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第十四部・東京日常 編

プレイのすすめ

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 先ほど食べたコースにもデザートはあったが、甘い物なら別腹だ。

 四人でテーブルを囲み、メロンのショートケーキを前にして、笑顔で「いただきます」を言う。

「ん~! 美味しい! これってワンピース四千円以上する奴でしょ? まず食べられないわぁ」

「それを彼女の誕生日に、ホールで注文するのが社長なんでしょ? さっすがぁ! っていうか、幾らしたのか知らないけど、想像しただけで値段がエグくて笑える」

「ねぇ、赤松さん。生クリームプレイした?」

「むふっ」

 いきなりまた猥談な質問をされ、呑み込みかけたケーキが鼻から出るかと思った。

「あれってやりたがる人が多いけど、乳製品って乾いたら臭くなるから注意したほうがいいよ」

 経験者らしい水木の言葉に、香澄はゴホゴホと咳き込みながら訴える。

「し、してません……っ。する予定もありませんっ」

「そーぉ? だったら味付きローションは?」

「えぇっ!? そんなのあるんですか!?」

 悲鳴に似た香澄の声を聞き、三人は顔を見合わせてニヤァ……と悪い笑みを浮かべる。

「チョコ味とかストロベリー味とか、バナナ味とか結構バリエーションあるよ?」

「そうそう。お風呂に入れてローション風呂にする用もあるよ。いい匂いだしヌルヌルして興奮するし」

「ローションついでに、社長にオモチャで開発してもらったら?」

「――――っっ」

 言われた瞬間、香澄はカァァッと真っ赤になった。

〝守秘義務〟は言えないので、とりあえずモッモッとケーキを食べる。

「それとも赤松さん、道具とか抵抗ある? 最初は怖いかもだけど、慣れたら気持ちいいよ?」

「……ローション、使ってるんですか?」

「そりゃあ、たまに変化球つけないとマンネリになるでしょ。ヌルヌルは興奮するし、楽しいよ?」

「甘い味がついてたら、フェラしてあげようって思うし。まぁ、飲みはしないけどね」

「それなー。『飲んでほしい』って言われるけど、まず飲まない」

「私、飲んでみようかと思ったけど、まずくてすぐうがいしたね」

「…………」

 三人の体験談を聞きながら、香澄はサァーッと青くなり、次に赤くなる。

 とうに香澄は、佑の精液を何度も飲んでしまった。

 口の中に出されたら、飲むものなのだと思っていた。

 固まっている香澄を見て、成瀬が「もしかして……」と目を瞬かせる。

「赤松さん、飲んでるの?」

「い……っ、いえっ! え、ええっ!? う、うぅぅ……っ?」

 激しく動揺する香澄を見て、三人はまたニヤァ……と笑った。

「あれだけ美形のなら飲めるんじゃない? 知らんけど」

「そうだね。赤松さんって献身的だし、二人が同意の上ならそれでいーのよ」

「想像するの失礼だけど、社長って下半身も綺麗そうだよね? 手入れの行き届いた女子みたいに、無駄毛とか黒ずみとかなさそう」

 言い当てられ、香澄はバクバクと鳴る鼓動を必死に抑える。

 確かに佑の体は綺麗だ。
 無駄毛もないし、デリケートゾーンも本当に綺麗だ。

 だからなんの抵抗もなく舐められる。

 勿論、体毛があっても舐められるが、無駄毛があった試しがないので想像できない。

(キープ、じゃない。クール、じゃなくて。なんだっけ? えっと、そう! ポーカーフェイス! 私はいまロイヤルストレートミルクティーを持っていて……)

 混乱のあまり訳の分からない事を考え、香澄は固まったまま人形のように微笑む。

 固まるのとポーカーフェイスはまったく違うが、今は何も考えられない。

「社長って脱いだらすごい? 筋肉的な意味で」

「あ……あぅ。す、……すごい。と、思い、ます」

 どこまで話していいか分からなくなった香澄は、赤くなったり青くなったりを繰り返したまま、ぎこちなく頷く。

「はああー、いいなぁ。どんな体位でもできそう。うちの彼氏ってば、ひょろひょろしてるからなぁ。文句はないけど、健康が心配なのと腕力体位ができないのが少し難点かな。駅弁とか姫抱っことかされてみたかったなぁ」

 水木の言葉を聞き、香澄は「駅弁……?」と困惑顔だ。

 まさかそれが体位の名前だと思わず、駅で売られている美味しい弁当を思い浮かべている。
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