれるもんな。『分かってる』っていう感じが凄く嬉しいんだ」
「うう……。その分、私のお肉になっちゃうけどね」
弱ったふりをする香澄を見て、佑は小さく笑う。
香澄はスイーツの棚の前をうろうろし、誘惑と戦う。
「私、クレープにしよっと」
決めて商品をカゴに入れると、レジに向かった。
が、レジ前まできて魅惑的な物に気づいてしまった。
「……肉まん……」
ボソッと呟いた香澄に、佑が声もなく笑う。
「じゃあ、食べようか。何がいい?」
「ピザまんも捨てがたい」
「それじゃあ、二つ頼んで半分こずつしよう。それならいいだろ?」
「ん」
今度こそ大人しく列に並び、何とはなしに陳列している物を見る。
(本当はおでんも食べたいなんて思ったの、絶対にナイショだ)
食いしん坊なのはバレバレなのだが、一応乙女なので好きな人の前で食い意地が張っているところを見せたくない。
唇を引き結びキリッとした顔をしていたが、そんな香澄の耳に佑が囁いてきた。
「今度、夜食にコンビニおでん食べようか」
「!」
見透かされているのに気付き、香澄は目をまん丸にして赤面する。
佑はくっくっと笑いながら、レジにカゴを置いた。
コンビニを出てからまた車を走らせ、すぐに品川埠頭に着く。
「わぁ、レインボーブリッジ」
目の前に煌びやかで大きな橋があり、香澄は思わず笑顔になる。
「やっぱりドラマにも出る東京の橋って、格好いいね」
「俺も、たまに一人になりたい時は見に来てるかな」
佑がドリンクホルダーからホットコーヒーのカップを手に取り、一口飲む。
香澄もカフェオレにストローを挿し、ちゅるる、と吸う。
「肉まん、温かいうちに食べようか」
「うん」
佑はお手拭きで手を拭いたあと、「熱いな」と呟きながら肉まんを半分にする。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
車内にはうるさくない程度にムードのあるジャズが掛かっている。
(本当にロマンチックだなぁ。こういうデート、頻繁にできたらいいのに)
ついそう思ってしまい、佑という理想の男性が側にいてくれるのに、高望みしすぎだと小さく首を振る。
「おいし」
はむ、と肉まんに齧り付くと、おなじみの味がして表情が緩む。
「え? うーん……。食べちゃう?」
たっぷりカロリーを取ったあとなので、罪悪感がある。
「せっかくのドライブデートだから、食べよう。俺も一緒に食べるよ」
「ん。じゃあ、コンビニスイーツ」
「分かった」
こうやって佑とコンビニで買い物をするのも、新鮮で堪らない。
飲み物も食べ物も、佑がつれて行ってくれる店や、斎藤が作ってくれる物のほうが当たり前に美味しい。
けれどこの状況で食べられるなら、ご馳走よりもっと美味しく感じられると思った。
店内にいる女性は香澄を見て、羨ましそうな顔をしている。
我ながら性格が悪いと思いつつ、その視線が気持ち良かった。
「私、カフェラテ飲も。無糖のやつ。あ、でもロイヤルミルクティーもいいな。甘いのそんなに飲まないんだけど、これだけは何か別なんだよね」
「じゃあ、両方買おう」
香澄が迷っていたロイヤルミルクティーを、佑がポンとカゴに入れてしまう。
「スイーツ、何あるかな」
「俺はプリンにしようかな」
「ふふ。佑さん、生クリーム苦手だもんね。シンプルなプリンなら食べるって、知ってるよ」
ずっと一緒にいるからこそ、佑の食の嗜好にも気づける。
指摘すると、佑がポンポンと頭を撫でてきた。
「俺の苦手な物があると、香澄がさり気なく食べてくれるもんな。『分かってる』っていう感じが凄く嬉しいんだ」
「うう……。その分、私のお肉になっちゃうけどね」
弱ったふりをする香澄を見て、佑は小さく笑う。
香澄はスイーツの棚の前をうろうろし、誘惑と戦う。
「私、クレープにしよっと」
決めて商品をカゴに入れると、レジに向かった。
が、レジ前まできて魅惑的な物に気づいてしまった。
「……肉まん……」
ボソッと呟いた香澄に、佑が声もなく笑う。
「じゃあ、食べようか。何がいい?」
「ピザまんも捨てがたい」
「それじゃあ、二つ頼んで半分こずつしよう。それならいいだろ?」
「ん」
今度こそ大人しく列に並び、何とはなしに陳列している物を見る。
(本当はおでんも食べたいなんて思ったの、絶対にナイショだ)
食いしん坊なのはバレバレなのだが、一応乙女なので好きな人の前で食い意地が張っているところを見せたくない。
唇を引き結びキリッとした顔をしていたが、そんな香澄の耳に佑が囁いてきた。
「今度、夜食にコンビニおでん食べようか」
「!」
見透かされているのに気付き、香澄は目をまん丸にして赤面する。
佑はくっくっと笑いながら、レジにカゴを置いた。
コンビニを出てからまた車を走らせ、すぐに品川埠頭に着く。
「わぁ、レインボーブリッジ」
目の前に煌びやかで大きな橋があり、香澄は思わず笑顔になる。
「やっぱりドラマにも出る東京の橋って、格好いいね」
「俺も、たまに一人になりたい時は見に来てるかな」
佑がドリンクホルダーからホットコーヒーのカップを手に取り、一口飲む。
香澄もカフェオレにストローを挿し、ちゅるる、と吸う。
「肉まん、温かいうちに食べようか」
「うん」
佑はお手拭きで手を拭いたあと、「熱いな」と呟きながら肉まんを半分にする。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
車内にはうるさくない程度にムードのあるジャズが掛かっている。
(本当にロマンチックだなぁ。こういうデート、頻繁にできたらいいのに)
ついそう思ってしまい、佑という理想の男性が側にいてくれるのに、高望みしすぎだと小さく首を振る。
「おいし」
はむ、と肉まんに齧り付くと、おなじみの味がして表情が緩む。
23
お気に入りに追加
2,546
あなたにおすすめの小説
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる