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第十六部・クリスマス 編
お二人って喧嘩しないんですか?
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「今はほぼ使ってない。以前は残業した時の休憩に使ったり、そのまま泊まりこんでいた。〝一人ブラック企業〟と言われていた俺が、今は香澄と出会ってホワイト企業になってる。この部屋を使う事も激減したな」
「ふぅん……」
佑が長袖Tシャツを着たあと、香澄はウォークインクローゼットの中を覗き込む。
「その割には洋服が充実してるね」
「実際にここをメインにしていたのは、自社ビルができてすぐの頃だ。……あまり香澄に言いたくない、荒んでいた時期かな。女性は連れ込んでいないけど。……で、放っておくと仕事とプライベートのケジメがつかないから、白金台の家をメインに使っている」
隠さずに話してくれる佑に、愛しさを覚える。
「そっか。でも使ってないの勿体ないね? こんなに綺麗にしてるのに」
正直に話してくれたからこそ、香澄は昔の事を掘り返さない。
サラッと受け流すと、佑もホッとした顔つきになった。
「会社のすぐ下だから何かあった時に使えると思って、いつでも使えるようにはしている。社長室の奥に、直通のエレベーターがあるんだ。あまり多用すると、松井さんに怒られるけど」
「あはは」
笑った時、リビングの方から双子のどちらかの声がした。
「カスミー!? 食わないとなくなるよ?」
「あ、はーい!」
佑を呼ばないところが双子らしいと思いつつ、香澄は佑に「行こう」と微笑みかけ一緒にリビングに戻った。
「タスク、セルフドリンクね」
「分かってる」
リビングではテーブルを囲むようにコの字型のソファがある。
初め香澄は大型テレビの正面に、双子に挟まれて座っていた。
けれど今は佑と一緒に空いている場所に腰かけたのだが、すぐさまブーイングを食らった。
「なんだー。カスミそっちなの?」
「香澄はコンパニオンじゃない」
自分の取り皿を持って来た佑が、アロイスを冷たくあしらってピザに手を伸ばす。
「タスク? 僕のオゴリだよ?」
ピザを食べようとした佑に、クラウスが意地悪く笑う。
佑は面倒臭そうな顔をしてから、「クラウスさん、ごちそうさまです」とサラッと言ってピザを一口囓った。
「ちぇー。つまんないの。もっと嫌がると思ったのに」
「あはは、クラウスさんの中で佑さんは何歳設定なんですか」
ピザを食べている佑の代わりに、香澄が突っ込む。
「タスクはいつでも、ムスーッとして機嫌悪いのがデフォだもんな? クラ」
「そうそう!」
ケラケラと笑って、双子はお互いの取り皿に、お互いの好きなスパゲッティをよそう。
そして取り皿を交換して食べるので、香澄は「仲がいいなぁ……」と感心する。
「お二人って喧嘩しないんですか?」
香澄はペンネアラビアータのピリ辛さを味わいつつ尋ねる。
「えー? 前に言ったじゃん。ティーンの頃はすっごい仲悪かったって」
「そうそう。へたしたら顔合わせただけで殴り合いするぐらいに」
「聞きましたけど……」
アロイスは缶ビールをクーッと飲み、「んまいね!」と言って空き缶をテーブルに置く。
それから香澄に笑いかけた。
「ティーンの頃はお互いに『こいつだけには負けたくない』って思ってたけど、今は逆に『俺たち二人が最強』って思ってる。それがしっくりきて、二十歳超えてから人生楽しいよ」
「なるほど、双子とか年子とかいいですね」
「いつでもドイツおいで。僕たち二人の妹として可愛がってあげるから」
クラウスにパチンとウインクされた時、佑が隣で溜め息をつく。
「そのまま囲い込んで帰さないつもりだろ。口だけの冗談にしておけよ」
ピシッと突っ込んだあと、佑はジンジャーエールを飲み、「話は変わるけど」と三人を見る。
「ホテルは取ってあるんだな?」
念を押す佑を見て、双子がニヤァ……と笑う。
(あ、悪い顔してる)
香澄はカルボナーラを食べながら思い、チラッと佑を見る。
だが彼はカットされたステーキ肉を取り皿に取り、ピシャリと言い放つ。
