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第十四部・東京日常 編

第十四部・終章 出社に向けて

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「香澄がくれるなら、何でも嬉しいよ」

「ほらそれ! 絶対そう言うと思った」

 ごろんごろんする香澄を見て佑は笑い、Tシャツにジーンズを穿いた姿でベッドの端に座った。

「んー……。じゃあ、セクシーランジェリーを着てお披露目するっていうのは? 俺にとって一番嬉しいプレゼントだけど」

「そうきたか……」

 天井を向いたまま真顔になる香澄の頭を、佑が愛しげに撫でる。

「言っておくけど、値の張るプレゼントは考えなくていいからな? 俺は香澄がいてくれさえすれば……、あ」

「ん!? なになに?」

「いや、クリスマス、ホームパーティーにするのもアリかな? って」

「あー……。それはまた……。さ、斎藤さんの手を借りてもいい?」

 佑なら「香澄が作ってくれるなら、何でも美味しい」と言ってくれるだろうが、天下の御劔佑のクリスマスパーティーのご馳走を、しょぼい物にしてはいけない。

「勿論。仕事が終わったら俺も参加するよ」

 佑と一緒に料理できる事を想像し、香澄は微笑む。

「去年出したクリスマスツリー、大きくて立派だったね」

「ああ、毎年斎藤さんや離れの人に飾り付けてもらってる。基本独り身だったから、気分だけでもクリスマスを味わおうと思って」

「かなり大きいけど、普段どこにあるの?」

「倉庫かな。外のイルミネーションは、業者に頼んでる」

 言われて、去年のクリスマスは御劔邸がピカピカに光っていて綺麗だったのを思いだす。

「イルミネーションも毎年やってるの?」

「まぁ、ご近所さんが楽しんでくれたら……と思って」

「へええ……。ご近所付き合いあるの?」

「それなりに。警備の意味でもしっかり付き合いをして、不審人物を見かけたら報告してもらうようにしてる」

「なるほど……」

 寝たまま佑に髪を撫でられ、ダラダラと話していると幸せだが、佑には仕事があると思いだした。

「佑さん、お仕事」

「ん、ああ」

 佑は名残惜しそうに手を離し、軽く首を回してポキポキ鳴らしてから溜め息をつく。

「じゃあ、離れに荷物取りに行ってくる」

「うん」

 そう言えば最中に河野から電話があったと、香澄は思いだし赤面をする。
 佑が部屋から出て行ったあと、香澄も「そろそろ……」とゆっくり起き上がった。

「んー、まだちょっと腰がジンジンする」

 体の芯に力が入らないというか、どこかフワフワしている気がする。

 下着を穿くと「佑さんがいないうちに」と、パンティ一枚の姿で服を持ち、素早く私室に向かった。

 シャワーを浴びる前にスマホでスケジュールを確認すると、復帰前に身だしなみを整えておこうという事で、明日は美容室とネイルサロンの予定が入っている。

 陣内の美容室で髪を整えてもらい、トリートメントとヘッドスパもしてもらう予定だ。

 ネイルは爪呼吸ができない気がして少し苦手で、いざという時にだけポリッシュネイルを塗るようにしている。

 なので今回のネイルサロンでは、ハンドとフットケアをしてもらうだけだ。
 爪の甘皮の処理や爪磨きをし、踵の角質を取ってもらってマッサージをしてもらう。

 あとは自宅でネイルクリームなどを塗って、セルフケアをしていた。

「ぱんつ、ぱんつ」

 言いながら香澄は替えの下着を出し、バスルームに向かった。





 そして月曜日から、香澄はまた出社する事になる。

 前回は骨折から復帰して一週間もせず、エミリアの事件で休んでしまったので、今度こそ……と思う。

 日曜日は早めに就寝し、出社に備えた。



 第十四部・完
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