【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
921 / 1,559
第十五部・針山夫婦 編

移動中の報告

しおりを挟む
「先方は六本木ヒルズ滝タワーオーナーの平川ひらかわ様です。手土産には『エルバジ』のプレミアビールを用意致しました。昼食会のお誘いを頂いた時、社長は和洋中問わずとの事でしたので、先方が指定されました銀座『桜の花』の個室で……という事になっております。今回の昼食会でのお話は、所有ビルのワンフロアを使ってChief Everyを入れたいとの打診がメインになると思います。他、ハイブランド店舗が並ぶフロアにCEPの導入を……というお話の可能性もあります」

 午前中のうちに、河野から託された資料を読んで頭に入れ、今は車の中でタブレットで確認しつつ佑に伝える。

 佑はゆったりと脚を組んで目を閉じ、香澄の言葉を聞いている。

「赤松さんは同席するのか?」

「はい。もともとは河野さんが同席する予定でしたが、先方が『全員で』と仰いまして、秘書も含めお誘いを受けております」

「そうか、ありがたいな」

「懐石コースの内容ですが、黒毛和牛のしゃぶしゃぶがメインの他、石焼きステーキか銀ダラかを選べるようになっております。平川様の秘書の話では、平川様は近年脂ものが苦手との事で、お魚を選ばれるとの事です。念のため平川様の情報として、お耳に入れておきたいと思いました」

「ああ、ありがとう」

「予定時間は十二時から十四時までとなっております。その後、移動時間を少し多めに取り、広尾の『ボンデイカフェ』のアイドルタイムを使い、四十分の雑誌インタビューです」

 アイドルタイムというのは、ランチとディナーの間にある休憩時間だ。

 出版社の人の話では、撮影ありのインタビュー場所に飲食店を使う場合、アイドルタイムを利用すると大体OKがもらえるらしい。

 他の客がいる時は肖像権などの問題が発生するし、インタビューを静かに行うためにもその時間帯は都合が良かった。

 基本的に飲食店側も、店の宣伝になるなら割と快く受け入れてくれるそうだ。

「インタビューのテーマはクリスマスに向けて、俺の恋愛観について……とかだっけ?」

「はい。撮影は座り姿以外に、可能ならネクタイを解いたり、シャツのボタンを一つ二つ外すくらいの写真を頂けたら……という相談も受けています。その他、インタビューについてですが、女性に求める事、今の男性に必要な事、セックスライフについて……なども予定しているとの事です」

 香澄は胸の奥に微妙な感情を抱くものの、仕事中なので資料を読み上げる事に徹する。

 それをつまらなく思ったのか、佑が顔を覗き込んできた。

「赤松さんはこういうインタビューや撮影依頼、どう思う?」

「え?」

「どう思う? と言われても……」と香澄は顔を上げる。
 佑を見ると、意味深な表情でこちらを見ている。

(『婚約者として嫌』とか言わせたいんだろうけど……)

 彼の意図は分かるものの、仕事中に私情を持ち込みたくない。

「……社長は若者の絶大な人気を得ていますし、雑誌の売り上げは望めると思います。回答の中にChief Everyを絡めたファッション的な答えを紛れ込ませれば、こちらの売り上げにも繋がると思います」

 淀みなく答えると、佑は溜め息をついた。

「分かった。そうしよう。君もブレないね」

「…………」

「秘書モードになると可愛げがない」と言われたような気になり、香澄は少し落ち込む。

 インタビューについて話したくないと言えば嘘になるが、移動中は次の仕事に繋げる大切な時間だ。

「平川様の情報に戻ります」

 気持ちを切り替え、香澄はこれから昼食を共にする平川について、予備情報などを読み上げていった。



**




 約束の店に着くと、平川と秘書は先に席に着いていた。

「御劔さん、ようこそいらっしゃいました」

「お招き預かり光栄です」

 佑と平川はがっちりと握手をする。
 そして佑は平川に、香澄が持っている手土産の袋を示す。

「こちら、平川さんのお好きな物をご用意しました。気に入って頂けたら光栄です」

「ありがとうございます。こちらも評判のいい菓子を用意しましたので、どうぞお召し上がりください」

 香澄は平川の秘書と黙礼し合い、無言で互いの紙袋を交換する。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

処理中です...