【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
931 / 1,559
第十五部・針山夫婦 編

収録後

しおりを挟む
「〝香澄〟に手を出されたから、じゃない。他の秘書にされても俺は同じように注意する。俺はテレビ局にゲストとして招かれた。それに芸能人ではなく実業家だ。俺の秘書だってテレビ局の客だと捉えている」

 そう言われ、香澄はゆっくり理解してく。

「俺は部下を軽んじる相手とは仕事をしたくない。俺にテレビ出演を願う局は、他に幾らでもある。それにメディアの仕事がなくなっても、本業にはほぼ影響はないだろう。テレビに出ているのは『少しでも購買者の興味を引いけたら』と思っての事だ。それがなかったら、いつ身を引いてもいいと思っている。だから赤松さんは何も気にしなくていい」

 恐らく、あのディレクターは佑に注意を受けるだろう。

 そう思うと、気まずくて堪らない。

 唇を引き結び黙り込んだ香澄を見て、佑はフ……と笑った。

「赤松さん? 君はもう少し、こういう場面で『ざまみろ』と思うぐらいのタフさを身につけた方がいい。君の優しさは長所だ。けれどビジネスの場で、舐められたままだと損をするし、自分の人生も悪いものになっていく。無礼が度を超した時は、相手のためにもハッキリ伝えたほうがいい場合もある。それでなければ、ハナテレビはあのディレクターを野放しにしたままになってしまう。そうすれば他の出演者にも失礼な事をするかもしれないし、社としてもそのうち多方に謝る事になるだろう」

 確かに、と思い、香澄は小さく頷く。

「責任はすべて俺が取る。だから君は安心して俺の隣に立っていて」

「……はい」

 こういう時、佑はいつも正しい判断を下す。

 香澄が迷ってどうにもならなくなった時、彼は落ち着いた大人の物の見方で、理路整然とした説明をしてくれる。

 導いてくれる光を信じれば、きっと求める場所に行き着ける。

(信じよう)

 香澄はもう一度頷き、佑に微笑んでみせた。



**




『アナタ・イズム』の収録は無事に終わり、佑はスタッフに「お疲れ様です」を言われてスタジオを去ろうとする。

 その時、先ほどのディレクターが佑に挨拶をしてきた。

「御劔社長、お疲れ様でした」

木島きじまさん、でしたっけ。今回はありがとうございました」

 佑は軽く会釈をし、いつもと変わらない微笑を浮かべ木島の言葉を待つ。

「いやですねぇ。それほど時間を挟まずお会いしたじゃないですか。名前覚えられていないなんて、ショックです」

 木島はおもねりながら、ニコニコ笑う。
 香澄は側に立ちながら、何とも言えない気持ちで彼を見た。

(誰かに似てる)

 思いだしたのは、学生時代、クラスの目立つグループに属していた、お笑い担当の子のセリフだった。

 お笑い担当と言っても、その子が面白い事を言う訳ではない。
 他の女子からいじられ、「やだやめてよ」と言いながら、おどけて笑いを誘うのだ。

 そうしなければ、彼女はそのグループにいられない。

 処世術として、その子は自ら笑いをとっていたのだ。
 本当は嫌だったかもしれないのに、嫌だと言えない空気があったのは、香澄でも分かる。

(テレビ業界って自分をネタにしないと生きていけないのかな。いじられても、『ひどーい』って言って笑うタフさがないと、有名になれないんだ。そういう〝テレビ気質〟はスタッフも同じなのかもしれない)

 香澄はテレビ業界に詳しくないが、何となくそう感じる。

 木島は佑に話しかけ、以前一緒にした仕事を話題にして一人で笑っていた。
 近い距離で大きな声で喋り、笑っているので、彼の唾が佑のスーツに飛んでいる。

(やめて……)

 佑を汚されている気がした香澄は、会話を終わらせ、早く帰りたいと思っていた。

「あの……」

 香澄が口を開いた時、佑がスッと手を挙げて木島を制した。

「それでですね……。ん? 何か?」

 上機嫌に話していた木島は、ようやく口を止める。

「余計な話はいいとして、うちの秘書への謝罪を求めます」

「えっ?」

 木島は一瞬何を言われたか分からない顔をし、香澄を見てサッと表情を強張らせる。
 そして苦々しい表情で睨んできた。

 だが二人の視線の間に、佑が手を入れて遮ってくる。

「申し上げておきますが、私はChief Everyの売り上げに繋がればと思ってメディアの仕事を受けています。ですがテレビ出演がなくても私の仕事は成立します。第一に私はタレントではありません。自社の仕事を優先し、テレビ局で無礼があれば『共に仕事をする相手ではない』と判断し、撤退してもいいと思っています」

 淡々と言う佑の言葉を聞いて、木島の顔色が悪くなる。

 佑は特に大きな声を出していない。

 だが周囲のスタッフやMC、タレントたちまでもが、振り向いて彼の言葉を聞いていた。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...