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第十四部・東京日常 編

処刑宣告

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「っこれ……」

 驚いて目を瞬かせると、佑がクシャッと笑った。

「心配させたお詫びに。ほんの気持ちだけど」

「ううん、ありがとう」

 佑はいつもサプライズをしてくれるけれど、今回は少しジーンときた。

 香澄は彼に感謝しながら、濃厚なバニラアイス、品のいい甘さのガトーショコラや、周りに盛り付けられているフルーツを完食した。

「っぷう……」

 さらに残っていた梅酒ソーダをゴクゴクと飲み、満腹になったお腹をさする。

「あ……」

 さすってから、自分がいま減量中なのを思いだしてしまった。

「ん? どうした?」

「またお肉食べちゃった。四キロ増えたから、痩せなきゃって思ってるのに」

「ゆっくり減らせばいいよ。俺は香澄の体重を好きになったんじゃないから」

「……ありがとう」

 そういう言い方をしてくれる佑が、心底好きだ。
 微笑んだあと、彼の体調がまだ心配なので提案した。

「ホテル、戻ろうか。熱が下がっても無理させたくない。それとも家に帰る?」

 尋ねると、佑がスマホをだしながら返事をした。

「じゃあ帰ろうか。荷物はあとで河野に持ってきてもらう」

「お仕事道具、なくなっちゃうんじゃない?」

「悲しい事に、家には同期してあるパソコンがあるんだ」

 残念そうに言う佑の言葉に、香澄はクスクス笑った。





 佑は電話で瀬尾を呼んだ。

 彼が到着するまで個室で待機し、そのあと、なるべく他の客に気づかれないように一階まで下りて車に乗った。

 ほどなくして御劔邸に着き、香澄は久しぶりに家に帰った気持ちになる。
 リビングに入ってコートを脱いだ時、澪たちに会った事を報告しようと思い、彼に話しかけた。

「そうだ。昨日、澪さんと陽菜さんとアンネさんと、お茶したの。楽しかったよ。プレゼントももらっちゃった」

「ああ、久住たちから聞いた。ったく、澪たちは連絡なしで動くから……。変な事は言われなかった?」

「え? 特に……」

 尋ねられ、佑が遺書を書いた事を思いだして香澄の目がスイーッと泳ぐ。

「……何かあったな?」

 キッチンのウォーターサーバーで水を飲んでいた佑が、じろりとこちらを見た。

「え、えーっと。着替えてメイク落としてこよーっと」

 パッと逃げた香澄は、二階にある自室に駆け上がって着替える。
 そして洗面所でメイクを落とし、念入りにスキンケアをした。

 ケアをしている間、佑も二階に上がってきて、自室で何やらしているのが分かった。

「香澄、ちょっと聞きたいことがあるから、下で」

「はーい」

(何だろう?)

 返事をしたあと、保湿クリームを塗って、アイクリームで軽く目元をマッサージをする。

 そのあと手を洗って階下に向かった。

「なぁに?」

 佑はリビングのソファに座って、こちらに背中を向けている。
 香澄は「よいしょ」と背もたれをまたぎ、佑の隣に座った。

「…………あ」

 が、テーブルの上に双子のプレゼントがあるのを見て、ピシッと固まった。

「誕生日プレゼント、沢山もらったんだな」

「あ! あー……」

(そういえば置きっぱなしだったー!)

 香澄は内心、頭を抱えて絶叫する。

 段ボールや包装紙の片付けはした。
 だが出かける時間が迫っていて、プレゼントを自室にしまうどころではなかった。

「香澄の物を勝手に見たのは謝る。でもこのブランド、どう考えてもジュエリーブランドだから気になってしまって。しかも付箋にはアロクラの名前がある」

 佑は腕と脚を組み、溜め息をつく。

「…………中身、見た?」

「いや、そこまではしてない。だから香澄に教えてもらおうと思って」

 処刑宣告に、香澄はサァッと青くなる。

「…………そ、そんなオーバーだよ。たかがアクセサリーだよ?」

 言いつつも、香澄はマリッジリングを思いだして、背中にじょわぁ……と変な汗を掻く。

 笑顔で切り抜けようと思ったが、佑の目は据わっていた。
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