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第十六部・クリスマス 編

オーダー

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「カスミは?」

「じゃ、じゃあカルボナーラで」

「OK。いいね。じゃあ、マティアスは?」

「アマトリチャーナ」

「お前、相変わらずベーシックなもん好きだよね。お、ビーフステーキもあるよ。俺たち三人は食うだろ? カスミは?」

「え? ちょっとなら」

「じゃあ、四人前頼もうか。カスミは好きなだけ食べなよ。残したら僕とアロが食べてあげる」

「は、はい」

 いつも双子のグイグイいくところに驚くが、決め事になると、クラウスが主導権を握ってポンポン決めていく。
 香澄は割と「何でもいいです」と言ってしまうので、これぐらい強引に決めてくれたほうが助かる。

「サラダも頼もう。野菜食わないとムッティに怒られる」

 クラウスがいきなり小学生のような事を言い、そのギャップに香澄は思わず悶える。

(可愛い!)

 口にすると彼らは調子に乗るし、佑も不機嫌になるので内緒だが、一人心の中で悶えていた。

「三種類あるけど……、面倒だから全部頼もうか」

「そーだね。あとカプレーゼとポテトも頼もう! これで終わりダス・エンデ!」

「クラ、飲み物は?」

「あ、そーだ。忘れてた! 僕ビール! 二缶は飲みたいな。あとワインもボトルで売ってるみたいだから、一本頼もうか。僕、スパークリングがいい」

「俺も適当にビール頼む。マティアスは?」

「俺もビールで構わない。ワインを頼むならそれも飲む。カスミは?」

「え……えっと。お酒飲んでていいのかな?」

 仕事を休んでしまっている事を思って言うと、双子が焦りだした。

「ダメ! カスミは酒ダメ! ソフトドリンクにしな?」

「あ、はい……。じゃあ……ノンアルコールのサングリアにします」

「もしお茶とか飲みたかったら、この部屋の冷蔵庫に新しく買った飲み物があるから、それを飲むといいよ」

 アロイスに言われ、香澄は「はい」と微笑む。

「あと、ドルチェは全部頼もう! 全部美味しそうだ」

「そんなに!? 食べられます? 食べ物を無駄にしたら駄目ですよ?」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ! 僕ら体デカい分、食べるから!」

「はぁ……」

「何なら、カスミにドルチェ『あーん』してあげるから」

 アロイスにウインクをされ、香澄は苦笑いする。

「あはは……。一人で食べられます」

「じゃあ、こんなもんでいいか。代表して僕がゴチソウしてあげる」

 まとめてしまうと、クラウスはウェブ注文をして電子決済する。

「待ち時間あるけど、まぁいいよね。そのうちタスクも来るだろうし、ピザパーティしよう」

 クラウスはスマホをポンと脇に置き、長い脚を組む。

「カスミ、頭痛は大丈夫?」

 アロイスに顔を覗き込まれ、香澄は微笑む。

「ちょっと鈍痛がする程度なので大丈夫です。ご飯モリモリ食べたら、お薬もらいますね」

「うん」

 ポンポンと頭を撫でられた時、纏めていた髪の毛が解かれていたのに気づいた。

「外で倒れてしまったとして、誰がここまで運んでくれたんでしょう?」

 質問すると、一瞬静かになる。

 そのあと、マティアスが口を開いた。

「俺だ。もともとTMタワーにくるつもりで、偶然あのコーヒーショップに入った。そうしたら香澄が寝ていて女性が困っていたから、身柄を引き受けた。あとは警備員に事情を話して、カイが来てこの部屋に通してくれた」

「そうなんですか……。すみません、お世話になりました」

 ペコリと頭を下げ、香澄は女性を思いだす。

「上野への道を訊かれていたので、乗り換えを教えようと思っていたのですが、あの女性にも迷惑かけちゃったな……」

 ぽつんと呟き溜め息をつくと、なぜだか双子とマティアスも溜め息をつく。

「カスミさぁ、あんまり人が良すぎるのも良くないと思うよ?」

 クラウスにポンポンポンポンと何回も頭を撫でられ、香澄は困惑する。

「人がいいって……。道を尋ねられたら、普通教えません? ブルーメンブラットヴィルでも街の人に親切にしてもらいましたし」

 言い返すつもりではないが、自分基準で言ってみる。
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