「年末はうちに泊まらせると言ったが、今はまだ準備ができていない。予定日までうちには上がらせないから、そのつもりで」
「えぇー? ケチー!」
「ブーブー」
すぐにブーイングが始まり、佑は頭が痛いというようにギュッと目を閉じる。
「ふぅん……」
佑が長袖Tシャツを着たあと、香澄はウォークインクローゼットの中を覗き込む。
「その割には洋服が充実してるね」
「実際にここをメインにしていたのは、自社ビルができてすぐの頃だ。……あまり香澄に言いたくない、荒んでいた時期かな。女性は連れ込んでいないけど。……で、放っておくと仕事とプライベートのケジメがつかないから、白金台の家をメインに使っている」
隠さずに話してくれる佑に、愛しさを覚える。
「そっか。でも使ってないの勿体ないね? こんなに綺麗にしてるのに」
正直に話してくれたからこそ、香澄は昔の事を掘り返さない。
サラッと受け流すと、佑もホッとした顔つきになった。
「会社のすぐ下だから何かあった時に使えると思って、いつでも使えるようにはしている。社長室の奥に、直通のエレベーターがあるんだ。あまり多用すると、松井さんに怒られるけど」
「あはは」
笑った時、リビングの方から双子のどちらかの声がした。
「カスミー!? 食わないとなくなるよ?」
「あ、はーい!」
佑を呼ばないところが双子らしいと思いつつ、香澄は佑に「行こう」と微笑みかけ一緒にリビングに戻った。
「タスク、セルフドリンクね」
「分かってる」
リビングではテーブルを囲むようにコの字型のソファがある。
初め香澄は大型テレビの正面に、双子に挟まれて座っていた。
けれど今は佑と一緒に空いている場所に腰かけたのだが、すぐさまブーイングを食らった。
「なんだー。カスミそっちなの?」
「香澄はコンパニオンじゃない」
自分の取り皿を持って来た佑が、アロイスを冷たくあしらってピザに手を伸ばす。
「タスク? 僕のオゴリだよ?」
ピザを食べようとした佑に、クラウスが意地悪く笑う。
佑は面倒臭そうな顔をしてから、「クラウスさん、ごちそうさまです」とサラッと言ってピザを一口囓った。
「ちぇー。つまんないの。もっと嫌がると思ったのに」
「あはは、クラウスさんの中で佑さんは何歳設定なんですか」
ピザを食べている佑の代わりに、香澄が突っ込む。
「タスクはいつでも、ムスーッとして機嫌悪いのがデフォだもんな? クラ」
「そうそう!」
ケラケラと笑って、双子はお互いの取り皿に、お互いの好きなスパゲッティをよそう。
そして取り皿を交換して食べるので、香澄は「仲がいいなぁ……」と感心する。
「お二人って喧嘩しないんですか?」
香澄はペンネアラビアータのピリ辛さを味わいつつ尋ねる。
「えー? 前に言ったじゃん。ティーンの頃はすっごい仲悪かったって」
「そうそう。へたしたら顔合わせただけで殴り合いするぐらいに」
「聞きましたけど……」
アロイスは缶ビールをクーッと飲み、「んまいね!」と言って空き缶をテーブルに置く。
それから香澄に笑いかけた。
「ティーンの頃はお互いに『こいつだけには負けたくない』って思ってたけど、今は逆に『俺たち二人が最強』って思ってる。それがしっくりきて、二十歳超えてから人生楽しいよ」
「なるほど、双子とか年子とかいいですね」
「いつでもドイツおいで。僕たち二人の妹として可愛がってあげるから」
クラウスにパチンとウインクされた時、佑が隣で溜め息をつく。
「そのまま囲い込んで帰さないつもりだろ。口だけの冗談にしておけよ」
ピシッと突っ込んだあと、佑はジンジャーエールを飲み、「話は変わるけど」と三人を見る。
「ホテルは取ってあるんだな?」
念を押す佑を見て、双子がニヤァ……と笑う。
(あ、悪い顔してる)
香澄はカルボナーラを食べながら思い、チラッと佑を見る。
だが彼はカットされたステーキ肉を取り皿に取り、ピシャリと言い放つ。
「年末はうちに泊まらせると言ったが、今はまだ準備ができていない。予定日までうちには上がらせないから、そのつもりで」
「えぇー? ケチー!」
「ブーブー」
すぐにブーイングが始まり、佑は頭が痛いというようにギュッと目を閉じる。
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