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第十五部・針山夫婦 編
私を連れてってもいいお店なの?
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「も、もぉ……」
それだけでは済まず、佑は香澄のルームウェアの裾を捲り上げると、お腹に唇をつけてブルルルルルッと息を吹きかけてきた。
「もぉっ! あはははは!!」
香澄は両手でトントンと佑の肩を叩き、身をよじらせる。
佑は香澄の上にまた覆い被さり、今度はきちんと丁寧なキスをしてきた。
「……ん…………」
優しく唇を押しつけられ、チュッと小さな音をたてて唇が離れる。
目の前では佑が愛しげに微笑んでいて、香澄も思わず笑い返す。
「……あのね、私の仲良し、麻衣の他は二人だよ。高校生の時、四人グループだったの」
「それぐらいなら、全然余裕だよ」
「一人がちょっとミーハーなの。悪い子じゃないけど、佑さんに色々聞くかもしれない。芸能人とかが好きな子だから」
「当たり障りのない事ならいいよ。プライベートや守秘義務に関わる事は、ちゃんとお断りするから大丈夫だ」
「ん……。ありがと」
お礼と一緒にチュッと佑の頬にキスをし、香澄はピトリと彼の体に体をつける。
「香澄は俺と会う前、友達とどういう所で食事をしてたんだ?」
「んー……。メンバーによるかな。麻衣と二人だったら、色んな所に行ってた。残る二人のうち、女子力の高い子の意見が通ると、お洒落なダイニングバーとか行ってたかな。もう一人の子はサバサバしてるんだけど、その子の意見が通ると焼き鳥屋さんとか、日本酒がたくさんある居酒屋とか」
香澄は友人との楽しい時間を思いだし、笑顔になる。
「……そういえば、しばらく焼き鳥食べてないな。香澄は何の串が好き?」
尋ねられ、すぐに美味しい焼き鳥を想像して食欲が湧く。
そして真剣な表情で答えた。
「やっぱり王道の豚串と鶏かな? 塩もタレも好きだけど、ブタ串は塩がいいな。鶏はどっちも好き。あー、でも雛皮や軟骨は苦手なの。私、基本的に好き嫌いはないけど、母が焼き肉の内臓系を食べない人で馴染みがないの。だから焼き肉とかも、部位をあまり知らないかな」
「じゃあ、レバー、モツ、タンとかは?」
興味を持った佑が尋ねてくる。
「タンは大好き! 焼き肉も好きだし、シチューとかも。でもレバーは苦手かな。牛モツ煮込みは、居酒屋で食べたら大丈夫だった。牛すじも大丈夫だったよ」
いつの間にか、いちゃいちゃから食べ物の話題に移ってしまった。
「そう言えば、香澄とそういう店に行った事がなかったっけ」
「そうだね。いつもお洒落なお店が多い気がする」
「……見栄を張りたいから、そっちを優先してしまうかな」
佑は反省したように呟き、また香澄の額にキスをしてから尋ねてくる。
「やっぱりカジュアルな店が好きか? ラーメンとか」
「うん、好き」
「俺も好きだ」
確認し合ってから、佑は天井を見上げて何かを考える。
「……そうか、個室の店があったな」
「私を連れてってもいいお店なの?」
佑が希望を叶えようとしてくれているのを察したが、少し不安になってしまう。
「どういう意味だ?」
「だって連れて行く人によって、お店を使い分けてるでしょ?」
そこまで言うと、佑にガプッと鼻を噛まれて「ふがっ」とくぐもった悲鳴を漏らした。
「香澄は俺の〝特別〟だろう? 香澄を連れていけない店があると思うか?」
「い……いや……、その……」
まだ頑張っていると、佑が説明する。
「確かに友達用の店はあるけど、香澄を連れて行っても問題ないよ。飯が美味くて個室なら、香澄を連れていかない訳がないだろ?」
「う……うん」
ぎこちなく頷くと、佑が気遣った目をしてくる。
「木場さんの店で聞いた事が引っかかってたか?」
「……ちょっとだけ」
「気にさせてごめん。過去に女性と行った店は、もう行かないようにしてるから安心して」
「でも、お店としてはまた来てほしいんじゃないの?」
飲食店で働いていた身としては、客にどんな事情があるにせよ、来てくれたら大歓迎だ。
高級店なら尚更、佑のような太客を失ったのはつらかっただろう。
「店は何も悪くない。……けど、けじめかな。自惚れかもしれないけど、女性はまた俺に会えると思って同じ店に行くかもしれない。俺に未練がなくても、店を気に入って別の人と行っているかもしれない。それに出くわしたら気まずいし、避けたい」
