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第十五部・針山夫婦 編
第十五部・終章 十二月の夜更け
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「欠伸って、家族とか恋人とか、親密な関係じゃないとうつらないんだって」
「そうなんだ」
佑の豆知識を聞いてから、香澄は下着に手を伸ばす。
「穿かせたい」
「だめっ」
佑が下着を穿かせたがるが、香澄は怒って拒否する。
「あー……、香澄充できた。明日は朝から調子がいいな」
そんな事を言いながら佑も下着を穿く。
「佑さんの物の考え方とか基準って、絶対に変」
「いいだろう? それだけ香澄に夢中っていう事だよ」
そう言われると弱い。
香澄はモソモソとパンティを穿き、ベッドから下りてルームウェアを着ようとした。
その途端、膝から崩れ落ちてべしゃっと転んでしまった。
「香澄!?」
慌てた佑がすぐに助け起こしてくれる。
ベッドの下にはフカフカのラグマットがあるので、特にどこが痛い訳ではない。
ただ、下着一枚の姿で転んでしまったのは、とても恥ずかしかった。
「……だ、大丈夫……」
腰が抜けているのを失念して、立とうとしてしまったようだ。
「バスルームまで運んであげるよ」
そう言った佑がヒョイッと香澄を抱き上げ、バスルームに連れていく。
部屋のバスルームで佑に体を洗ってもらったあと、髪を洗ってバスタブに浸かった香澄が呟く。
「クリスマス、あと三週間ぐらいだね。そしたら麻衣に会える! アロイスさんとクラウスさんと、マティアスさんにも」
「俺も麻衣さんに会えるのが楽しみだよ。札幌ぶりだな」
「麻衣は……、ドイツ組の三人に対してどうかなぁ……。あの子、私の保護者っぽいところがあるから。一度北海道に戻った時、事情を全部話してすっごく怒ってくれた。……まぁ、皆で年越しするんだから、空気を悪くするような子でもないんだけど」
「あぁ……」
色々察したのか、佑が頷く。
「楽しい年末年始になったらいいね。私、蕎麦打ちしてみようかな? なんちゃって」
「はは。チャレンジしてみるといいよ」
「言ってみただけ! 私が作ったら、ボソボソで美味しくないのができちゃう。年越し蕎麦は美味しく頂かないと!」
「あいつら日本文化を理解しているようでしてないから、また『流し年越し蕎麦やりたい』とか言いださないといいけど……」
「前に言ってたね。節子さんがいらっしゃるから、結構知ってそうな感じがあるんだけど」
「祖父母が大好きで尊敬していても、言う事は半分流してるだろうな。親日家でも、文化の細かなところはそれほど分かっていないと思うよ。双子は目の前の楽しい事にすぐ夢中になるから、認識がちゃらんぽらんなんだ」
「目の前の楽しい事に夢中になるって……何か、動物的だね。お二人なら猫かな? 犬かな?」
「ハイエナだろ」
佑が素の声で言い、いっぽうでハイエナの独特な鳴き声を思いだした香澄はぶふっと噴き出した。
「さて、そろそろ出ようか。逆上せてないか?」
「うん……。あったまった」
言われて香澄は、少しボーッとしているかもしれないと自分の額に手を当てる。
「眠たくなってきちゃった」
「たっぷり愛させてくれてありがとう」
ようやく腰も立つようになったので、ひっくり返らないようにゆっくり立ち上がると、佑が頬にキスをしてくる。
「ん……もう」
香澄はそんな佑を軽く睨んでみせるふりをし、酷い事になった自分のベッドを思いだす。
「あぁ……シーツ替えないと」
「俺の責任だから、香澄がゆっくりしている間にシーツを替えとくよ。でも寝る時は俺の寝室にしよう」
「ん、ありがとう」
二人でバスルームを出ると、ジョン・アルクールの匂いに包まれる。
スキンケアをしていると、佑がボディケアをしてくれているのはいつもの事だ。
