【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十四部・東京日常 編

スマホ越しになら少し素直になれる

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「……ごめん。そんな風に感じていると思わなくて……。……俺の話を聞いてくれないか?」

「…………っ」

 思わず佑の手を振り払った香澄は、ブンブンと首を横に振った。
 今は感情的になりすぎていて、冷静になれる気がしなかった。

「……ちょっと、時間ちょうだい。冷静になりたいの。ちゃんと戻るから」

 香澄はグスッと洟を啜り、このまま佑の側にいても何も解決しないと思い、立ち上がった。

「香澄?」

「連絡つくようにしてるから心配しないで。でも、たまには一人にさせて」

 香澄は佑の顔を見ずに言い、ウォークインクローゼットまで行くと、コートを着てマフラーを巻いた。ハンドバッグを手にし、すっぴんのままドアに向かう。

「香澄!」

 すぐに佑に追いつかれるが、香澄は彼を見ずにブーツを履いた。

「きちんと話し合うために、まず冷静にさせて。佑さんと一緒にいると、優しさに甘えて我が儘ばかり言ってしまう自分が嫌になるの」

 潤んだ目で彼を見ると、佑は視線を落として溜め息をついた。

「……分かった」

「ありがとう」

 小さく礼を言い、香澄はスイートルームを出た。

 足早にエレベーターまで向かい、途中でフロアコンシェルジュに告げる。

「食事は一人分だけで結構です。変更してすみません」

「かしこまりました」

 何も聞かない彼のプロ意識に感謝し、そのままエレベーターに乗った。





 エレべーターで一階まで下り、できるだけ何も考えないように外にでた。

 雑踏の中までいき、ずっと止めていたように感じる息を吐き、吸った。

(どこ行こう。……ご飯食べられる所にしよう)

 まだ東京の地理に詳しくない香澄は、スマホを取りだしマップで飲食店を検索する。

(ん、よし。朝からハンバーガー食べよう)

 そう思い、ホテルから徒歩五分にある、ハンバーガーショップへ向かった。





 列に並んでいる間にオーダーする物を決め、いざカウンターにつく。

「照り焼きチキンバーガーと、チキンナゲット、サラダをお願いします。あとバナナジュースも」

「かしこまりました」

 オーダーして電子マネーで清算すると、空席を求めて少しウロウロし、通りに面したカウンターに落ち着いた。

 努めて何も考えないようにしているのに、佑の傷ついた表情が脳裏に蘇る。

(まだ熱があるのかな。汗を掻いて熱を下げる方法みたいだけど、そんなに簡単に下がるものなのかな。……お仕事に行くんだろうか。会社で倒れないといいけど)

 蓋をしていた感情が堰を切ったように溢れ、佑が心配で堪らなくなる。

 その時、佑からメッセージが入った。

『今日は会社を休むよ。ホテルの部屋でリモートワークをする』

 メッセージはそれだけだったが、香澄の胸に安堵が広がる。

 スマホ越しだから、幾分冷静になって素直になれる気がした。

『良かった。いま熱は何度?』

 返事を打つと、すぐに返事がくる。

『三十七.六度まで下がったよ。いま高村先生の診察を受けた。毎度ながらの熱で、処方箋ももらった。これから松井さんに薬を取りに行ってもらう。朝食をとったらきちんと薬を飲むよ』

『分かった。無理しないでね。具合悪いって思ったら、すぐ横になって』

『了解』

 それから少し間が空き、佑からまたメッセージがくる。

『今どこにいる?』

「…………」

 どう答えようか悩み、まだ佑には会えない気がしたので、返事を濁す。

『言いたくない。ごめん』

 佑なら、場所を教えるとすぐ来てしまいそうだからだ。

『分かった。飯はちゃんと食べること。話ができそうになったら教えて』

 理解を示してくれた佑に、香澄は『了解です』とスタンプを送った。

 それからアプリを閉じ、スマホを置いた。

(……そういえばすっぴんだった。恥ずかしい)

 服も着の身着のままで、コーディネイトもあったものではない。

 外を眺めているうちにハンバーガーが運ばれてきた。

 とりあえず、空腹ではろくな事を考えないと思ったので、まず腹を満たす事にした。
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