967 / 1,544
第十五部・針山夫婦 編
私を連れてってもいいお店なの?
しおりを挟む
「も、もぉ……」
それだけでは済まず、佑は香澄のルームウェアの裾を捲り上げると、お腹に唇をつけてブルルルルルッと息を吹きかけてきた。
「もぉっ! あはははは!!」
香澄は両手でトントンと佑の肩を叩き、身をよじらせる。
佑は香澄の上にまた覆い被さり、今度はきちんと丁寧なキスをしてきた。
「……ん…………」
優しく唇を押しつけられ、チュッと小さな音をたてて唇が離れる。
目の前では佑が愛しげに微笑んでいて、香澄も思わず笑い返す。
「……あのね、私の仲良し、麻衣の他は二人だよ。高校生の時、四人グループだったの」
「それぐらいなら、全然余裕だよ」
「一人がちょっとミーハーなの。悪い子じゃないけど、佑さんに色々聞くかもしれない。芸能人とかが好きな子だから」
「当たり障りのない事ならいいよ。プライベートや守秘義務に関わる事は、ちゃんとお断りするから大丈夫だ」
「ん……。ありがと」
お礼と一緒にチュッと佑の頬にキスをし、香澄はピトリと彼の体に体をつける。
「香澄は俺と会う前、友達とどういう所で食事をしてたんだ?」
「んー……。メンバーによるかな。麻衣と二人だったら、色んな所に行ってた。残る二人のうち、女子力の高い子の意見が通ると、お洒落なダイニングバーとか行ってたかな。もう一人の子はサバサバしてるんだけど、その子の意見が通ると焼き鳥屋さんとか、日本酒がたくさんある居酒屋とか」
香澄は友人との楽しい時間を思いだし、笑顔になる。
「……そういえば、しばらく焼き鳥食べてないな。香澄は何の串が好き?」
尋ねられ、すぐに美味しい焼き鳥を想像して食欲が湧く。
そして真剣な表情で答えた。
「やっぱり王道の豚串と鶏かな? 塩もタレも好きだけど、ブタ串は塩がいいな。鶏はどっちも好き。あー、でも雛皮や軟骨は苦手なの。私、基本的に好き嫌いはないけど、母が焼き肉の内臓系を食べない人で馴染みがないの。だから焼き肉とかも、部位をあまり知らないかな」
「じゃあ、レバー、モツ、タンとかは?」
興味を持った佑が尋ねてくる。
「タンは大好き! 焼き肉も好きだし、シチューとかも。でもレバーは苦手かな。牛モツ煮込みは、居酒屋で食べたら大丈夫だった。牛すじも大丈夫だったよ」
いつの間にか、いちゃいちゃから食べ物の話題に移ってしまった。
「そう言えば、香澄とそういう店に行った事がなかったっけ」
「そうだね。いつもお洒落なお店が多い気がする」
「……見栄を張りたいから、そっちを優先してしまうかな」
佑は反省したように呟き、また香澄の額にキスをしてから尋ねてくる。
「やっぱりカジュアルな店が好きか? ラーメンとか」
「うん、好き」
「俺も好きだ」
確認し合ってから、佑は天井を見上げて何かを考える。
「……そうか、個室の店があったな」
「私を連れてってもいいお店なの?」
佑が希望を叶えようとしてくれているのを察したが、少し不安になってしまう。
「どういう意味だ?」
「だって連れて行く人によって、お店を使い分けてるでしょ?」
そこまで言うと、佑にガプッと鼻を噛まれて「ふがっ」とくぐもった悲鳴を漏らした。
「香澄は俺の〝特別〟だろう? 香澄を連れていけない店があると思うか?」
「い……いや……、その……」
まだ頑張っていると、佑が説明する。
「確かに友達用の店はあるけど、香澄を連れて行っても問題ないよ。飯が美味くて個室なら、香澄を連れていかない訳がないだろ?」
「う……うん」
ぎこちなく頷くと、佑が気遣った目をしてくる。
「木場さんの店で聞いた事が引っかかってたか?」
「……ちょっとだけ」
「気にさせてごめん。過去に女性と行った店は、もう行かないようにしてるから安心して」
「でも、お店としてはまた来てほしいんじゃないの?」
飲食店で働いていた身としては、客にどんな事情があるにせよ、来てくれたら大歓迎だ。
高級店なら尚更、佑のような太客を失ったのはつらかっただろう。
「店は何も悪くない。……けど、けじめかな。自惚れかもしれないけど、女性はまた俺に会えると思って同じ店に行くかもしれない。俺に未練がなくても、店を気に入って別の人と行っているかもしれない。それに出くわしたら気まずいし、避けたい」
「そっか……」
佑の気持ちを知り、納得する。
