923 / 1,544
第十五部・針山夫婦 編
インタビュー
しおりを挟む
『ボンデイカフェ』は木の温もりを感じさせる内装で、テラス席もあってお洒落な店だ。
スケジュールではインタビューを三十分行ったあと、残り時間で撮影となっている。
「御劔社長、今回はご足労頂き、まことにありがとうございます。今回、インタビューをさせて頂きます花村と申します」
そう言ってルージュを塗った唇で魅力的に笑ったのは、仕事にも美にも手を抜かないという雰囲気の女性だ。
挨拶をして名刺交換をしたあと、花村は助手の若い女性と一緒に黒い革張りのソファに向かい、「どうぞ」と佑をいざなう。
「時間が限られていますので、さっそく参りましょう」
席に着いたあと、ウーロン茶が出てからインタビューが始まった。
「これからクリスマスを迎えますが、御劔社長は女性にクリスマスに着てほしい服はありますか?」
「そうですね。好きな女性なら、何を着ていても魅力的に映ると感じます。強いて言うなら、クリスマスを意識した落ち着いた赤やシックな黒など、大人っぽい色だグッとくるかもしれませんね」
「白はお嫌いですか?」
「清純でいいですね」
「逆に、御劔社長の勝負服、勝負アイテムはどのような物になりますか?」
花村の横で、アシスタントの女性は一生懸命メモをしている。
当然録音もされていて、あとから書き起こし作業が行われる。
だが、インタビュー当時の雰囲気や、表情などを書き留めるのも大切な作業だ。
インタビューと写真撮影のみOKを出しているので、動画を撮る事はNGになっている。
少し離れたところではカメラマンや照明助手がいて、受け答えをする佑を撮影している。
ソファを回り込んで横顔なども撮るため、香澄は死角になる場所に座っていた。
「やはりダークカラーのスーツだと無難にキマりますね。仕事でも勝負服でもスーツなので、チーフやカフス、タイピンなどの小物の変化を意識します」
佑は微笑んでから、ウーロン茶をストローで一口飲む。
「御劔社長はどのような女性に惹かれますか? 婚約者さんがいるのは承知の上ですが、読者さん向けにタイプの女性をお聞きしたいです」
佑は完全に仕事モードで答えた。
「そうですね。自分の意思を持ち、芯のある女性が好きです。あとは優しい……と言えば抽象的な言葉になりますが、包み込んでくれる雰囲気だと一緒にいて安らげるかもしれませんね」
「家庭料理で胃袋を掴まれたいですか?」
「基本的に好きな人と一緒に食事ができるなら、なんでも美味しく感じます。好きな人が手料理を作ってくれるなら、喜んで食べます。自分で作った料理も食べてもらいたいですね」
「好き嫌いはありませんか?」
「特にありません。様々な国で食事をしますが、やはり日本の食事が一番口に合います。外食より家庭料理のほうが好きですね」
「彼女にご飯を作ってもらうとしたら、何が食べたいですか?」
その質問を受け、佑は初めて考える素振りを見せる。
「うーん……。やっぱり和食でしょうか。煮物とか親子丼とかもいいですね」
「御劔社長は、高級料理がお好きかと思っていましたが、割と親しみやすい料理がお好きなんですね」
そう言われ、佑は苦笑する。
「世間からはそう言われていますが、普通に家庭料理で育ちましたからね。家ではやはり寛ぎたいですし、写真映えとかもいいので、ほっこり癒される料理が食べたいです」
「なるほど。世の女性の肩の荷が、少し下りたかもしれませんね」
「見栄えのいい料理は、SNSでいいねをもらえるでしょう。ですが人にどう見られるかを気にしすぎると、料理を作る事への意識が変わっていくのではと思います。レンチンでも冷凍食品でも、なんであろうが、自分や家族のために食事を作る事ができただけで凄い事だと思います。食は楽しみであり、体を作るものです。あまりややこしい感情は入れず、シンプルに楽しめたらなと感じています」
「仰る通りですね。クリスマスになると、皆さんここぞとばかりにSNS映えする写真を撮ると思いますが、御劔社長なら、彼女とどんなクリスマスデートをしたいですか?」
花村が質問を変え、佑は微笑んで応える。
「そうですね。クリスマス前に、ベートーヴェンの『第九』を聴きに行きたいなという気持ちはあります。毎年恒例のイベントにしているので、当日は、彼女が望むならレストランでの食事もいいですし、自宅で映画を見ながらゆっくり食事をするのもいいですね」
「映画はやはり恋愛ものですか?」
「映画全般が好きですが、ムードを高めるなら恋愛ものかもしれませんね。あとはクリスマスに因んだものとか。見ていてハッピーな気持ちになれる、働く女性ものも好きです」
佑の答えを聞き、花村は微笑む。
スケジュールではインタビューを三十分行ったあと、残り時間で撮影となっている。
「御劔社長、今回はご足労頂き、まことにありがとうございます。今回、インタビューをさせて頂きます花村と申します」
そう言ってルージュを塗った唇で魅力的に笑ったのは、仕事にも美にも手を抜かないという雰囲気の女性だ。
挨拶をして名刺交換をしたあと、花村は助手の若い女性と一緒に黒い革張りのソファに向かい、「どうぞ」と佑をいざなう。
「時間が限られていますので、さっそく参りましょう」
席に着いたあと、ウーロン茶が出てからインタビューが始まった。
「これからクリスマスを迎えますが、御劔社長は女性にクリスマスに着てほしい服はありますか?」
「そうですね。好きな女性なら、何を着ていても魅力的に映ると感じます。強いて言うなら、クリスマスを意識した落ち着いた赤やシックな黒など、大人っぽい色だグッとくるかもしれませんね」
「白はお嫌いですか?」
「清純でいいですね」
「逆に、御劔社長の勝負服、勝負アイテムはどのような物になりますか?」
花村の横で、アシスタントの女性は一生懸命メモをしている。
当然録音もされていて、あとから書き起こし作業が行われる。
だが、インタビュー当時の雰囲気や、表情などを書き留めるのも大切な作業だ。
インタビューと写真撮影のみOKを出しているので、動画を撮る事はNGになっている。
少し離れたところではカメラマンや照明助手がいて、受け答えをする佑を撮影している。
ソファを回り込んで横顔なども撮るため、香澄は死角になる場所に座っていた。
「やはりダークカラーのスーツだと無難にキマりますね。仕事でも勝負服でもスーツなので、チーフやカフス、タイピンなどの小物の変化を意識します」
佑は微笑んでから、ウーロン茶をストローで一口飲む。
「御劔社長はどのような女性に惹かれますか? 婚約者さんがいるのは承知の上ですが、読者さん向けにタイプの女性をお聞きしたいです」
佑は完全に仕事モードで答えた。
「そうですね。自分の意思を持ち、芯のある女性が好きです。あとは優しい……と言えば抽象的な言葉になりますが、包み込んでくれる雰囲気だと一緒にいて安らげるかもしれませんね」
「家庭料理で胃袋を掴まれたいですか?」
「基本的に好きな人と一緒に食事ができるなら、なんでも美味しく感じます。好きな人が手料理を作ってくれるなら、喜んで食べます。自分で作った料理も食べてもらいたいですね」
「好き嫌いはありませんか?」
「特にありません。様々な国で食事をしますが、やはり日本の食事が一番口に合います。外食より家庭料理のほうが好きですね」
「彼女にご飯を作ってもらうとしたら、何が食べたいですか?」
その質問を受け、佑は初めて考える素振りを見せる。
「うーん……。やっぱり和食でしょうか。煮物とか親子丼とかもいいですね」
「御劔社長は、高級料理がお好きかと思っていましたが、割と親しみやすい料理がお好きなんですね」
そう言われ、佑は苦笑する。
「世間からはそう言われていますが、普通に家庭料理で育ちましたからね。家ではやはり寛ぎたいですし、写真映えとかもいいので、ほっこり癒される料理が食べたいです」
「なるほど。世の女性の肩の荷が、少し下りたかもしれませんね」
「見栄えのいい料理は、SNSでいいねをもらえるでしょう。ですが人にどう見られるかを気にしすぎると、料理を作る事への意識が変わっていくのではと思います。レンチンでも冷凍食品でも、なんであろうが、自分や家族のために食事を作る事ができただけで凄い事だと思います。食は楽しみであり、体を作るものです。あまりややこしい感情は入れず、シンプルに楽しめたらなと感じています」
「仰る通りですね。クリスマスになると、皆さんここぞとばかりにSNS映えする写真を撮ると思いますが、御劔社長なら、彼女とどんなクリスマスデートをしたいですか?」
花村が質問を変え、佑は微笑んで応える。
「そうですね。クリスマス前に、ベートーヴェンの『第九』を聴きに行きたいなという気持ちはあります。毎年恒例のイベントにしているので、当日は、彼女が望むならレストランでの食事もいいですし、自宅で映画を見ながらゆっくり食事をするのもいいですね」
「映画はやはり恋愛ものですか?」
「映画全般が好きですが、ムードを高めるなら恋愛ものかもしれませんね。あとはクリスマスに因んだものとか。見ていてハッピーな気持ちになれる、働く女性ものも好きです」
佑の答えを聞き、花村は微笑む。
33
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる