【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
989 / 1,559
第十六部・クリスマス 編

〝友人〟なら当たり前だ

しおりを挟む
 そしてマティアスはすぐにTMタワーに向かい、警備員に話し掛ける。

「タスク・ミツルギに会いたい」

「え? ……どういう……。社長はアポイントのない方にはお会いしませんが……」

 警備員は女性――香澄を抱いたマティアスを胡散臭そうに見て、困惑している。

「彼女はChief Everyの社員だ。タスク・ミツルギの秘書で婚約者のカスミ・アカマツだ。嘘だと思うなら直接連絡をすればいい」

 そう言われ、警備員は奥に引っ込んで内線から受付に電話をした。

「あー、もしもし。一階警備室ですが、アカマツカスミさんという秘書の方はいらっしゃいますか?」

 問いかけてすぐ明瞭な返事をもらったのか、警備員の顔つきが変わる。

「え、いえ。いま海外の方が気絶したアカマツさんを、お姫様抱っこしてるんですよ。それで社長に会わせろと言っていて……」

 受付から「お待ちください」と言われたのか、警備員は受話器を持ったまま不審げな目でマティアスを見てくる。

「えっ? 社長自らこちらにいらっしゃる!? は、はい! 待っています!」

 警備員は呆然としたまま、受話器を下ろした。

「……い、今、御劔社長がこちらまでいらっしゃるようです。一階は人気ひとけが多いので、オフィスエレベーターがあるほうでお待ちください」

 そう言って警備員はマティアスをビルの奥にいざなう。
 マティアスは香澄を抱いたまま、壁にもたれかかり佑を待つ。

(また怒鳴られても仕方ないが、カスミを助けた経緯を説明しよう。あと、アロクラを呼んでおかなければ。あの男たちが今も倒れていると思えないが、一応現場に戻って確認したほうがいい。コーヒーショップにも手がかりがあるかもしれない)

 エレベーターは数基あるが、佑は社長室から来るだろうから、目の前のエレベーターからは来ないかもしれない。

 香澄を見ると、無防備にくうくう眠っている。

(即効性の睡眠薬だろうな。即効性は持続時間は短いはずだ。別の場所にカスミを運ぶつもりだったなら、持続時間の長い物も混入した可能性がある)

 可能ならどこかに寝かせてあげたいが、このビルに香澄を寝かせるベッドはあるのだろうか。

 高層ビルの場合、他のフロアがマンションになっている事も多いが、佑なら自分の家を持っているだろうか。

 考えていると奥からカツカツと足音が聞こえ、スーツ姿の佑が姿を現した。

「香澄!!」

 彼はぐったりとした香澄の姿を見て、蒼白になって固まったあと、残る距離を走ってきた。

「マティアス! どういう事だ!」

 表情を険しくする佑を見て、マティアスは「やっぱりな」と思いつつ冷静に説明する。

「カスミが謎の男二人と女一人に、誘拐されかけていた。俺はコーヒーショップの前で、男がカスミを担いで出てきたところに遭遇した。恐らく中で女に声を掛けられ、薬の入ったコーヒーを飲まされたのだと思う」

〝薬〟という単語を聞いて、佑の唇が震える。

「男二人は撃退したが、女は逃がした。多分、今コーヒーショッに戻っても、奴らはいないと思う」

「そう……か……。…………礼を言う……」

 佑は両手を差しだし、マティアスから香澄を抱き受ける。

 香澄の無防備な寝顔を見て、佑は一瞬泣きだしそうな表情になり――、ぐっと堪えてマティアスを見た。

「お前がいなかったら、香澄は誘拐されていただろう。近場だと思って油断した俺の落ち度だ。改めて礼を言う」

「構わない。俺はカスミを一生かけて守ると誓った。〝友人〟なら当たり前だ」

 マティアスはいつもと変わらず冷静な口調で言う。
 佑は溜め息をつき、警備員を見る。

「知らせてくださってありがとうございます。この女性は、最重要人物として覚えておいてください」

 警備員は佑を前にして、蒼白になっていた。

「は、はい。申し訳ございません……」

「この女性は私の婚約者です。どうかこれからもしっかり警備をお願いします」

「はいっ」

 佑は直立不動になった警備員に会釈し、「来てくれ」とマティアスに顎をしゃくる。

 二人は一階のさらに奥に進み、エレベーターに乗る。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...