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第十六部・クリスマス 編
合流した双子
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「カスミを背負っていた男はヒスパニック。目はダークブラウンで黒髪ショート。髭を生やし、首元にタトゥが見えた。身長百八十後半。大柄で筋肉質。とっさに出てきたパンチから、利き手は右腕。ジーンズに黒のダウンジャケット。グレーのニット帽を被っていて黒のスニーカー。荷物はなし。もう一人の男はロシア系。ブルーグレーの目で金髪のベリーショート。もう一人の男と似たり寄ったりの体型。利き手は左。黒いズボンにモッズコート。左耳にゲージの大きいボディピアス。シルバーのリングだ。靴は暗い色のブーツだった気がする」
ほんの一瞬の間だったが、マティアスは犯人たちの特徴を記憶していた。
もともと彼は秘書として、エミリアを守らなければならない立場にあった。
兵役を務めていた経験もあり、現在も体を鍛える関係で様々な人と交流し、いざという時に役立つノウハウを学んでいる。
人物を瞬間的に記憶する訓練をし、車のナンバーなどもすぐ覚えられるようにしていた。
「……分かった」
返事をする佑もまた、今の説明を瞬時に脳に叩き込んだのだろう。
佑が多言語をたやすく習得するのも、ひとえに耳がいいのと記憶力がいいのがある。
「……香澄は怯えただろうか」
溜め息をついたあと、佑が溜め息混じりに呟く。
「分からない。ただ希望的観測だが、〝声を掛けてきたアメリカ女と話をしていたら、眠くなった〟と思っている可能性が高い。そうである事を祈ろう」
佑がイギリスの一件で相当疲弊したのを分かっているからこそ、マティアスは彼の気持ちを汲んで励ます。
「……そうだな。……分かっていると思うが、もし〝そう〟であった場合、香澄に余計な事を教えないでくれ。疲労やストレスで倒れてしまった事にすれば、彼女も分かってくれると思う。目覚めた時にアロクラがいれば、あのペースに巻き込んで考える暇も与えないだろう。……他力本願で情けないが」
そうやって彼がうやむやにしたいと願う気持ちは痛いほど分かる。
マティアスだって、これ以上香澄につらい思いをしてほしくない。
「そうしよう。アロクラが来たあと俺から説明しておく。そのあと、万が一何かあったらすぐに連絡する」
その時、室内にあった白い電話が鳴った。
「松井さんだな。午後一件目の用事をキャンセルしたんだ。そろそろ戻ってこいと言われても仕方ない」
そう呟き、佑は電話にでる。
電話の相手は秘書らしく、佑は疲れを滲ませた表情で応対している。
「従兄がこちらについたら、戻ります」
そう言って佑は電話を切った。
マティアスも、双子からメッセージを受け取っている。
「アロクラがビルに入ったようだ。間もなくここに着く」
「分かった」
「これから第三秘書が食料を買って持ってくるはずだから、それを好きに食べてくれ。第一に、目覚めた香澄のケアを頼む」
「ああ」
佑はティーカップの中身を飲み干し、キッチンに持っていく。
彼が流しでティーカップを洗っている時、部屋のチャイムが鳴った。
「出てくれ」
佑に言われる前にマティアスは立って、玄関に向かった。
ドアを開けると、モスグリーンとネイビーの色違いのモッズコートを着た双子が立っている。
「カスミは?」
開口一番クラウスが言い、マティアスは人差し指を口の前に立て「シィ」と静かにするよう促す。
何も言わずとも双子は玄関でEU46サイズの靴を脱ぎ、マティアスがだしたスリッパを履いて中に入る。
「タスク、久しぶり」
アロイスが挨拶をし、クラウスが「カスミは?」と尋ねる。
「奥のマスターベッドルームに寝かせている。自分から起きるまでは起こすなよ」
「分かってるって。顔見ていい? 寝ててもいいから、久しぶりに顔みたい」
そう言ってクラウスは佑の返事も待たず、スタスタと奥に向かう。
アロイスもそれに続き、自然と全員で香澄の所に行く事になった。
「あー……。やっぱり可愛い」
クラウスが身を屈め、香澄の寝顔を見て微笑む。
マティアスがさり気なく佑を見と、彼は面白くなさそうな顔で腕を組み、溜め息をついている。