香澄がヘアクリームを髪につけ、ドライヤーをかけ始めた頃に佑は自分のケアをし始めた。
十二月最初の土曜日の夜は、そのようにして更けていった。
第十五部・完
「そうなんだ」
佑の豆知識を聞いてから、香澄は下着に手を伸ばす。
「穿かせたい」
「だめっ」
佑が下着を穿かせたがるが、香澄は怒って拒否する。
「あー……、香澄充できた。明日は朝から調子がいいな」
そんな事を言いながら佑も下着を穿く。
「佑さんの物の考え方とか基準って、絶対に変」
「いいだろう? それだけ香澄に夢中っていう事だよ」
そう言われると弱い。
香澄はモソモソとパンティを穿き、ベッドから下りてルームウェアを着ようとした。
その途端、膝から崩れ落ちてべしゃっと転んでしまった。
「香澄!?」
慌てた佑がすぐに助け起こしてくれる。
ベッドの下にはフカフカのラグマットがあるので、特にどこが痛い訳ではない。
ただ、下着一枚の姿で転んでしまったのは、とても恥ずかしかった。
「……だ、大丈夫……」
腰が抜けているのを失念して、立とうとしてしまったようだ。
「バスルームまで運んであげるよ」
そう言った佑がヒョイッと香澄を抱き上げ、バスルームに連れていく。
部屋のバスルームで佑に体を洗ってもらったあと、髪を洗ってバスタブに浸かった香澄が呟く。
「クリスマス、あと三週間ぐらいだね。そしたら麻衣に会える! アロイスさんとクラウスさんと、マティアスさんにも」
「俺も麻衣さんに会えるのが楽しみだよ。札幌ぶりだな」
「麻衣は……、ドイツ組の三人に対してどうかなぁ……。あの子、私の保護者っぽいところがあるから。一度北海道に戻った時、事情を全部話してすっごく怒ってくれた。……まぁ、皆で年越しするんだから、空気を悪くするような子でもないんだけど」
「あぁ……」
色々察したのか、佑が頷く。
「楽しい年末年始になったらいいね。私、蕎麦打ちしてみようかな? なんちゃって」
「はは。チャレンジしてみるといいよ」
「言ってみただけ! 私が作ったら、ボソボソで美味しくないのができちゃう。年越し蕎麦は美味しく頂かないと!」
「あいつら日本文化を理解しているようでしてないから、また『流し年越し蕎麦やりたい』とか言いださないといいけど……」
「前に言ってたね。節子さんがいらっしゃるから、結構知ってそうな感じがあるんだけど」
「祖父母が大好きで尊敬していても、言う事は半分流してるだろうな。親日家でも、文化の細かなところはそれほど分かっていないと思うよ。双子は目の前の楽しい事にすぐ夢中になるから、認識がちゃらんぽらんなんだ」
「目の前の楽しい事に夢中になるって……何か、動物的だね。お二人なら猫かな? 犬かな?」
「ハイエナだろ」
佑が素の声で言い、いっぽうでハイエナの独特な鳴き声を思いだした香澄はぶふっと噴き出した。
「さて、そろそろ出ようか。逆上せてないか?」
「うん……。あったまった」
言われて香澄は、少しボーッとしているかもしれないと自分の額に手を当てる。
「眠たくなってきちゃった」
「たっぷり愛させてくれてありがとう」
ようやく腰も立つようになったので、ひっくり返らないようにゆっくり立ち上がると、佑が頬にキスをしてくる。
「ん……もう」
香澄はそんな佑を軽く睨んでみせるふりをし、酷い事になった自分のベッドを思いだす。
「あぁ……シーツ替えないと」
「俺の責任だから、香澄がゆっくりしている間にシーツを替えとくよ。でも寝る時は俺の寝室にしよう」
「ん、ありがとう」
二人でバスルームを出ると、ジョン・アルクールの匂いに包まれる。
スキンケアをしていると、佑がボディケアをしてくれているのはいつもの事だ。
香澄がヘアクリームを髪につけ、ドライヤーをかけ始めた頃に佑は自分のケアをし始めた。
十二月最初の土曜日の夜は、そのようにして更けていった。
第十五部・完
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