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第十四部・東京日常 編

さあ話して!

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「な、成瀬さん酔ってません?」

「んーん、酔ってないよ?」

「成瀬ってすぐ酔うけど、全然潰れなくて、オヤジみたいな絡み方してくるから気を付けてね」

「水木さん、注意が遅いです……」

 香澄は「うう……」とうなりながら突っ込みを入れ、さりげなく成瀬から視線を逸らす。

「流石にレストランで猥談は避けるけど、あとで部屋に遊びにいったら、強制的に猥談だからね?」

「んっぷ」

 気を紛らわせるために水を飲もうとしたがさらに噎せ、香澄は涙目だ。

「も、目的はケーキですよ?」

「はいはい、高級ケーキもたっぷり堪能させてもらいますよー」

 軽くあしらわれ、頭が痛い。

 それでも、こうやって同年代の女性と過ごせる時間はとても楽しい。

 現在、東京に友達と言える人はほとんどいない。

 札幌時代の友人が東京にいるとしても、年賀状を交わす程度なので、「会おうか」とはならない。

 なのでこうして、成瀬たちと食事ができるのが純粋に嬉しかった。

 やがて国産A5ランクのステーキがきて、全員で歓声を上げる。

 成瀬が「リア充みたいに記念写真撮ろう!」と言い、四人で赤ワインのグラスを片手に、ステーキと一緒に写真に写った。

 メインを平らげたあと、デザートをペロッと食べ、四人は早々にレストランを後にする。

 そしてスイートルームに向かった。



**




「うわぁー! すっごい!」

「何部屋あるの!?」

「夜景すごーい!」

 部屋に入った途端、三人が歓声を上げる。

「部屋、探険してもいい?」

「どうぞ! 私、お茶淹れますね」

「あー、気にしなくていいよ!」

「っていうか、社長が払ってくれるなら、ルームサービスって頼んでみたい! 紅茶だけでいいから! お願い!」

 荒野に手を合わせられ、香澄は「分かりました」と笑って頷く。

 なんでも佑に甘えるのはいけないが、ルームサービスの紅茶代ぐらい、あとで自分で払える。

 そう思い、香澄は三人がスイートルームを探険している間に、コンシェルジュに紅茶を頼んでおいた。

「赤松さーん」

「はぁい!」

 呼ばれてパタパタと三人を探しにあちこちの部屋をまわると、マスターベッドルームに三人がいるのを見てギョッとした。

「ここでお泊まりしてるの?」

「え……いや……その……」

 まさか「そのベッドで昨晩〝致し〟ました」など言えない。

 答えに詰まった香澄は、視線をあちこちに泳がせ赤面する。

 その反応で察した三人は「キャーッ!」と黄色い悲鳴を上げ、香澄の手を引っ張ってリビングに戻った。

「ねぇ、社長ってやっぱりベッドだとケダモノなの?」

「え!?」

「社長って夜強い? 早い? 遅い?」

「っていうか、社長って鍛えてるし体力がありそうだけど、逆に赤松さんは何回までOKなの?」

「ま……ままま……待って? 待ってください……! そ、そこまで突っ込みます?」

「突っ込むよぉ! だって居酒屋とかバーで猥談できないでしょ? ここならどれだけ騒いでも大丈夫! でも社長が戻ってくる間まで! さあ話して!」

 水木が鼻息荒く迫り、ギュッと両手を握ってくる。

 残る二人もソファに座り、香澄が口を開くのを今か今かと待ち詫びていた。

「え……えっと……」

 果たしてどこまで言っていいものか、香澄は悩みに悩む。

 単なるノロケなら、麻衣を相手にした時のように自由に言いたい。

 けれど佑は三人の雇用主で、へたにプライベートを明かすのは良くないのでは……と怖くなる。

 それを察して、荒野がもう一声かけてくる。

「大丈夫。絶対誰にも言わないから。彼氏にも家族にも言わない。この四人だけの秘密」

 残る二人も、うんうんと頷く。
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