「俺は仕事に戻らないといけない。何があったかはマティアスから聞いてくれ。あとは香澄を見守っていてほしい。俺は仕事に戻る。食い物がほしかったら、これから秘書が食材を持ってくるから、それを好きにしてくれ。宅配を注文しても構わない」
「りょーかい」
アロイスが頷き、佑にヒラヒラと手を振る。
ほんの一瞬の間だったが、マティアスは犯人たちの特徴を記憶していた。
もともと彼は秘書として、エミリアを守らなければならない立場にあった。
兵役を務めていた経験もあり、現在も体を鍛える関係で様々な人と交流し、いざという時に役立つノウハウを学んでいる。
人物を瞬間的に記憶する訓練をし、車のナンバーなどもすぐ覚えられるようにしていた。
「……分かった」
返事をする佑もまた、今の説明を瞬時に脳に叩き込んだのだろう。
佑が多言語をたやすく習得するのも、ひとえに耳がいいのと記憶力がいいのがある。
「……香澄は怯えただろうか」
溜め息をついたあと、佑が溜め息混じりに呟く。
「分からない。ただ希望的観測だが、〝声を掛けてきたアメリカ女と話をしていたら、眠くなった〟と思っている可能性が高い。そうである事を祈ろう」
佑がイギリスの一件で相当疲弊したのを分かっているからこそ、マティアスは彼の気持ちを汲んで励ます。
「……そうだな。……分かっていると思うが、もし〝そう〟であった場合、香澄に余計な事を教えないでくれ。疲労やストレスで倒れてしまった事にすれば、彼女も分かってくれると思う。目覚めた時にアロクラがいれば、あのペースに巻き込んで考える暇も与えないだろう。……他力本願で情けないが」
そうやって彼がうやむやにしたいと願う気持ちは痛いほど分かる。
マティアスだって、これ以上香澄につらい思いをしてほしくない。
「そうしよう。アロクラが来たあと俺から説明しておく。そのあと、万が一何かあったらすぐに連絡する」
その時、室内にあった白い電話が鳴った。
「松井さんだな。午後一件目の用事をキャンセルしたんだ。そろそろ戻ってこいと言われても仕方ない」
そう呟き、佑は電話にでる。
電話の相手は秘書らしく、佑は疲れを滲ませた表情で応対している。
「従兄がこちらについたら、戻ります」
そう言って佑は電話を切った。
マティアスも、双子からメッセージを受け取っている。
「アロクラがビルに入ったようだ。間もなくここに着く」
「分かった」
「これから第三秘書が食料を買って持ってくるはずだから、それを好きに食べてくれ。第一に、目覚めた香澄のケアを頼む」
「ああ」
佑はティーカップの中身を飲み干し、キッチンに持っていく。
彼が流しでティーカップを洗っている時、部屋のチャイムが鳴った。
「出てくれ」
佑に言われる前にマティアスは立って、玄関に向かった。
ドアを開けると、モスグリーンとネイビーの色違いのモッズコートを着た双子が立っている。
「カスミは?」
開口一番クラウスが言い、マティアスは人差し指を口の前に立て「シィ」と静かにするよう促す。
何も言わずとも双子は玄関でEU46サイズの靴を脱ぎ、マティアスがだしたスリッパを履いて中に入る。
「タスク、久しぶり」
アロイスが挨拶をし、クラウスが「カスミは?」と尋ねる。
「奥のマスターベッドルームに寝かせている。自分から起きるまでは起こすなよ」
「分かってるって。顔見ていい? 寝ててもいいから、久しぶりに顔みたい」
そう言ってクラウスは佑の返事も待たず、スタスタと奥に向かう。
アロイスもそれに続き、自然と全員で香澄の所に行く事になった。
「あー……。やっぱり可愛い」
クラウスが身を屈め、香澄の寝顔を見て微笑む。
マティアスがさり気なく佑を見と、彼は面白くなさそうな顔で腕を組み、溜め息をついている。
「俺は仕事に戻らないといけない。何があったかはマティアスから聞いてくれ。あとは香澄を見守っていてほしい。俺は仕事に戻る。食い物がほしかったら、これから秘書が食材を持ってくるから、それを好きにしてくれ。宅配を注文しても構わない」
「りょーかい」
アロイスが頷き、佑にヒラヒラと手を振る。
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