【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
954 / 1,559
第十五部・針山夫婦 編

針山美鈴

しおりを挟む
 そして歩きながら佑に言う。

「運転手には帰ってもらっといて。帰りはうちの運転手に送らせるから」

「じゃあ、うちの車は一旦帰しておく」

 佑は待機している小金井にジェスチャーを送り、一度帰るよう指示した。

 針山邸はザ・豪邸という感じの白っぽい大きな邸宅で、ヨーロッパの屋敷を思わせる。

 玄関前の階段を上って両開きのドアから中に入ると、エレガントな内装が二人を迎えた。

 中にはスラリとした美女が立っていて、佑と香澄に笑いかけてきた。

「こんばんは! あなたが香澄ちゃん? うわぁ! 可愛い! ちょっとハグさせて?」

 ワンレングスのロングヘアを緩く巻いた彼女は、一七〇センチメートル近くありそうな長身だ。
 ローゲージのニットにスキニーを穿いたシンプルな格好だが、逆にスタイルの良さが際立つ。

 派手めの顔立ちの美人で、第一印象は芸能人かモデルか……という感じだ。

「初めまして、赤松香澄です」

 ペコリと下げた頭が戻りきらないうちに、香澄は彼女にガシッと抱き締められていた。
 そんな彼女を見て、佑が呆れたように言う。

「美鈴さん、最初からグイグイくるな」

「やだわ。最初からいい印象を植え付けるのが大切なのよ」

 佑の言葉に彼女――美鈴が言い返す。

 親しげな様子を見て、二人の仲がいいのを察した香澄は嬉しくなった。

「いやぁ~……可愛いわね? というか、素材がいい。お肌ツルツルじゃない。佑くん、よくこんな純朴そうな子を騙して、札幌から連れて来たわね? いやぁ、参った参った」

「人聞きの悪い事いうのやめてくれ」

 佑にグイッと肩を引かれ、香澄は美鈴から引き離される。

「まぁ、話は中でしよーや。玄関さみーわ」

 出雲はうぇっぷし、と特徴的なくしゃみをして、先にリビングに向かう。

「それもそうね。いらっしゃい、香澄ちゃん」

「お邪魔します」

「お邪魔します……」

 二人は靴を脱ぎ、揃えられていたスリッパに足を入れる。
 コート類はハンガーに掛け、玄関のフックに掛けさせてもらった。

 天井を見上げると、吹き抜けにはシャンデリアが下がっている。

(シャンデリア、お金持ちのお屋敷には当たり前にあるんだな)

 木製の隠しドアの奥は、きっとシューズクローゼットになっているのだろう。

「香澄ちゃん、こっち」

 美鈴に手を引かれてリビングダイニングに入ると、思わず「うわぁ……」と感嘆の声が漏れた。

 走れるのではないだろうか、というぐらい広いリビングダイニングは、ゴージャスだがとても居心地がよさそうだ。

 七十インチはありそうな巨大液晶テレビがあるのは、御劔邸と変わらない。

 ソファセットは少し変わっていて、床から一段下がった場所にラウンドソファの形状になっていた。
 中央には小さめのテーブルがあり、円形のソファが囲んでいる。

 ポーッとソファを見ていると、横で美鈴が快活に笑う。

「あのソファ、居心地良さそうでしょ。特注なの。リビングって家族が一番長く過ごす場所だし、皆でゆっくりできる場所にしたいって思ったのよね。出雲とああでもない、こうでもないって言い合って、最終形態があれよ!」

 美鈴は自慢げに言い、胸を張る。

「素敵です……!」

 さらに、リビングにはバイオエタノール暖炉もあり、全体的にモダンながらセンスが良く、憧れの豪邸という感じだ。

 奥の部屋にはグランドピアノがあるのが分かり、つい興味を示してしまう。

「ピアノ、気になる? そう言えばクラシックが好きな子だっけ」

「あ、いえ! 素敵だなと思っただけで……」

 ジロジロ見て失礼ではないか心配したが、美鈴は特に何も気にせず話を続ける。

「私、ピアノやってたのよね。最近は暇つぶしとかストレス発散にしか弾かないんだけど、派手な曲を思いっきり弾くと爽快だわぁ」

「分かります。ショパンのポロネーズとか好きな曲に入り込んで弾くと、スカッとします」

「うそ! 私もポロネーズ好き! 何番?」

 話が合った美鈴が喜び、マニアックな話題になる。

「うーん、王道で六番も好きですし、二番とか五番も好きなんです」

「分かるー! あと私、一番も割と好きよ。あと『革命エチュード』を思いっきり弾くのも好き」

「それ! 私も大好きです!」

 嬉しくなって、香澄は笑顔になりコクコクと頷く。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...