それだけでは済まず、佑は香澄のルームウェアの裾を捲り上げると、お腹に唇をつけてブルルルルルッと息を吹きかけてきた。
「もぉっ! あはははは!!」
香澄は両手でトントンと佑の肩を叩き、身をよじらせる。
佑は香澄の上にまた覆い被さり、今度はきちんと丁寧なキスをしてきた。
「……ん…………」
優しく唇を押しつけられ、チュッと小さな音をたてて唇が離れる。
目の前では佑が愛しげに微笑んでいて、香澄も思わず笑い返す。
「……あのね、私の仲良し、麻衣の他は二人だよ。高校生の時、四人グループだったの」
「それぐらいなら、全然余裕だよ」
「一人がちょっとミーハーなの。悪い子じゃないけど、佑さんに色々聞くかもしれない。芸能人とかが好きな子だから」
「当たり障りのない事ならいいよ。プライベートや守秘義務に関わる事は、ちゃんとお断りするから大丈夫だ」
「ん……。ありがと」
お礼と一緒にチュッと佑の頬にキスをし、香澄はピトリと彼の体に体をつける。
「香澄は俺と会う前、友達とどういう所で食事をしてたんだ?」
「んー……。メンバーによるかな。麻衣と二人だったら、色んな所に行ってた。残る二人のうち、女子力の高い子の意見が通ると、お洒落なダイニングバーとか行ってたかな。もう一人の子はサバサバしてるんだけど、その子の意見が通ると焼き鳥屋さんとか、日本酒がたくさんある居酒屋とか」
香澄は友人との楽しい時間を思いだし、笑顔になる。
「……そういえば、しばらく焼き鳥食べてないな。香澄は何の串が好き?」
尋ねられ、すぐに美味しい焼き鳥を想像して食欲が湧く。
そして真剣な表情で答えた。
「やっぱり王道の豚串と鶏かな? 塩もタレも好きだけど、ブタ串は塩がいいな。鶏はどっちも好き。あー、でも雛皮や軟骨は苦手なの。私、基本的に好き嫌いはないけど、母が焼き肉の内臓系を食べない人で馴染みがないの。だから焼き肉とかも、部位をあまり知らないかな」
「じゃあ、レバー、モツ、タンとかは?」
興味を持った佑が尋ねてくる。
「タンは大好き! 焼き肉も好きだし、シチューとかも。でもレバーは苦手かな。牛モツ煮込みは、居酒屋で食べたら大丈夫だった。牛すじも大丈夫だったよ」
いつの間にか、いちゃいちゃから食べ物の話題に移ってしまった。
「そう言えば、香澄とそういう店に行った事がなかったっけ」
「そうだね。いつもお洒落なお店が多い気がする」
「……見栄を張りたいから、そっちを優先してしまうかな」
佑は反省したように呟き、また香澄の額にキスをしてから尋ねてくる。
「やっぱりカジュアルな店が好きか? ラーメンとか」
「うん、好き」
「俺も好きだ」
確認し合ってから、佑は天井を見上げて何かを考える。
「……そうか、個室の店があったな」
「私を連れてってもいいお店なの?」
佑が希望を叶えようとしてくれているのを察したが、少し不安になってしまう。
「どういう意味だ?」
「だって連れて行く人によって、お店を使い分けてるでしょ?」
そこまで言うと、佑にガプッと鼻を噛まれて「ふがっ」とくぐもった悲鳴を漏らした。
「香澄は俺の〝特別〟だろう? 香澄を連れていけない店があると思うか?」
「い……いや……、その……」
まだ頑張っていると、佑が説明する。
「確かに友達用の店はあるけど、香澄を連れて行っても問題ないよ。飯が美味くて個室なら、香澄を連れていかない訳がないだろ?」
「う……うん」
ぎこちなく頷くと、佑が気遣った目をしてくる。
「木場さんの店で聞いた事が引っかかってたか?」
「……ちょっとだけ」
「気にさせてごめん。過去に女性と行った店は、もう行かないようにしてるから安心して」
「でも、お店としてはまた来てほしいんじゃないの?」
飲食店で働いていた身としては、客にどんな事情があるにせよ、来てくれたら大歓迎だ。
高級店なら尚更、佑のような太客を失ったのはつらかっただろう。
「店は何も悪くない。……けど、けじめかな。自惚れかもしれないけど、女性はまた俺に会えると思って同じ店に行くかもしれない。俺に未練がなくても、店を気に入って別の人と行っているかもしれない。それに出くわしたら気まずいし、避けたい」
「そっか……」
佑の気持ちを知り、納得する。
22
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる