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第十五部・針山夫婦 編

インタビュー

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『ボンデイカフェ』は木の温もりを感じさせる内装で、テラス席もあってお洒落な店だ。

 スケジュールではインタビューを三十分行ったあと、残り時間で撮影となっている。

「御劔社長、今回はご足労頂き、まことにありがとうございます。今回、インタビューをさせて頂きます花村はなむらと申します」

 そう言ってルージュを塗った唇で魅力的に笑ったのは、仕事にも美にも手を抜かないという雰囲気の女性だ。

 挨拶をして名刺交換をしたあと、花村は助手の若い女性と一緒に黒い革張りのソファに向かい、「どうぞ」と佑をいざなう。

「時間が限られていますので、さっそく参りましょう」

 席に着いたあと、ウーロン茶が出てからインタビューが始まった。

「これからクリスマスを迎えますが、御劔社長は女性にクリスマスに着てほしい服はありますか?」

「そうですね。好きな女性なら、何を着ていても魅力的に映ると感じます。強いて言うなら、クリスマスを意識した落ち着いた赤やシックな黒など、大人っぽい色だグッとくるかもしれませんね」

「白はお嫌いですか?」

「清純でいいですね」

「逆に、御劔社長の勝負服、勝負アイテムはどのような物になりますか?」

 花村の横で、アシスタントの女性は一生懸命メモをしている。

 当然録音もされていて、あとから書き起こし作業が行われる。
 だが、インタビュー当時の雰囲気や、表情などを書き留めるのも大切な作業だ。

 インタビューと写真撮影のみOKを出しているので、動画を撮る事はNGになっている。

 少し離れたところではカメラマンや照明助手がいて、受け答えをする佑を撮影している。

 ソファを回り込んで横顔なども撮るため、香澄は死角になる場所に座っていた。

「やはりダークカラーのスーツだと無難にキマりますね。仕事でも勝負服でもスーツなので、チーフやカフス、タイピンなどの小物の変化を意識します」

 佑は微笑んでから、ウーロン茶をストローで一口飲む。

「御劔社長はどのような女性に惹かれますか? 婚約者さんがいるのは承知の上ですが、読者さん向けにタイプの女性をお聞きしたいです」

 佑は完全に仕事モードで答えた。

「そうですね。自分の意思を持ち、芯のある女性が好きです。あとは優しい……と言えば抽象的な言葉になりますが、包み込んでくれる雰囲気だと一緒にいて安らげるかもしれませんね」

「家庭料理で胃袋を掴まれたいですか?」

「基本的に好きな人と一緒に食事ができるなら、なんでも美味しく感じます。好きな人が手料理を作ってくれるなら、喜んで食べます。自分で作った料理も食べてもらいたいですね」

「好き嫌いはありませんか?」

「特にありません。様々な国で食事をしますが、やはり日本の食事が一番口に合います。外食より家庭料理のほうが好きですね」

「彼女にご飯を作ってもらうとしたら、何が食べたいですか?」

 その質問を受け、佑は初めて考える素振りを見せる。

「うーん……。やっぱり和食でしょうか。煮物とか親子丼とかもいいですね」

「御劔社長は、高級料理がお好きかと思っていましたが、割と親しみやすい料理がお好きなんですね」

 そう言われ、佑は苦笑する。

「世間からはそう言われていますが、普通に家庭料理で育ちましたからね。家ではやはり寛ぎたいですし、写真映えとかもいいので、ほっこり癒される料理が食べたいです」

「なるほど。世の女性の肩の荷が、少し下りたかもしれませんね」

「見栄えのいい料理は、SNSでいいねをもらえるでしょう。ですが人にどう見られるかを気にしすぎると、料理を作る事への意識が変わっていくのではと思います。レンチンでも冷凍食品でも、なんであろうが、自分や家族のために食事を作る事ができただけで凄い事だと思います。食は楽しみであり、体を作るものです。あまりややこしい感情は入れず、シンプルに楽しめたらなと感じています」

「仰る通りですね。クリスマスになると、皆さんここぞとばかりにSNS映えする写真を撮ると思いますが、御劔社長なら、彼女とどんなクリスマスデートをしたいですか?」

 花村が質問を変え、佑は微笑んで応える。

「そうですね。クリスマス前に、ベートーヴェンの『第九』を聴きに行きたいなという気持ちはあります。毎年恒例のイベントにしているので、当日は、彼女が望むならレストランでの食事もいいですし、自宅で映画を見ながらゆっくり食事をするのもいいですね」

「映画はやはり恋愛ものですか?」

「映画全般が好きですが、ムードを高めるなら恋愛ものかもしれませんね。あとはクリスマスに因んだものとか。見ていてハッピーな気持ちになれる、働く女性ものも好きです」

 佑の答えを聞き、花村は微笑む。
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