【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
873 / 1,559
第十四部・東京日常 編

豚のペンダント

しおりを挟む
 ペンダントである。

 恐らく二十四金の、金色のチャームがついたペンダントだ。

 しかしそのチャームが、なかなか珍しい。

 馬蹄――馬の蹄のU字型になっている中に横向きの豚がついている、妙齢の女性に贈るには、何とも言いがたいチョイスのペンダントだ。

「ええと……?」

 これは説明が必要だと思い、香澄は慌ててカードを開いた。

『ドイツでは馬蹄と豚はお守りとされている。豚は神への捧げ物で富と繁栄の象徴だ。馬蹄は古代から力のシンボルとされ、病気や怪我、災いが降りかからないための魔除けになっている。俺が言えた義理ではないが、どうか香澄に幸運がありますように。』

 カードは日本語で書かれていて、彼がこの短期間に日本語を習得した事を察した。
 今マティアスはクラウザー家にいるらしいので、節子に教わったのだろうか。

「なるほど……。……ふ、ふふ……っ、マティアスさんらしいなぁ……」

 マティアスがよく考えてくれたのは分かる。

 しかし若い女性に、豚のアクセサリーを贈る男性はそうそういない。

「面白い。マティアスさんらしい」

 クスクス笑う香澄は、あの夜、タヌキの信楽焼の話をしたのを思いだした。

「……本当は〝こう〟なんだろうな。まじめで実直で。……女性と接して、相手の意に反する事をする人じゃない。……あの時だって言い訳なんてしなかった。最後まで頭を下げて土下座までした。……その上、『殴ってくれ』なんて言って……」

 帝都ホテルでの事を思いだし、香澄は苦笑いする。

「きっと嘘をつけない人なんだろうな。……そこを、利用されたっていうか……」

 そこまで言ってエミリアを思いだし、モヤッとする。
 気持ちを切り替えるために小さく首を横に振り、香澄はもう一度豚のペンダントを見て微笑んだ。

「ありがとうございます。マティアスさん」

 不思議と、年末にマティアスを呼ぶ事に、もう不安を抱いていなかった。
 心はすっかり軽くなり、「もう大丈夫」と言っている。

 それなら善は急げと、香澄はスマホを取りだして時差アプリを確認した。
 日本時間は十五時前で、ドイツではこれから朝の七時になろうとしている。

「大丈夫かな」

 香澄はソファに座ってメッセージを打ち始めた。
 アドラー、節子にお礼の言葉を送ったあと、双子に返信する。

『今日、プレゼントを受け取りました。高価な物をありがとうございます。大切にします。ですがクラウスさんの指輪はつけられません(笑)。ごめんなさい。後で改めて、お手紙でお礼を書きますね』

 一度そう送り、次のメッセージを打つ。

『年末のマティアスさんの事ですが、私は全然構いません。佑さんは渋るかもしれませんが、言い聞かせておくので、スケジュールを組んでください』

 今頃ドイツでは朝食時間かなと思いながら、香澄はマティアスとのトークルームも開く。

『お久しぶりです。今日プレゼントを受け取りました。お気遣いありがとうございます。日本語のカード、マティアスさんが書かれたんですか? とても字が上手でびっくりしました。あれからそれほど経っていないのに、マティアスさんの呑み込みの速さに二度驚きました。そして、素敵な魔除けをありがとうございます。マティアスさんの真心を頂いた気持ちになりました。改めて、お手紙でお礼を書きますね』

 シュポッとメッセージを送り、次を打つ。

『アロイスさんとクラウスさんから、年末について聞きましたか? お二人が来る事を了承してくれているので、マティアスさんが増えてもどうって事はないと思います。あと、私への気遣いも無用です。またお会いできるのを楽しみにしていますね!』

 送信し、「よーし!」と笑顔になった時だった。

 スマホが着信を告げ、液晶にはアンネの名前が表示されている。

「は、はい!」

(ついさっきまで一緒だったのに、まだ何かあったのかな?)

 香澄は焦って電話にでる。

「はい! お待たせしました!」

『もう家に着いたのかしら? 忙しいのに悪いわね』

「いえ、大丈夫です。丁度今、ドイツの皆さんからのプレゼントを開封していたところなんです」

『もともと佑から困るぐらい買い与えられていると思うし、物が増えて困るかもしれないけど、受け取ってあげて』

「はい、ありがたい限りです」

 スピーカーからは澪と陽菜が話しているのが微かに聞こえ、三人がまだ一緒にいるのだと分かった。

















お礼を近況ボードに書かせていただきました!
良ければご覧ください( *´ω`* )
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...