「そっか……」
佑の気持ちを知り、納得する。
それだけでは済まず、佑は香澄のルームウェアの裾を捲り上げると、お腹に唇をつけてブルルルルルッと息を吹きかけてきた。
「もぉっ! あはははは!!」
香澄は両手でトントンと佑の肩を叩き、身をよじらせる。
佑は香澄の上にまた覆い被さり、今度はきちんと丁寧なキスをしてきた。
「……ん…………」
優しく唇を押しつけられ、チュッと小さな音をたてて唇が離れる。
目の前では佑が愛しげに微笑んでいて、香澄も思わず笑い返す。
「……あのね、私の仲良し、麻衣の他は二人だよ。高校生の時、四人グループだったの」
「それぐらいなら、全然余裕だよ」
「一人がちょっとミーハーなの。悪い子じゃないけど、佑さんに色々聞くかもしれない。芸能人とかが好きな子だから」
「当たり障りのない事ならいいよ。プライベートや守秘義務に関わる事は、ちゃんとお断りするから大丈夫だ」
「ん……。ありがと」
お礼と一緒にチュッと佑の頬にキスをし、香澄はピトリと彼の体に体をつける。
「香澄は俺と会う前、友達とどういう所で食事をしてたんだ?」
「んー……。メンバーによるかな。麻衣と二人だったら、色んな所に行ってた。残る二人のうち、女子力の高い子の意見が通ると、お洒落なダイニングバーとか行ってたかな。もう一人の子はサバサバしてるんだけど、その子の意見が通ると焼き鳥屋さんとか、日本酒がたくさんある居酒屋とか」
香澄は友人との楽しい時間を思いだし、笑顔になる。
「……そういえば、しばらく焼き鳥食べてないな。香澄は何の串が好き?」
尋ねられ、すぐに美味しい焼き鳥を想像して食欲が湧く。
そして真剣な表情で答えた。
「やっぱり王道の豚串と鶏かな? 塩もタレも好きだけど、ブタ串は塩がいいな。鶏はどっちも好き。あー、でも雛皮や軟骨は苦手なの。私、基本的に好き嫌いはないけど、母が焼き肉の内臓系を食べない人で馴染みがないの。だから焼き肉とかも、部位をあまり知らないかな」
「じゃあ、レバー、モツ、タンとかは?」
興味を持った佑が尋ねてくる。
「タンは大好き! 焼き肉も好きだし、シチューとかも。でもレバーは苦手かな。牛モツ煮込みは、居酒屋で食べたら大丈夫だった。牛すじも大丈夫だったよ」
いつの間にか、いちゃいちゃから食べ物の話題に移ってしまった。
「そう言えば、香澄とそういう店に行った事がなかったっけ」
「そうだね。いつもお洒落なお店が多い気がする」
「……見栄を張りたいから、そっちを優先してしまうかな」
佑は反省したように呟き、また香澄の額にキスをしてから尋ねてくる。
「やっぱりカジュアルな店が好きか? ラーメンとか」
「うん、好き」
「俺も好きだ」
確認し合ってから、佑は天井を見上げて何かを考える。
「……そうか、個室の店があったな」
「私を連れてってもいいお店なの?」
佑が希望を叶えようとしてくれているのを察したが、少し不安になってしまう。
「どういう意味だ?」
「だって連れて行く人によって、お店を使い分けてるでしょ?」
そこまで言うと、佑にガプッと鼻を噛まれて「ふがっ」とくぐもった悲鳴を漏らした。
「香澄は俺の〝特別〟だろう? 香澄を連れていけない店があると思うか?」
「い……いや……、その……」
まだ頑張っていると、佑が説明する。
「確かに友達用の店はあるけど、香澄を連れて行っても問題ないよ。飯が美味くて個室なら、香澄を連れていかない訳がないだろ?」
「う……うん」
ぎこちなく頷くと、佑が気遣った目をしてくる。
「木場さんの店で聞いた事が引っかかってたか?」
「……ちょっとだけ」
「気にさせてごめん。過去に女性と行った店は、もう行かないようにしてるから安心して」
「でも、お店としてはまた来てほしいんじゃないの?」
飲食店で働いていた身としては、客にどんな事情があるにせよ、来てくれたら大歓迎だ。
高級店なら尚更、佑のような太客を失ったのはつらかっただろう。
「店は何も悪くない。……けど、けじめかな。自惚れかもしれないけど、女性はまた俺に会えると思って同じ店に行くかもしれない。俺に未練がなくても、店を気に入って別の人と行っているかもしれない。それに出くわしたら気まずいし、避けたい」
「そっか……」
佑の気持ちを知り、納得する。
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