【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十五部・針山夫婦 編

帰社

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「率直に申し上げます。私の秘書への無礼は、私への無礼と取ります。私の秘書へのスカウトや、連絡先を書いた名刺を渡すなどの行為は、二度としないで頂きたい。態度を改めない場合、ハナテレビさんとの仕事はすべて断らせて頂きます」

 佑はいつもと変わらない微笑を浮かべたまま、最後通告をする。

 真っ青になって冷や汗を浮かべた木島は、「申し訳ございませんでしたっ」と勢いよく頭を下げた。

「ですから、謝罪して頂きたいのは私の秘書にです」

 容赦のない言葉を聞き、木島は頭を上げず体の角度を変え、香澄に向かって再度頭を下げる。

「赤松様、先ほどは大変申し訳ございませんでした!」

 周囲の視線が自分に集まるのを感じ、香澄は居たたまれなくなる。

「いえ、ご理解頂けたならそれで十分です。どうか頭を上げてください」

 同意を求めて佑をチラリと見た瞬間、香澄はギクリと体を強張らせた。

 佑はビジネススマイルを浮かべたまま、頭を下げた木島を、虫けらでも見るような目で見下ろしている。
 温度のないその目は、木島が謝罪している姿を見ても、何も感じていないように思えた。

 なのに、香澄の視線に気づくと、その眼差しがフ……と、柔らかくなる。

「お気持ちは理解しました。以後気を付けてください。引き続きオファーを頂ければ、スケジュールを調整してお受けします。今日は今後の予定もありますので、これで失礼致します」

 そして佑は「赤松さん、行こう」と促して歩き始めた。

「は、はい」

 香澄は周りに向かってペコリと会釈をし、小走りに佑を追いかけた。

 スタジオから廊下に出るところで、騒ぎを見に来たのか、先ほどのヘアメイクとすれ違った。
 彼女は佑を未練がましい目で見送ったあと、香澄の事も視線で追い、悔しげに顔を歪めた。

「赤松さん、車は呼んである?」

「地下駐車場で待機してもらっていますので、これから連絡して暖気してもらいます」

 楽屋に戻って佑はメイク落としシートで顔を拭い、ファンデーションなどを簡単に落としてからコートを着る。

 香澄はコートに袖を通しながら、帰社できるのだと思って安堵する。

 廊下を歩きながらエレベーターホールに向かい、小金井に電話をかける。

「では宜しくお願いします」

 小金井との電話を切って頭を下げた香澄に、「はい」と佑が自動販売機で買ったホットコーンポタージュ缶を渡してきた。

「わ! と、ありがとうございます。好きなんです、これ」

 手の中で「あちち」と温まった缶を弄ぶと、佑は「知ってるよ」と微笑んで自分のブラックコーヒーを軽く振る。

 やがてエレベーターがフロアに着き、香澄は手でドアを押さえると「どうぞ」と佑を先に乗せた。
 他に乗る者がいないかチェックしてから、自分もゴンドラに乗り地下のボタンを押す。

 知らずと息をついた香澄は、コートのポケットに入っているコーンスープの温もりに微笑んだ。



**




「戻りました」

 本社の社長秘書室に入ると、松井と河野が「おかえりなさい」と言ってくれた。

「どうでしたか?」

 松井に尋ねられ、香澄は苦笑いをする。

「正直、疲れました。社長にも気を張りすぎだと言われました」

 あはは、と気が抜けたように笑うと、松井も微笑み返してくれる。

「明日からはしばらく本社でのデスクワーク中心で構いませんよ。最初に荒療治で外の仕事をして頂いて、仕事を思いだして頂くつもりだったんです」

「松井さん発案でしたか。てっきり河野さんの腰痛が原因かと思っていたんですが」

「私の腰痛は本当ですよ。これから帰りに整骨院に寄ります」

「あ、そ、そうですか……。それはお大事に」

 ペコリと頭を下げてから、佑に言われた事を思いだす。

「社長はこれから会食でしたっけ」

「そうですね。会食と言いましても真澄様とですので、ご友人との食事のようなものです」

 確かに、真澄は子会社の社長ではあるが、高校生時代からの親友でもある。
 仕事の話という名目で、友人同士の話もしているのだろう。

 佑からは帰社したら先に帰宅するようにと言われていたが、「先に帰ります」と言いにくい。
 けれどそれを見透かしたように、松井に言われた。

「社長から伺っていますので、赤松さんはこのまま車で退社してください」

「えっ? え……と」

 いつのまに佑から松井に連絡がいっていたのか分からず、香澄は面食らう。
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